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発見
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もうすっかり暗くなってきたので、顔の判別すら困難となっていて、とにかく誰か人の姿を見つければそれを釣りキチさんと見なして声をかけるしかない。
僕らは三方に分かれて捜索した。僕が比較的高い草が生い茂っている草叢で捜していたところ、「あっ!」という叫び声が近くで聞こえた。あれは自転車君の声だ。
声のした方向に向かってゆくと、自転車君のそばに草叢の中で倒れ込んでいる釣りキさんがいた。
「大丈夫ですか!」
そばで声をかけ続けている自転車君。
「釣りキチさん!」
僕も慌ててそばに駆け寄り、横でひざまづく。
「ときおり小さなうめき声が聞こえるので意識はあるようです」
自転車君の言葉に僕はとりあえずホッとした。命に別状はなさそうだ。ほどなくしてスカウトさんも合流した。
「釣りキチさん、釣りキチさん!」
スカウトさんが耳元で呼びかけると、釣りキチさんは薄っすらと目を開けた。
「どうしたんですか!」
「あ……急に……めまいがして……ふらっとしたと思ったら倒れてしまって……」
「どこか苦しいところは?」
「だ、大丈夫……」
「ケガとかないですか」
「たぶん……」
釣りキチさんは苦しそうではあるが、意識はしっかりしているように見えた。
「どうしよう?」
自転車君の困惑の言葉に、スカウトさんは静かに言った。
「とにかく連れて帰ってドクターにみてもらおう! 釣りキチさん、立てるか?」
釣りキチさんは首を振る。
「うーん、釣りキチさんをおぶって帰るしかないか……。よし、俺がおぶる。釣りキチさんを背中に乗せるのを手伝ってくれ」
スカウトさんは後ろ向きになると、僕と自転車君に頼み込んだ。僕らは両側から釣りキチさんを抱えると、しゃがみこんだスカウトさんの背中に乗せた。
「大丈夫か?」
スカウトさんは背中に声をかける。釣りキチさんは言葉は発しなかったが、スカウトさんの背で弱々しくうなずいたので、それを僕はスカウトさんに伝えた。
「よし、急ごう」
スカウトさんが持っていた荷物は自転車君が一緒に持ち、僕たちは帰路を急いだ。何度か呻くような仕草を見せた釣りキチさんだったが、なんとか無事に家にたどり着くことが出来た。
「スカウトさん!」
家の少し手前で桂坂さんの声が聞こえた。見ると家の前でみんなが僕たちを出迎えてくれている。不安を抱きながら、ずっと待ち続けていたのだろう。
「釣りキチさんが……」
家に入るとスカウトさんは後ろ向きにしゃがみ、背中のスカウトさんを下ろしてすぐにみんなで寝かせた。早速、ドクターが釣りキチさんを診る。
僕らは三方に分かれて捜索した。僕が比較的高い草が生い茂っている草叢で捜していたところ、「あっ!」という叫び声が近くで聞こえた。あれは自転車君の声だ。
声のした方向に向かってゆくと、自転車君のそばに草叢の中で倒れ込んでいる釣りキさんがいた。
「大丈夫ですか!」
そばで声をかけ続けている自転車君。
「釣りキチさん!」
僕も慌ててそばに駆け寄り、横でひざまづく。
「ときおり小さなうめき声が聞こえるので意識はあるようです」
自転車君の言葉に僕はとりあえずホッとした。命に別状はなさそうだ。ほどなくしてスカウトさんも合流した。
「釣りキチさん、釣りキチさん!」
スカウトさんが耳元で呼びかけると、釣りキチさんは薄っすらと目を開けた。
「どうしたんですか!」
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「どこか苦しいところは?」
「だ、大丈夫……」
「ケガとかないですか」
「たぶん……」
釣りキチさんは苦しそうではあるが、意識はしっかりしているように見えた。
「どうしよう?」
自転車君の困惑の言葉に、スカウトさんは静かに言った。
「とにかく連れて帰ってドクターにみてもらおう! 釣りキチさん、立てるか?」
釣りキチさんは首を振る。
「うーん、釣りキチさんをおぶって帰るしかないか……。よし、俺がおぶる。釣りキチさんを背中に乗せるのを手伝ってくれ」
スカウトさんは後ろ向きになると、僕と自転車君に頼み込んだ。僕らは両側から釣りキチさんを抱えると、しゃがみこんだスカウトさんの背中に乗せた。
「大丈夫か?」
スカウトさんは背中に声をかける。釣りキチさんは言葉は発しなかったが、スカウトさんの背で弱々しくうなずいたので、それを僕はスカウトさんに伝えた。
「よし、急ごう」
スカウトさんが持っていた荷物は自転車君が一緒に持ち、僕たちは帰路を急いだ。何度か呻くような仕草を見せた釣りキチさんだったが、なんとか無事に家にたどり着くことが出来た。
「スカウトさん!」
家の少し手前で桂坂さんの声が聞こえた。見ると家の前でみんなが僕たちを出迎えてくれている。不安を抱きながら、ずっと待ち続けていたのだろう。
「釣りキチさんが……」
家に入るとスカウトさんは後ろ向きにしゃがみ、背中のスカウトさんを下ろしてすぐにみんなで寝かせた。早速、ドクターが釣りキチさんを診る。
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