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好奇心
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そのまま自転車君自身の話題に移り、結局、夕食時は自転車君の話題で盛り上がったまま終わった。スカウトさんがリーダーの話をするかと思ったが、特にそれには触れなかった。スカウトさんにはまだ何か考えがあるのかもしれない。もちろん、僕の方から言う必要もないから、僕は黙ったままだったのだが。
翌朝、起きて外に出ると自転車君がもう起きていて、自転車を磨いていた。
「おはよう。随分早いね」
「そうですか? これ、普通だと思うんですが」
「いやいや、大学生はそんな早く起きないでしょ」
「そりゃ、偏見ですって。僕はたまに早朝バイト入れたりするんで、早起きは全然苦にならないんですけどね」
「そんなもんかね……」
なんか自分がだらしない学生に思えてきた。事実、そうに違いないが。もっと充実した学生生活を送った方が良かったと今になって思うが、もう後の祭りだ。せめてこの世界ではもう少し真面目に生きよう。
「おはよう」
スカウトさんも起きてきて、僕ら二人に声をかけた。
「おはようございます」
僕と自転車君は声を揃えて挨拶する。
「今日も森の探索をするつもりだが、健太、今日はどうする?」
早速、スカウトさんは今日の動きを相談してきた。他の人はだいたい動きが決まってるから、このメンバーでも十分相談出来ると考えたからだろうか。
「僕はまた森の探索でもいいですよ」
疲れもないし、ケガしたわけでもないので、今日も特段支障なく歩き回れる。
「あ、それ、僕も連れて行ってもらえます?」
二人の会話を聞いていた自転車君が割って入った。
「昨日来たばっかりで、ここのこと何も分からないし、森の中が実際にどうなっているのか、この目で見てみたいんです」
好奇心に満ち溢れた口調で、スカウトさんにアピールしている。昨日、森の脱出口が見つからないという話を聞いたはずだが、話だけでは、あまりピンと来ていないのだろう。もしかしたら、自分なら何か見つけられるという自信も少しあるのかもしれない。
「それもいいな。じゃ、今日は自転車君と森を回るってことでいいかな?」
自転車君ほどの熱意もなかった僕は、ただうなずくより他なかった。
そんなわけで今日はスカウトさんと自転車君が森の探索に出かけることになり、僕は農家さんの手伝いと午後の迎えという以前の動きに戻った。
スカウトさんと自転車君は出発し、僕は農家さんといつもの畑仕事に入った。自転車君の自転車はもちろん置いたままだ。森の中では役に立たないからだ。農家さんには、昨日のナースさんのほうが役に立った、と皮肉を投げかけられながら、僕は午前中を過ごした。それでも少しずつ畑仕事に体が慣れつつあるのを感じた。
翌朝、起きて外に出ると自転車君がもう起きていて、自転車を磨いていた。
「おはよう。随分早いね」
「そうですか? これ、普通だと思うんですが」
「いやいや、大学生はそんな早く起きないでしょ」
「そりゃ、偏見ですって。僕はたまに早朝バイト入れたりするんで、早起きは全然苦にならないんですけどね」
「そんなもんかね……」
なんか自分がだらしない学生に思えてきた。事実、そうに違いないが。もっと充実した学生生活を送った方が良かったと今になって思うが、もう後の祭りだ。せめてこの世界ではもう少し真面目に生きよう。
「おはよう」
スカウトさんも起きてきて、僕ら二人に声をかけた。
「おはようございます」
僕と自転車君は声を揃えて挨拶する。
「今日も森の探索をするつもりだが、健太、今日はどうする?」
早速、スカウトさんは今日の動きを相談してきた。他の人はだいたい動きが決まってるから、このメンバーでも十分相談出来ると考えたからだろうか。
「僕はまた森の探索でもいいですよ」
疲れもないし、ケガしたわけでもないので、今日も特段支障なく歩き回れる。
「あ、それ、僕も連れて行ってもらえます?」
二人の会話を聞いていた自転車君が割って入った。
「昨日来たばっかりで、ここのこと何も分からないし、森の中が実際にどうなっているのか、この目で見てみたいんです」
好奇心に満ち溢れた口調で、スカウトさんにアピールしている。昨日、森の脱出口が見つからないという話を聞いたはずだが、話だけでは、あまりピンと来ていないのだろう。もしかしたら、自分なら何か見つけられるという自信も少しあるのかもしれない。
「それもいいな。じゃ、今日は自転車君と森を回るってことでいいかな?」
自転車君ほどの熱意もなかった僕は、ただうなずくより他なかった。
そんなわけで今日はスカウトさんと自転車君が森の探索に出かけることになり、僕は農家さんの手伝いと午後の迎えという以前の動きに戻った。
スカウトさんと自転車君は出発し、僕は農家さんといつもの畑仕事に入った。自転車君の自転車はもちろん置いたままだ。森の中では役に立たないからだ。農家さんには、昨日のナースさんのほうが役に立った、と皮肉を投げかけられながら、僕は午前中を過ごした。それでも少しずつ畑仕事に体が慣れつつあるのを感じた。
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