異世界転移物語

月夜

文字の大きさ
上 下
63 / 319

好奇心

しおりを挟む
    そのまま自転車君自身の話題に移り、結局、夕食時は自転車君の話題で盛り上がったまま終わった。スカウトさんがリーダーの話をするかと思ったが、特にそれには触れなかった。スカウトさんにはまだ何か考えがあるのかもしれない。もちろん、僕の方から言う必要もないから、僕は黙ったままだったのだが。

    翌朝、起きて外に出ると自転車君がもう起きていて、自転車を磨いていた。

「おはよう。随分早いね」

「そうですか?  これ、普通だと思うんですが」

「いやいや、大学生はそんな早く起きないでしょ」

「そりゃ、偏見ですって。僕はたまに早朝バイト入れたりするんで、早起きは全然苦にならないんですけどね」

「そんなもんかね……」

    なんか自分がだらしない学生に思えてきた。事実、そうに違いないが。もっと充実した学生生活を送った方が良かったと今になって思うが、もう後の祭りだ。せめてこの世界ではもう少し真面目に生きよう。

「おはよう」

    スカウトさんも起きてきて、僕ら二人に声をかけた。

「おはようございます」

    僕と自転車君は声を揃えて挨拶する。

「今日も森の探索をするつもりだが、健太、今日はどうする?」

    早速、スカウトさんは今日の動きを相談してきた。他の人はだいたい動きが決まってるから、このメンバーでも十分相談出来ると考えたからだろうか。

「僕はまた森の探索でもいいですよ」

    疲れもないし、ケガしたわけでもないので、今日も特段支障なく歩き回れる。

「あ、それ、僕も連れて行ってもらえます?」

    二人の会話を聞いていた自転車君が割って入った。

「昨日来たばっかりで、ここのこと何も分からないし、森の中が実際にどうなっているのか、この目で見てみたいんです」

    好奇心に満ち溢れた口調で、スカウトさんにアピールしている。昨日、森の脱出口が見つからないという話を聞いたはずだが、話だけでは、あまりピンと来ていないのだろう。もしかしたら、自分なら何か見つけられるという自信も少しあるのかもしれない。

「それもいいな。じゃ、今日は自転車君と森を回るってことでいいかな?」

    自転車君ほどの熱意もなかった僕は、ただうなずくより他なかった。

    そんなわけで今日はスカウトさんと自転車君が森の探索に出かけることになり、僕は農家さんの手伝いと午後の迎えという以前の動きに戻った。

    スカウトさんと自転車君は出発し、僕は農家さんといつもの畑仕事に入った。自転車君の自転車はもちろん置いたままだ。森の中では役に立たないからだ。農家さんには、昨日のナースさんのほうが役に立った、と皮肉を投げかけられながら、僕は午前中を過ごした。それでも少しずつ畑仕事に体が慣れつつあるのを感じた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

処理中です...