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スカウトさんの報告
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夕食後の打ち合わせで、スカウトさんと自転車君の話を聞いた。彼らの報告は、今までになく画期的なものだった。
「初日に行けるところまで行って、そこでテントを張ったんだが、そこまでは特に収穫なしだった」
そんな普通の報告で始まった話だった。それでも行けるところまで行ったということは、未踏の地まで足を運べたということだ。地図が一気に広がる。
「単純に考えれば、翌日は帰途に着くだけなのだが、ここまで来たら出来るだけ調査したい」
「僕も同じ気持ちでした。だから、僕から朝早く起きて、もう少し先まで行ってみませんか?って提案したんです」
スカウトさんの言葉を引き取るように自転車君が続けた。
「自転車君にそう言われて、俺のほうは異存はなかった。それにテントを撤収しなければ、その分、時間も浮くから調査時間もとれるという計算もあったから、次の日は朝早くからもう少し進んでみることにした」
そこでスカウトさんは大きく息をつく。
「そしてもう引き返せそうか、というところで俺たちはついに見つけてしまった。何だと思う?」
スカウトさんは場を盛り上げようと、あえて勿体ぶって言おうとしているのが丸わかりだ。
「私たちとは別の人たちですか?」
保育士さんがすぐに反応して答えたが、スカウトさんは無言で首を振った。
「じゃあ、動物がいたとか?」
電気さんが言う。それにもスカウトさんは首を振る。横で自転車君はニヤニヤしている。
「もう~、スカウトさん。早く教えてくださいよ」
路木さんが待ちきれずそう催促する。
「森の出口ではないわよね……」
理科さんが自分でもやんわり否定しながらも一応言ってみたという様子で答える。
「ああ、でも、近いな。それじゃあもう、答え言うか」
みんなドキドキしながらスカウトさんの次の言葉を待った。
「俺たちは川を見つけたんだ!」
その場からどよめきがあがる。
「そうだな。川幅は3メートルくらいかな。浅瀬で歩いて渡れる。水はきれいで水底も見えるぞ。魚もいたしな」
これまで見つけた川といえば湖に注ぐ小さい川だけだ。これは大きな発見かもしれない。
「その川はどこに向かって流れていたんですか? もしかしたらそこから森を抜けられるかも!」
ドクターが興奮してまくし立てる。しかし、スカウトさんは少し残念そうな表情を浮かべた。
「そこまでは調べられなかった。もう帰る時間しか残ってなかったからな。俺たちはそこで調査を切り上げた。次に出直して調べるつもりだ」
「初日に行けるところまで行って、そこでテントを張ったんだが、そこまでは特に収穫なしだった」
そんな普通の報告で始まった話だった。それでも行けるところまで行ったということは、未踏の地まで足を運べたということだ。地図が一気に広がる。
「単純に考えれば、翌日は帰途に着くだけなのだが、ここまで来たら出来るだけ調査したい」
「僕も同じ気持ちでした。だから、僕から朝早く起きて、もう少し先まで行ってみませんか?って提案したんです」
スカウトさんの言葉を引き取るように自転車君が続けた。
「自転車君にそう言われて、俺のほうは異存はなかった。それにテントを撤収しなければ、その分、時間も浮くから調査時間もとれるという計算もあったから、次の日は朝早くからもう少し進んでみることにした」
そこでスカウトさんは大きく息をつく。
「そしてもう引き返せそうか、というところで俺たちはついに見つけてしまった。何だと思う?」
スカウトさんは場を盛り上げようと、あえて勿体ぶって言おうとしているのが丸わかりだ。
「私たちとは別の人たちですか?」
保育士さんがすぐに反応して答えたが、スカウトさんは無言で首を振った。
「じゃあ、動物がいたとか?」
電気さんが言う。それにもスカウトさんは首を振る。横で自転車君はニヤニヤしている。
「もう~、スカウトさん。早く教えてくださいよ」
路木さんが待ちきれずそう催促する。
「森の出口ではないわよね……」
理科さんが自分でもやんわり否定しながらも一応言ってみたという様子で答える。
「ああ、でも、近いな。それじゃあもう、答え言うか」
みんなドキドキしながらスカウトさんの次の言葉を待った。
「俺たちは川を見つけたんだ!」
その場からどよめきがあがる。
「そうだな。川幅は3メートルくらいかな。浅瀬で歩いて渡れる。水はきれいで水底も見えるぞ。魚もいたしな」
これまで見つけた川といえば湖に注ぐ小さい川だけだ。これは大きな発見かもしれない。
「その川はどこに向かって流れていたんですか? もしかしたらそこから森を抜けられるかも!」
ドクターが興奮してまくし立てる。しかし、スカウトさんは少し残念そうな表情を浮かべた。
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