異世界転移物語

月夜

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診断

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「意識はしっかりしてるのお。おい、痛いところとかあるか?」

    ドクターは声をかけながら、胸を触ったり、口の中を覗いたりしている。僕たちはその後ろで、発見時の状況と釣りキチさんから聞いた倒れた際の状況をドクターに伝えた。しばらく診断したあと、ナースさんとも二言三言言葉を交わしたあと、口を開いた。

「おそらく、そんなに心配することはなかろう。過労か、あるいは慣れない生活で体に負荷がかかりすぎて倒れたんじゃないかと思うが……。ざっと見たところ、何か重病に関連してると思われる兆候はないようだが」

    ドクターの言葉に、皆一様にほっとした表情を見せた。

「ただし、精密検査ができるわけでもないから、ほんとのところは分からん。とりあえず、しばらく安静にしておくぐらいしかないかの」

「熱はどうでした?」

    生果さんがドクターに尋ねる。

「ない。ほぼ平熱じゃ」

    ドクターが答えたあと、ナースさんが続けた。

 「あの……とりあえず、私がついて見てますので、皆さんお食事なさってください」

    時間的にはいつもよりかなり遅い時間になっている。普段ならもうとっくに食べ終わってる頃だ。今晩は他のメンバーも僕らの帰りをずっと待ってくれてたようで、まだ誰も食べていなかった。

「そうですね。皆さん、夕食にしましょう」

    僕はみんなを見渡しながら言った。隣の家で夕食を食べながら、話題は自然と釣りキチさんの話になった。

「やっぱり、釣りキチさんを一人で釣りに行かせるのは良くないな」

   スカウトさんの意見はもっともだ。今まではたまたまトラブルもなく安全だったので、単独行動してもらっていたが、これからはそうはいかないだろう。

「スマホみたいな連絡手段もない以上、遠出する場合は複数で、というのが原則だろうな」

「そうですね。森の中で迷子にでもなったら致命的ですし」

   自転車君が森の様子を思い浮かべている風に上目遣いになりながら言う。

「釣りキチさんと一緒にいくのは女性でもいいでしょうかね?」

    生果さんがスカウトさんに尋ねた。そのまま補足する。

「というのはですね。どうしても男の人の方が、力仕事とかやることがいっぱいあると思うんで、丸々一日釣りに付き合う余裕はないんじゃないかと思ったんです」

「なるほどなあ。最初は健太に釣りを覚えてもろうこともやっていたが、人が増えるにつれ仕事も多様になってきて手が足りなくなったんでやめてしまった。しばらくは男手はいくらでも欲しい感じではあるな」
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