136 / 319
異なる視点
しおりを挟む
「でも、そんな重大な話、聞いたことないわね。大地震の危険は前から叫ばれていることだけど。それほど具体的な話は」
僕たちの思いを代弁するかのように、理科さんが疑問を投げかけた。その質問を受け、大地さんも当然その質問が来ると予想していたらしく、逡巡することなく淡々と答えた。
「そうですね。さっき言ったことは、あくまで私たちの研究室での推測結果に過ぎないことは事実です。もちろん、他の研究機関ともやりとりはしてしますが、残念ながらこの推測が合っているのか第三者が検証するところまでは至っていません」
「なーんだ。ただの一機関の予想なのか」
電気さんが気の抜けた言葉を発した。
「現在の潮流としては、地震の正確な予測は出来ないというのが一般的な見方なので、公式に研究してる機関はないんですよ。アマチュア研究家が独自にデータ分析しているような状況です」
そのニュースは見聞きしたことがある。観測を充実させれば地震予測が出来るのではないかと期待が高まった時期もあったが、現在は研究者にも無力感がただよっていると聞く。
「私たちは出来れば推測が外れることを祈っています。もし、恐れている事態が発生すれば、もう二度と日本は立ち直ることが出来ないほどの被害を負うのは間違いありませんから」
大地さんは一気にそう言ったあと、呼吸を整える仕草をした。
「でも、幸か不幸か、私たちの間ではかなりの確信を持ってこのデータ結果をみているんです」
「そ、それはいつ頃起こると考えてるんですか?」
保育士さんが不安げに尋ねる。
「さっきも言ったように時期までは分かりません。ですが、今日明日に起こってもなんら不思議ではない切迫した状況なんです」
その言葉に釣りキチさんが反応した。
「それはつまり僕たちがこっちに飛ばされた5月20日の午後にでも起こるかも知れないってこと?」
「まあ、そうですね……」
その見立てに僕らはみな戦慄した。今頃、向こうの世界では既に地震が起こっているのかもしれないのだ。もちろん時間のズレがあるので、一括りで考えることは出来ないが。
「だとすると……」
ドクターが何か思いついたのか、ゆっくり言葉を選ぶように切り出した。
「もしかしたら我々は幸運だったということなのかな?」
その言葉は衝撃的だった。今までの観念を根底から覆すほどのコペルニクス的発想だ。
「幸運だったかどうかはまだ分かりませんよ。向こうで実際に破局が起きるかも分かりませんし、こっちだって今は落ち着いていますが、何が起こったっておかしくない状況だと思いますけど」
しかし、路木さんはドクターの一言に対して違った側面からの持論を述べる。
僕たちの思いを代弁するかのように、理科さんが疑問を投げかけた。その質問を受け、大地さんも当然その質問が来ると予想していたらしく、逡巡することなく淡々と答えた。
「そうですね。さっき言ったことは、あくまで私たちの研究室での推測結果に過ぎないことは事実です。もちろん、他の研究機関ともやりとりはしてしますが、残念ながらこの推測が合っているのか第三者が検証するところまでは至っていません」
「なーんだ。ただの一機関の予想なのか」
電気さんが気の抜けた言葉を発した。
「現在の潮流としては、地震の正確な予測は出来ないというのが一般的な見方なので、公式に研究してる機関はないんですよ。アマチュア研究家が独自にデータ分析しているような状況です」
そのニュースは見聞きしたことがある。観測を充実させれば地震予測が出来るのではないかと期待が高まった時期もあったが、現在は研究者にも無力感がただよっていると聞く。
「私たちは出来れば推測が外れることを祈っています。もし、恐れている事態が発生すれば、もう二度と日本は立ち直ることが出来ないほどの被害を負うのは間違いありませんから」
大地さんは一気にそう言ったあと、呼吸を整える仕草をした。
「でも、幸か不幸か、私たちの間ではかなりの確信を持ってこのデータ結果をみているんです」
「そ、それはいつ頃起こると考えてるんですか?」
保育士さんが不安げに尋ねる。
「さっきも言ったように時期までは分かりません。ですが、今日明日に起こってもなんら不思議ではない切迫した状況なんです」
その言葉に釣りキチさんが反応した。
「それはつまり僕たちがこっちに飛ばされた5月20日の午後にでも起こるかも知れないってこと?」
「まあ、そうですね……」
その見立てに僕らはみな戦慄した。今頃、向こうの世界では既に地震が起こっているのかもしれないのだ。もちろん時間のズレがあるので、一括りで考えることは出来ないが。
「だとすると……」
ドクターが何か思いついたのか、ゆっくり言葉を選ぶように切り出した。
「もしかしたら我々は幸運だったということなのかな?」
その言葉は衝撃的だった。今までの観念を根底から覆すほどのコペルニクス的発想だ。
「幸運だったかどうかはまだ分かりませんよ。向こうで実際に破局が起きるかも分かりませんし、こっちだって今は落ち着いていますが、何が起こったっておかしくない状況だと思いますけど」
しかし、路木さんはドクターの一言に対して違った側面からの持論を述べる。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~
丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月
働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。
いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震!
悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。
対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。
・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。
もう少しマシな奴いませんかね?
あっ、出てきた。
男前ですね・・・落ち着いてください。
あっ、やっぱり神様なのね。
転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。
ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。
不定期更新
誤字脱字
理解不能
読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる