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川と道
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「保育士さん、なかなかやりますね」
僕は彼女に褒め言葉をかけた。
「そんな大したことは……。でも、結果的にやっておいて良かったかも」
彼女は謙遜しながらも、今日の成果を思い出して微笑んだ。
「しばらく進んでいると、草の間に水が流れているのを発見したんだ。川と呼ぶにはあまりに小さいのだが、確実に流れが出来ている。それは湖に流れ込むようになっていた」
そこでスカウトさんは、大きく息を吸い込んだ。
「俺たちは川の流れを上流にたどっていった。といっても、やはり草が生い茂っているからそんなに簡単には進めない。それでもなんとか進んでいくと、岩壁になっているところを見つけたんだ。そしてその岩の間から水がチョロチョロと出ているのを発見した」
「川自体はもっと上まで続いてる感じでしたけど、この岩の湧き水が川に流れ込んでいるのは確実でしたね」
自転車君がそのときの様子を付け加える。
「理科さんに観てもらおうと思ったが、そこに来るだけでも一苦労なので、今日はとりあえず、持って帰れるだけ水を持って帰ることにした。俺と自転車君と保育士さんで、手分けして容器になりそうなものに片っ端から入れて運んだきたわけだ」
「スカウトさんたちが湖に戻ってきたとき、とりあえず清浄度を調べたんだけど、かなりきれいな水っぽい。これから詳しく細菌とか検査するけど、今までの水の中では、一番飲み水に使えそうな水なんじゃないかしら?」
理科さんが見解を述べた。
「じゃあ、明日はみんなで水汲みにいくのがええんかな?」
大工さんが誰ともなしに訊く。
「そうだな。何人かで、そうしたほうがいいかもしれない」とスカウトさん。
「それならちゃんとした道を作ったほうが良くないですか?」
それまでじっとみんなの話を聞いていた路木さんが、初めて発言した。
「ええと、あなたは……」
そう言えば、スカウトさんたちへの紹介はまだだった。他の連中には昼間のうちに自己紹介は終わっているし、路木さんにも一通り事情は説明し終わっている。
「あ、路木といいます」
「路木さんは土木のお仕事をなさってるんですよ」
桂坂さんが横からスカウトさんに補足する。
「その湖までの経路や湖の周りがどんな風になっているか分かりませんが、聞いてるとかなり動きにくそうかな、と思ったんです。水があるところにこれからも頻繁にいく必要があるなら、道を整備する必要がありますね」
「うん」
「といっても、重機どころか道具すらろくにないんで、大したことは出来ないですけどね。それでも実地に見れば、道作りのアドバイスぐらいは出来ると思いますよ」
僕は彼女に褒め言葉をかけた。
「そんな大したことは……。でも、結果的にやっておいて良かったかも」
彼女は謙遜しながらも、今日の成果を思い出して微笑んだ。
「しばらく進んでいると、草の間に水が流れているのを発見したんだ。川と呼ぶにはあまりに小さいのだが、確実に流れが出来ている。それは湖に流れ込むようになっていた」
そこでスカウトさんは、大きく息を吸い込んだ。
「俺たちは川の流れを上流にたどっていった。といっても、やはり草が生い茂っているからそんなに簡単には進めない。それでもなんとか進んでいくと、岩壁になっているところを見つけたんだ。そしてその岩の間から水がチョロチョロと出ているのを発見した」
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