異世界転移物語

月夜

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僕の提案

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「とにかくこっちの人間にしてみれば、5月20日午後1時以降の向こうの情報がまったくないわけで、それがもどかしいというか」

     僕はずっと抱えていた思いを吐露した。

「そうですよね。向こうに残してきた家族とか、その後どうなったかみんな心配でしょう」

     釣りキチさんが言う。

「ほら、宙君なんか、みんなの食材、こっちに持ってきたじゃない。家族のみんな今頃困ってるんじゃないの?」

    料子さんが茶化すように言い、宙の方を見た。

「いや、びっくりはしていると思いますが、食材はまだあるはずなので何とかなるかと」

「というよりも、宙君が急に消えたら、家族は血眼になって探して警察に通報すると思うぞ」

    電気さんの指摘はもっともだ。他の人にも言えるのだが、普通なら今頃行方不明事件として大騒ぎになっているはずだ。これだけの日本人が同時にいなくなれば、テレビのトップニュースになってもおかしくないだろう。

「今頃、向こうは一体どうなってるんだろう……」

「考えても仕方ないべ」

    路木さんのつぶやきに農家さんがすぐに応じる。

    その後も議論は続いたが、特に何か目新しい結論に達するわけでもなく、夜が深まるだけだった。

    そろそろ解散しようか、という雰囲気になった頃、僕はちょっと思いついたことがあったのでその場に出してみた。

「あの……今回、こうやってみんなで議論したわけですけど、毎日、夕食のあと、全員集まって、その日の出来事や翌日の計画など話し合うようにしたらどうでしょう?」

「それって、いつもやってることじゃないの?」

    ナースさんが首を少し傾げながら言った。

「ええ。でも、今まではなんとなく自然に集まって、何か話題があれば盛り上がる、みたいな感じでしたけど、それを毎日きちんとやる、って決めておいたらどうか、と」

     僕は周りを見渡した。僕の言いたいことが伝わったような人もいれば、意味がわからないという顔をしている人もいた。

「あれもこれも、と色んな決まりごとをたくさん作ることには賛成出来ないな」

     意外にもスカウトさんが反対した。この人なら真っ先に賛成してくれると思ったのだが。

「だが、この程度の決まりごとなら、むしろ皆で一致しておいたほうがいいだろう」

    やっぱり賛成だった。

「そうだな。毎日、情報共有はしておいたほうがいいと思うな。畑の状況や、道路整備や建物補修の進展具合なども知っておきたいしな」

    ドクターも持論を述べる。

「でも……それって食事の時とかじゃ、だめかな。人数も増えてきたし、あらためて全員が集まるのも非効率な気がするんだけど」

    生果さんが疑問を呈した。
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