異世界転移物語

月夜

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異なる視点

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「でも、そんな重大な話、聞いたことないわね。大地震の危険は前から叫ばれていることだけど。それほど具体的な話は」

    僕たちの思いを代弁するかのように、理科さんが疑問を投げかけた。その質問を受け、大地さんも当然その質問が来ると予想していたらしく、逡巡することなく淡々と答えた。

「そうですね。さっき言ったことは、あくまで私たちの研究室での推測結果に過ぎないことは事実です。もちろん、他の研究機関ともやりとりはしてしますが、残念ながらこの推測が合っているのか第三者が検証するところまでは至っていません」

「なーんだ。ただの一機関の予想なのか」

    電気さんが気の抜けた言葉を発した。

「現在の潮流としては、地震の正確な予測は出来ないというのが一般的な見方なので、公式に研究してる機関はないんですよ。アマチュア研究家が独自にデータ分析しているような状況です」

    そのニュースは見聞きしたことがある。観測を充実させれば地震予測が出来るのではないかと期待が高まった時期もあったが、現在は研究者にも無力感がただよっていると聞く。

「私たちは出来れば推測が外れることを祈っています。もし、恐れている事態が発生すれば、もう二度と日本は立ち直ることが出来ないほどの被害を負うのは間違いありませんから」

    大地さんは一気にそう言ったあと、呼吸を整える仕草をした。

「でも、幸か不幸か、私たちの間ではかなりの確信を持ってこのデータ結果をみているんです」

「そ、それはいつ頃起こると考えてるんですか?」

    保育士さんが不安げに尋ねる。

「さっきも言ったように時期までは分かりません。ですが、今日明日に起こってもなんら不思議ではない切迫した状況なんです」

    その言葉に釣りキチさんが反応した。

「それはつまり僕たちがこっちに飛ばされた5月20日の午後にでも起こるかも知れないってこと?」

「まあ、そうですね……」

   その見立てに僕らはみな戦慄した。今頃、向こうの世界では既に地震が起こっているのかもしれないのだ。もちろん時間のズレがあるので、一括りで考えることは出来ないが。

「だとすると……」

    ドクターが何か思いついたのか、ゆっくり言葉を選ぶように切り出した。

「もしかしたら我々は幸運だったということなのかな?」

    その言葉は衝撃的だった。今までの観念を根底から覆すほどのコペルニクス的発想だ。

「幸運だったかどうかはまだ分かりませんよ。向こうで実際に破局が起きるかも分かりませんし、こっちだって今は落ち着いていますが、何が起こったっておかしくない状況だと思いますけど」

    しかし、路木さんはドクターの一言に対して違った側面からの持論を述べる。
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