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天を仰ぐ宙
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「宙君、あのね。驚かないで聞いてね」
「はい」
宙は桂坂さんを見ながら真剣にうなずく。何か重大な話だということは雰囲気で分かったのだろう。
「私たち、宙君も含めてだけど。私たちはどうやら異世界に来たみたいなの。以前いた現実の世界ではない世界」
「ええっー!」
驚かずにはいられなかったようだ。
「私たちもこの世界のことがよくわからないの。森がずっと続いててここから出られないので、ここがどこかもいまだにわからない。あ、私たちは二週間以上前にここに来たんだけど」
「二週間? ど、どうやって暮らしてるんですか?」
「この先に集落があるんだ。そこに十二軒ほど家が建っていて、そこで暮らしてるんだ」
「じゃあ、皆さん、そこでお世話になってるわけですか」
「いや、お世話というか……僕たちが集落にたどり着いた時にはその集落には誰もいなかったんだ」
宙はそれを聞くと、意味が分からないという表情で、口をポカンと開けた。
「僕も桂坂さんも宙君と同じように、普通の世界に住む普通の日本人なんだ。だけどなぜか突然この森に飛ばされてきた。同じように飛ばされてきた仲間が全部で十六人いて、今はみんなで暮らしている」
「暮らしているって、森から出ればいいじゃないですか!」
「それが出られないんだよ。僕たちもずっと森から出るルートを探索し続けてるんだけど……」
「そんな……」
宙は天を仰いだ。
「じゃあ、母とか妹とかにはもう会えないんですか」
「今の時点ではそうなるね。僕らもこの窮地を脱する方法を頑張って探してはいるんだけど……。みんな家族と別れ別れになったままだ」
「とにかく一緒に家に行きましょ。そこで別の人にもちゃんと話してもらうから」
桂坂さんが優しく宙に語りかけた。まだ事情を完全には飲み込めてないだろう宙は、次にやるべきことが自分では判断出来ないと悟ったらしく、大人しく僕たちについてきた。
「カバンの方は僕が持つよ」
僕は手を伸ばしてカバンを受け取ったが、思ったよりズッシリと重く、危うくバランスを崩しそうになった。こんな重いものを持ってたのか。見た目以上に力持ちだな、と感心した。
「何だか嘘みたいです。さっきまでキャンプで森の中にいたんで、周りはそんなに変わってないんですけど」
宙は歩きながらそんな感想を漏らした。まだ実感が湧かなくて当然だ。これからおいおい不安や恐怖が襲ってくるかもしれない。
集落の手前で、大木のそばで上を眺めていた大工さんに会った。
「はい」
宙は桂坂さんを見ながら真剣にうなずく。何か重大な話だということは雰囲気で分かったのだろう。
「私たち、宙君も含めてだけど。私たちはどうやら異世界に来たみたいなの。以前いた現実の世界ではない世界」
「ええっー!」
驚かずにはいられなかったようだ。
「私たちもこの世界のことがよくわからないの。森がずっと続いててここから出られないので、ここがどこかもいまだにわからない。あ、私たちは二週間以上前にここに来たんだけど」
「二週間? ど、どうやって暮らしてるんですか?」
「この先に集落があるんだ。そこに十二軒ほど家が建っていて、そこで暮らしてるんだ」
「じゃあ、皆さん、そこでお世話になってるわけですか」
「いや、お世話というか……僕たちが集落にたどり着いた時にはその集落には誰もいなかったんだ」
宙はそれを聞くと、意味が分からないという表情で、口をポカンと開けた。
「僕も桂坂さんも宙君と同じように、普通の世界に住む普通の日本人なんだ。だけどなぜか突然この森に飛ばされてきた。同じように飛ばされてきた仲間が全部で十六人いて、今はみんなで暮らしている」
「暮らしているって、森から出ればいいじゃないですか!」
「それが出られないんだよ。僕たちもずっと森から出るルートを探索し続けてるんだけど……」
「そんな……」
宙は天を仰いだ。
「じゃあ、母とか妹とかにはもう会えないんですか」
「今の時点ではそうなるね。僕らもこの窮地を脱する方法を頑張って探してはいるんだけど……。みんな家族と別れ別れになったままだ」
「とにかく一緒に家に行きましょ。そこで別の人にもちゃんと話してもらうから」
桂坂さんが優しく宙に語りかけた。まだ事情を完全には飲み込めてないだろう宙は、次にやるべきことが自分では判断出来ないと悟ったらしく、大人しく僕たちについてきた。
「カバンの方は僕が持つよ」
僕は手を伸ばしてカバンを受け取ったが、思ったよりズッシリと重く、危うくバランスを崩しそうになった。こんな重いものを持ってたのか。見た目以上に力持ちだな、と感心した。
「何だか嘘みたいです。さっきまでキャンプで森の中にいたんで、周りはそんなに変わってないんですけど」
宙は歩きながらそんな感想を漏らした。まだ実感が湧かなくて当然だ。これからおいおい不安や恐怖が襲ってくるかもしれない。
集落の手前で、大木のそばで上を眺めていた大工さんに会った。
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