異世界転移物語

貢献度の問題

「ああ、全然心配することありませんよ。僕なんかまるで貢献してませんから」

   僕は真っ先にフォローしたが、当然のごとく「胸を張って言うとこじゃねえ！」と農家さんからツッコミが入り、みんな笑った。僕はこのメンバーの中では足を引っ張る人間であると心底思っていたが、保育士さんへのセリフは半分本気、半分冗談である。

    実際のところ、料子さんやナースさん、大工さんのような専門職の人もいれば、僕や自転車君、桂坂さんのように身軽に動ける人もいてこそ、全体がうまく回ってる面もある。そのことは、特に口にはしないけれど、みんな薄々感じていることだと思う。その証拠に役割に対する不満はほとんどきかれない。

「そうよ。そんなこと気にするなんて嫌だわ。今までの知識は確かに役に立つけど、ここじゃ結局一人では生きられないんだから、だれかを頼ったり頼られたりするのは当たり前だと思わなきゃ」

    料子さんが明るく励ましたおかげで保育士さんの顔も少しは明るさを取り戻した。

「それにもしかしたらこれから先、子供たちがこの世界に来るかもしれないじゃないですか。その時は保育士さんの力が必要になると思います」

    桂坂さんも自分の考えを述べながら、保育士さんをフォローする。

「そうだな……保育士さんの気持ちは分かる。こうやってみんなで一緒に暮らす上では、必要な仕事を割り振るのと、それぞれの持つ特技が活かされる仕事を作っていくことの両面が必要なのかもな……」

    スカウトさんが難しそうな顔をして腕組みをした。人が増えていくにつれて、それ相応の問題がまた色々出てくるんだろうな、と僕は思った。

    翌日の午前中は、僕は畑仕事で、スカウトさんと自転車君が森の探索といういつものパターンだった。今日の畑仕事にはナースさんと保母さん、桂坂さんも加わっている。生活面ではそんなにもうやることがないし、農作業のほうは女性でもできることがたくさんあったから、農家さんも喜んで受け入れている。情けないことに僕は相変わらずバテバテだったが、女性陣は総じてタフだった。もともと花木の世話が好きな女性が多いことを思えば、案外こういう土仕事はみんな向いているかもしれない。

    お昼になり、僕と桂坂さんはまた「場」に足を運んだ。今日は一体どんな人が来るだろうか？

    現れたのは、白衣を着た男性。これはどうみてもお医者さんだ。しかも医療機材らしきものを抱えている。

「ここは一体……」

     戸惑うお医者さんを警戒させないよう僕らは丁寧に説明した。案外すぐにお医者さんは今の状況を理解した。