133 / 319
電気さんの歓喜
しおりを挟む
生果さんが曖昧な感想を述べる。それと同時に電気さんが顔を出した。
「ほう。今度は女子大生さんか」
「いや、大学院生さんだって」と料子さん。
「似たようなもんだろ」
僕は電気さんの顔を見た瞬間、あれを思い出した。
「電気さん、ちょっと見てもらえます? 彼女、あ、つかささんていうんですが、彼女が冷蔵庫持ってきたんです」
「冷蔵庫?! なんだと!」
「本当ですよ。ほら」
僕はカバンから機械を取り出した。いや、機械からカバンを外すという表現のほうがふさわしいか。
「おお、本当だ。紛れもない冷蔵庫だ」
「冷凍庫にもなるんです」
「うん。確かにそんな構造だな」
電気さんは冷蔵庫の周りをぐるりと見回すと、早速、イノシシの家に持って行こうとする。電気作業の拠点として、電気さんはイノシシの家を使うようになっていた。順番に使っていけば、イノシシの家が最後に使い始めるようになるからだ。
「あ、ちょっと待ってください。そっちのカバンにはポータブル電源があるんです」
「何! 本当か」
電気さんは慌てて、もう一つのカバンをさぐる。中身を見た電気さんはにやりと笑いを返した。
「こりや、いいぞ。これで電気の問題はかなり解消されそうだ。ソーラーパネルもあるし、冷蔵庫でも冷凍庫でもこのぐらいの大きさなら余裕で電源を供給出来る」
電気さんのお墨付きを得た。
「それなら話は別だ。料理するこのネズミの家に、ポータブル電源共々置いておくのがいいだろう。一番電気が必要になるだろうからな」
「そうですね。それがいいと思います」
「ただ、時々はここに電化製品や電気工作の道具などを持ってきて、電気を使わせてもらうことになるかもしれない」
「そうなるとこのネズミの家も手狭になりますね。食事は今まで通りにここで食べるにしろ、その後の打ち合わせは今日からウシの家でやることにしましょう」
僕の提案にみんなうなずいた。ネズミの家とかウシの家とか、一応説明は受けてるけどまだ慣れていないつかささんは時々笑っていたが。
「つかささんの呼び名はどうします?」
それまで静かにみんなの話の聞き役に回っていたナースさんがさりげなく話題を投げかけた。
「そうね……大地つかさ……普通に大地さんじゃダメかな……。ほら、地震を研究してるっていうし」
料子さんが言う。
「そうね。それが無難かも」と生果さん。
「じゃあ、大地さんということで」
こういうのは意見が分かれてもややこしいだけだ。さっさと決めてしまうに越したことはない。
「ほう。今度は女子大生さんか」
「いや、大学院生さんだって」と料子さん。
「似たようなもんだろ」
僕は電気さんの顔を見た瞬間、あれを思い出した。
「電気さん、ちょっと見てもらえます? 彼女、あ、つかささんていうんですが、彼女が冷蔵庫持ってきたんです」
「冷蔵庫?! なんだと!」
「本当ですよ。ほら」
僕はカバンから機械を取り出した。いや、機械からカバンを外すという表現のほうがふさわしいか。
「おお、本当だ。紛れもない冷蔵庫だ」
「冷凍庫にもなるんです」
「うん。確かにそんな構造だな」
電気さんは冷蔵庫の周りをぐるりと見回すと、早速、イノシシの家に持って行こうとする。電気作業の拠点として、電気さんはイノシシの家を使うようになっていた。順番に使っていけば、イノシシの家が最後に使い始めるようになるからだ。
「あ、ちょっと待ってください。そっちのカバンにはポータブル電源があるんです」
「何! 本当か」
電気さんは慌てて、もう一つのカバンをさぐる。中身を見た電気さんはにやりと笑いを返した。
「こりや、いいぞ。これで電気の問題はかなり解消されそうだ。ソーラーパネルもあるし、冷蔵庫でも冷凍庫でもこのぐらいの大きさなら余裕で電源を供給出来る」
電気さんのお墨付きを得た。
「それなら話は別だ。料理するこのネズミの家に、ポータブル電源共々置いておくのがいいだろう。一番電気が必要になるだろうからな」
「そうですね。それがいいと思います」
「ただ、時々はここに電化製品や電気工作の道具などを持ってきて、電気を使わせてもらうことになるかもしれない」
「そうなるとこのネズミの家も手狭になりますね。食事は今まで通りにここで食べるにしろ、その後の打ち合わせは今日からウシの家でやることにしましょう」
僕の提案にみんなうなずいた。ネズミの家とかウシの家とか、一応説明は受けてるけどまだ慣れていないつかささんは時々笑っていたが。
