異世界転移物語

月夜

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    僕は少し落胆した。まあ、でもそんなに一気に事が進む事ばかりではない。川を見つけただけでも大きな進歩なのは間違いないのだ。

「川の流れはどんな感じですか?」

    理科さんが冷静に訊く。さすが理科の先生だけあって、視点が科学よりだ。

「まあ、割と急なほうかな。傾斜も結構ある感じだ」

「そのまま、川下に沿って進んでいけば、下流域に出られるってことですよね?」

    僕の知識でも分かることを確認してみた。

「ああ、そうだな。まあ途中で池や湖に入るって可能性もあるがな」

   結局のところ、次の調査をしてみないと何とも言えないだろう。

「明日にでもまた出発するつもりだ。今度は二泊あるいは三泊で行ってみようと思う。運良く森を出られたりしたら、また状況は変わるがな」

    皆の期待は高まるばかりだ。スカウトさんの報告が終わったあと、北野君の正式な紹介をした。スカウトさんがラグビー部だったことを話した際、驚いたことにドクターも高校時代ラグビー部だったことが判明した。二人でしばらく話が盛り上がっていたが、人は見かけによらないものだ。

    次に宙君から凧の現状について説明があった。昼間話したように、タコ糸がないのがちょっとネックになっているという話もあった。

「糸ならわい持っとるで」

    北野君が意外なことを言い出した。

「畑で使おうと持ってたやつや。これどうやろ?」

   北野君が作業服のポケットからとり出してみせた糸は、細いが丈夫そうな糸だった。

「長さは50メートルぐらいあるかな」

   宙はそれを手にとって確認すると言った。

「これ、いいですね。使えそうです。うん、これならいけるかも」

 「ほんなら糸巻きもそれに合わせて作り直さなきゃな。よっしゃ、今夜にでもやっちゃる」

    宙が喜んでいるのを見て、大工さんが気前よくそんなことを言い出したが、明るいときにやりなよ!   とみんなからたしなめられていた。

「そしたら、明日の午前中にそれ使って凧作ってくれるか?   午後天気良ければ、実際に揚げてみよう!」

   僕は宙にそう指示を出した。

「凧ってさ、あんまり風が強すぎてもダメなんだよな。あげるのはいいが、降ろせなくなるっていうし」

   内装さんがぼそっと言う。

「ええ。ちょっとの風でも充分な大きさがあれば揚がるみたいです。なので、明日雨が降らず、よほどの強風でなければ上げてみます」

「ええと、午後もし凧揚げして撮影するなら、生活の女の人や畑の人も総出でやったほうがいいと思うんだけど。落下したりする場合に備えてって意味合いもあるし」
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