異世界転移物語

共通項

「今の日本の年齢構成を考えると、この少子高齢化の時代、この村にももっと高齢者が多くても何も不思議じゃない」

     ドクターがそれを指摘する。ナースさんはそれに関連して別の視点を提示した。

「あと、みんな割と健康ですよね。健康チェックしても、大病中の人はいないし、薬だって常用している人はまったくいないんです。これってすごいことだと思いますよ」

「確かにそうだな。満足に食事や睡眠も出来ない状況で、よくみんな健康でいられるよな」

     スカウトさんも同意する。

「僕なんかむしろ健康すぎてビビるぐらいです」

 「健太君はそれまでが不摂生すぎるのよ」

     僕の発言に桂坂さんが即座に突っ込む。

「みんな、何かしらを持って来ているってのは条件の一つにはなりませんかね？」

     まだ来たばかりのせいか、それまで黙ってみんなの発言を聞いていた内装さんが問いを投げかけた。

「私が来たのは割と最近なので、あとから来た電気さんや宙君がたくさん持って来たのは知ってるんですが、それ以前に来られた方もみんなそうなんですか？」

    路木さんが尋ねる。路木さん自身は、確か家族と買い物途中で女性用の服などをたくさん持ってきたはずだ。

「みんなってわけじゃないですけど、全体的に手荷物多いですね。手荷物だけでなく、農家さんが一輪車持って来たり、自転車君が自転車持って来たり、電気さんが発電機持って来たりなんて、大物もたまにあります」

     僕は今までのことを思い出しながら答えた。

「持ち物自体に共通点はないようだけど、何かこう、必要とされてる時に必要なものが来る、みたいな感じがあるな……」

     ドクターがつぶやく。

「そうですよね。それにそれは持ち物ばかりじゃなくて、人にも言えますよね。僕は話に聞いただけですけど、ナースさんやドクターはグッドタイミングだったそうじゃないですか」

     自転車君が早口でドクターに言葉をかぶせた。

「まあ、自転車はあんまり役に立ちませんでしたけど」

     そう言って自転車君はてへへと笑った。

「最近、地震が多かったじゃないですか？   だから、割とみんな防災用品関連が多いように思うんですが」

    保育士さんが遠慮がちに言う。

「そうね。非常食が多くて随分助かってるわ。まあ、今の状況はまさに災害に巻き込まれたみたいなもんだからね」と料子さん。

「今まで話した限りでは共通項はなさそうだな。唯一、こちらに来ることになった日時が一緒ってことが全員もれなく当てはまる」

   ドクターが今までの意見をまとめた。

「そうなんです。それが一番の共通点であるとともに最大の謎なんですよね……」

    僕はドクターの顔を見ながら、うなずいた。