異世界転移物語

月夜

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電気さんの歓喜

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    生果さんが曖昧な感想を述べる。それと同時に電気さんが顔を出した。

「ほう。今度は女子大生さんか」

「いや、大学院生さんだって」と料子さん。

「似たようなもんだろ」

    僕は電気さんの顔を見た瞬間、あれを思い出した。

「電気さん、ちょっと見てもらえます?   彼女、あ、つかささんていうんですが、彼女が冷蔵庫持ってきたんです」

「冷蔵庫?!  なんだと!」

「本当ですよ。ほら」

     僕はカバンから機械を取り出した。いや、機械からカバンを外すという表現のほうがふさわしいか。

「おお、本当だ。紛れもない冷蔵庫だ」

「冷凍庫にもなるんです」

「うん。確かにそんな構造だな」

     電気さんは冷蔵庫の周りをぐるりと見回すと、早速、イノシシの家に持って行こうとする。電気作業の拠点として、電気さんはイノシシの家を使うようになっていた。順番に使っていけば、イノシシの家が最後に使い始めるようになるからだ。

「あ、ちょっと待ってください。そっちのカバンにはポータブル電源があるんです」

「何!  本当か」

    電気さんは慌てて、もう一つのカバンをさぐる。中身を見た電気さんはにやりと笑いを返した。

「こりや、いいぞ。これで電気の問題はかなり解消されそうだ。ソーラーパネルもあるし、冷蔵庫でも冷凍庫でもこのぐらいの大きさなら余裕で電源を供給出来る」

   電気さんのお墨付きを得た。

「それなら話は別だ。料理するこのネズミの家に、ポータブル電源共々置いておくのがいいだろう。一番電気が必要になるだろうからな」

「そうですね。それがいいと思います」

「ただ、時々はここに電化製品や電気工作の道具などを持ってきて、電気を使わせてもらうことになるかもしれない」

「そうなるとこのネズミの家も手狭になりますね。食事は今まで通りにここで食べるにしろ、その後の打ち合わせは今日からウシの家でやることにしましょう」

    僕の提案にみんなうなずいた。ネズミの家とかウシの家とか、一応説明は受けてるけどまだ慣れていないつかささんは時々笑っていたが。

「つかささんの呼び名はどうします?」

    それまで静かにみんなの話の聞き役に回っていたナースさんがさりげなく話題を投げかけた。

「そうね……大地つかさ……普通に大地さんじゃダメかな……。ほら、地震を研究してるっていうし」

    料子さんが言う。

「そうね。それが無難かも」と生果さん。

「じゃあ、大地さんということで」

    こういうのは意見が分かれてもややこしいだけだ。さっさと決めてしまうに越したことはない。
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