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副産物
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「これって、休憩用の買い出しかなんかですか?」
「よく分かったなあ。そうや。スーパーから現場に帰ってきたところや」
「作業着でスーパーに行かれたんですか?」
「そんなん当たり前だろ。いちいち着替えなんかしてられるか!」
そう言えば、普段でもスーパーでもこんな格好の人を見かけることがあるのを今、思い出した。ビニール袋の中には他に釘や工具など、細かい品がいくつか入っていた。
「ああ、それはな。飲み物の買い出しついでにホームセンターで資材の足りない奴とか買ったんや」
そんな話をしながら歩いていると、やがて集落に着いた。集落の様子を見るなり、大工さんは感心したような表情を見せた。
「ほう。思ったより立派な作りの家やんか。森の中っていうんで、掘っ建て小屋みたいなもん想像しとったで」
「ただ、これ釘とか一切使ってないみたいなんです」
僕の言葉に一瞬驚く表情を見せた大工さんは、家をじっくり観察してから言った。
「ほんとやな」
家に入って、料子さんや生果さんと引き合わせたら、彼女たちは飲み物を見てとても喜んだ。今まではほとんど水しか飲めなかったし、保存が効く食料だって少なかったからだ。
一通りの話が終わると、大工さんは集落の各家を見て回りたいと言ってきたので、僕が案内した。大工の目で見て、気になることが多々あるのだろう。今まではスカウトさんに家の補強などしてもらっていたが、これからは大工さんにやってもらえそうだ。
僕には大工作業の詳しいことは分からないが、素人目に見ても、小さな鋸と釘があるだけで、木製品の製作が可能になり、生活の幅がかなり広がることが期待出来そうだと分かった。
夕方になり、スカウトさんと自転車君、それに釣りキチさんが帰って来ると、それぞれまた沢山の飲み物に驚いた。
「すごいですね。まるで差し入れみたいです」
自転車君にとってはほんの昨日までの見慣れた日常であろうが、差し入れみたいとはよく言ったものだ。
スカウトさんは大工さんが来た話を聞いて、また別の視点から分析したみたいだ。
「かなり金属が増えてきたな。特に鉄」
「そうですかね」
釣りキチさんはあまりピンときてないようだ。
「大工さんの釘はステンレス釘らしいが、工具は鉄が多いだろ。それに缶ジュースもアルミやスティールだ。それから自転車にもたくさんの金属が使われている」
「最初は石の道具しかなかったことを思えば、確かに随分増えましたね」
僕は来た頃を思い出しながら言った。
「空き缶も使い道次第ではかなり役に立つんじゃないかな。もっと資材や工具が増えてくれば、金属加工の道も開けるかもしれない」
「よく分かったなあ。そうや。スーパーから現場に帰ってきたところや」
「作業着でスーパーに行かれたんですか?」
「そんなん当たり前だろ。いちいち着替えなんかしてられるか!」
そう言えば、普段でもスーパーでもこんな格好の人を見かけることがあるのを今、思い出した。ビニール袋の中には他に釘や工具など、細かい品がいくつか入っていた。
「ああ、それはな。飲み物の買い出しついでにホームセンターで資材の足りない奴とか買ったんや」
そんな話をしながら歩いていると、やがて集落に着いた。集落の様子を見るなり、大工さんは感心したような表情を見せた。
「ほう。思ったより立派な作りの家やんか。森の中っていうんで、掘っ建て小屋みたいなもん想像しとったで」
「ただ、これ釘とか一切使ってないみたいなんです」
僕の言葉に一瞬驚く表情を見せた大工さんは、家をじっくり観察してから言った。
「ほんとやな」
家に入って、料子さんや生果さんと引き合わせたら、彼女たちは飲み物を見てとても喜んだ。今まではほとんど水しか飲めなかったし、保存が効く食料だって少なかったからだ。
一通りの話が終わると、大工さんは集落の各家を見て回りたいと言ってきたので、僕が案内した。大工の目で見て、気になることが多々あるのだろう。今まではスカウトさんに家の補強などしてもらっていたが、これからは大工さんにやってもらえそうだ。
僕には大工作業の詳しいことは分からないが、素人目に見ても、小さな鋸と釘があるだけで、木製品の製作が可能になり、生活の幅がかなり広がることが期待出来そうだと分かった。
夕方になり、スカウトさんと自転車君、それに釣りキチさんが帰って来ると、それぞれまた沢山の飲み物に驚いた。
「すごいですね。まるで差し入れみたいです」
自転車君にとってはほんの昨日までの見慣れた日常であろうが、差し入れみたいとはよく言ったものだ。
スカウトさんは大工さんが来た話を聞いて、また別の視点から分析したみたいだ。
「かなり金属が増えてきたな。特に鉄」
「そうですかね」
釣りキチさんはあまりピンときてないようだ。
「大工さんの釘はステンレス釘らしいが、工具は鉄が多いだろ。それに缶ジュースもアルミやスティールだ。それから自転車にもたくさんの金属が使われている」
「最初は石の道具しかなかったことを思えば、確かに随分増えましたね」
僕は来た頃を思い出しながら言った。
「空き缶も使い道次第ではかなり役に立つんじゃないかな。もっと資材や工具が増えてくれば、金属加工の道も開けるかもしれない」
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