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二十一人目
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昼食が終わると、僕と桂坂さんは宙の凧のことを気にしながらも、新しい人を迎えるために場に向かった。
「宙君も年の近いお兄さんが来てくれて心強いんでしょうね。なんだかいつもより生き生きしていたわ」
「そうだね。僕も自転車君もアニキ役としてはちょっと年上過ぎるかもね」
「まあ北野君だって自転車君の1個下なんだけどね」
桂坂さんは案に僕が老けていて若者らしくないとでも言いたげだ。まあ北野君ほどの元気がないのは認める。
そして時間になった。いつものように靄がかかり始める。
「店員さん……?」
現れた人の姿を見て、僕の横で桂坂さんがつぶやく。
「きゃー!」
姿を現した女の人は、数秒戸惑った風にしたあと、いきなり悲鳴をあげた。来た瞬間は、今の自分の状況を把握出来なかったのだろう。自分が見知らぬ森にいることに気づいて、慌ててパニックになったわけだ。
「落ち着いて!」
僕はゆっくりと彼女に近づきながら声をかける。これ以上不安がらせてはいけない。
「ここはどこですか! なんで! お店にいたはずなのに……」
僕たちに気づいた彼女は助けを求めるように矢継ぎ早に僕らに問いかけた。
「とにかく落ち着いてください。すぐに危険があるような状況じゃないんです」
桂坂さんが早口でそれだけ言う。それを聞いて、彼女はとりあえず早急な質問攻めをストップした。
「まずは深呼吸して。一旦、落ち着きましょ」
桂坂さんは彼女の近くまで来て、優しく背をさすった。彼女は大きく息を吸い込んだ。
「まず、僕の方から話しますね。とりあえず簡単に今の状況を説明します。色々疑問はあると思いますが、驚かないで聞いてください」
僕は今まで来た人に説明したのと同じように、彼女に要点だけかいつまんで話した。
「……ざっとこんな状況なんです。じゃあ、まずあなたの名前から聞かせてもらえる?」
一通りの説明を終えた僕は、今度は彼女のほうに話のバトンを渡した。
「ええと……私は田中笑美です。27歳。あ、年齢要るかな? 作業着専門店の店員してます」
「ああ、やっぱり。それ制服ですよね?」
桂坂さんが指摘する。グリーンを基調として
黄色と白のデザインが施されたなかなかカッコいい制服だった。青葉をイメージするマークが特徴的だが、これはお店のトレードマークなんだろうか?
「ええ。『リーフ』って店知ってます?」
僕らは二人とも首を振った。
「知らなくて当たり前ですよね。北陸を中心に展開している中堅チェーン店ですから」
「宙君も年の近いお兄さんが来てくれて心強いんでしょうね。なんだかいつもより生き生きしていたわ」
「そうだね。僕も自転車君もアニキ役としてはちょっと年上過ぎるかもね」
「まあ北野君だって自転車君の1個下なんだけどね」
桂坂さんは案に僕が老けていて若者らしくないとでも言いたげだ。まあ北野君ほどの元気がないのは認める。
そして時間になった。いつものように靄がかかり始める。
「店員さん……?」
現れた人の姿を見て、僕の横で桂坂さんがつぶやく。
「きゃー!」
姿を現した女の人は、数秒戸惑った風にしたあと、いきなり悲鳴をあげた。来た瞬間は、今の自分の状況を把握出来なかったのだろう。自分が見知らぬ森にいることに気づいて、慌ててパニックになったわけだ。
「落ち着いて!」
僕はゆっくりと彼女に近づきながら声をかける。これ以上不安がらせてはいけない。
「ここはどこですか! なんで! お店にいたはずなのに……」
僕たちに気づいた彼女は助けを求めるように矢継ぎ早に僕らに問いかけた。
「とにかく落ち着いてください。すぐに危険があるような状況じゃないんです」
桂坂さんが早口でそれだけ言う。それを聞いて、彼女はとりあえず早急な質問攻めをストップした。
「まずは深呼吸して。一旦、落ち着きましょ」
桂坂さんは彼女の近くまで来て、優しく背をさすった。彼女は大きく息を吸い込んだ。
「まず、僕の方から話しますね。とりあえず簡単に今の状況を説明します。色々疑問はあると思いますが、驚かないで聞いてください」
僕は今まで来た人に説明したのと同じように、彼女に要点だけかいつまんで話した。
「……ざっとこんな状況なんです。じゃあ、まずあなたの名前から聞かせてもらえる?」
一通りの説明を終えた僕は、今度は彼女のほうに話のバトンを渡した。
「ええと……私は田中笑美です。27歳。あ、年齢要るかな? 作業着専門店の店員してます」
「ああ、やっぱり。それ制服ですよね?」
桂坂さんが指摘する。グリーンを基調として
黄色と白のデザインが施されたなかなかカッコいい制服だった。青葉をイメージするマークが特徴的だが、これはお店のトレードマークなんだろうか?
「ええ。『リーフ』って店知ってます?」
僕らは二人とも首を振った。
「知らなくて当たり前ですよね。北陸を中心に展開している中堅チェーン店ですから」
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