「つかささんの呼び名はどうします?」
それまで静かにみんなの話の聞き役に回っていたナースさんがさりげなく話題を投げかけた。
「そうね……大地つかさ……普通に大地さんじゃダメかな……。ほら、地震を研究してるっていうし」
料子さんが言う。
「そうね。それが無難かも」と生果さん。
「じゃあ、大地さんということで」
こういうのは意見が分かれてもややこしいだけだ。さっさと決めてしまうに越したことはない。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
異世界転移したロボ娘が、バッテリーが尽きるまでの一ヶ月で世界を救っちゃう物語
京衛武百十
ファンタジー
<メイトギア>と呼ばれる人型ホームヘルパーロボット<タリアP55SI>は、旧式化したことでオーナーが最新の後継機に買い換えたため、データのすべてを新しい機体に引継ぎ、役目を終え、再資源化を迎えるだけになっていた。
なのに、彼女が次に起動した時にいたのは、まったく記憶にない中世ヨーロッパを思わせる世界だった。
要人警護にも使われるタリアP55SIは、その世界において、ありとあらゆるものを凌駕するスーパーパワーの持ち主。<魔法>と呼ばれる超常の力さえ、それが発動する前に動けて、生物には非常に強力な影響を与えるスタンすらロボットであるがゆえに効果がなく、彼女の前にはただ面倒臭いだけの大道芸に過ぎなかった。
<ロボット>というものを知らないその世界の人々は彼女を<救世主>を崇め、自分達を脅かす<魔物の王>の討伐を願うのであった。
チート狩り
京谷 榊
ファンタジー
世界、宇宙そのほとんどが解明されていないこの世の中で。魔術、魔法、特殊能力、人外種族、異世界その全てが詰まった広大な宇宙に、ある信念を持った謎だらけの主人公が仲間を連れて行き着く先とは…。
それは、この宇宙にある全ての謎が解き明かされるアドベンチャー物語。
ブロック作成スキルで、もふもふスローライフを目指すことにした
うみ
ファンタジー
もふもふ犬と悪魔少女と共に異世界ジャングルでオートキャンプする!
俺こと日野良介は、異世界のジャングルに転移してしまった。道具も何も持たずに放り出された俺だったが、特殊能力ブロック作成でジャングルの中に安心して住める家を作る。
うっかり拾ってしまった現地人の悪魔っ娘、俺と同時に転移してきたと思われるポチ、喋るの大好き食いしん坊カラスと一緒に、少しずつ手探りで、異世界での生活を充実させていく。
サバイバル生活から楽々スローライフを目指す!
衣食住を充実させるのだ。
異世界坊主の成り上がり
峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
山歩き中の似非坊主が気が付いたら異世界に居た、放っておいても生き残る程度の生存能力の山男、どうやら坊主扱いで布教せよということらしい、そんなこと言うと坊主は皆死んだら異世界か?名前だけで和尚(おしょう)にされた山男の明日はどっちだ?
矢鱈と生物学的に細かいゴブリンの生態がウリです?
本編の方は無事完結したので、後はひたすら番外で肉付けしています。
タイトル変えてみました、
旧題異世界坊主のハーレム話
旧旧題ようこそ異世界 迷い混んだのは坊主でした
「坊主が死んだら異世界でした 仏の威光は異世界でも通用しますか? それはそうとして、ゴブリンの生態が色々エグいのですが…」
迷子な坊主のサバイバル生活 異世界で念仏は使えますか?「旧題・異世界坊主」
ヒロイン其の2のエリスのイメージが有る程度固まったので画像にしてみました、灯に関しては未だしっくり来ていないので・・未公開
因みに、新作も一応準備済みです、良かったら見てやって下さい。
少女は石と旅に出る
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893967766
SF風味なファンタジー、一応この異世界坊主とパラレル的にリンクします
少女は其れでも生き足掻く
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893670055
中世ヨーロッパファンタジー、独立してます
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる