52 / 319
役目
しおりを挟む
「そうだな……これから何が起こるか分からないしな」とスカウトさん。
「向こうじゃ個人情報とかいって、秘密にしたいこともあったかも知れないけど、ここだとみんなで協力しあって生きていくしかないもんね」
桂坂さんも全面的に同意してくれた。「私も賛成」「いいんじゃないですか」と料子さん、釣りキチさんも賛成してくれた。
「じゃ、その役目は健太に頼んでいいか?」
真っ直ぐ俺を見たスカウトさんが言った。俺も素直に答えざるを得ない。
「はい。僕で良ければ。言い出しっぺですから、責任持ってやらせてもらいます!」
そう硬くなるな、とスカウトさんにたしなめられた。みんなにバレバレになるほど、肩に力が入っていたらしい。
本当はパソコンがあれば、データ整理は楽なんだが、とにかくそろそろ記録しておかないと、後になればなるほど事務作業が大変になる。古代人とは違って、僕たちには共通の文字があるので、それを活かさない手はない。
「俺たちもデータ採取に全面的に協力しよう」
スカウトさんはみんなに声をかけた。
俺たちはその夜は、話し合った通り、二軒の家を使って寝た。夜はあまり明かりが使えないので、事務は明日になってからで、今日は早く眠ることにした。農家さんも落ち着いたみたいで、近くでスヤスヤと眠る寝息が聞こえる。僕もいつしか眠りに吸い込まれた……。
翌朝になって僕が目を覚ました頃には、農家さんはピンピンしていた。いつも通り、農作業を始めそうな勢いだったので、慌てて「今朝は少し様子をみたほうが」と忠告したのだけれど、逆に「わけえもんがそげなことじゃあかんべ!」と叱られた。
「すっかり元気になりましたね」
僕たちのやりとりを眺めていた料子さんが笑いながら言った。
「今朝、体温測ったんですけど、問題はないですね。一時的な腹痛だったんでしょう。たぶんもう大丈夫です」
隣でナースさんもうなずく。
「ほら、健太。看護士さんもこう言っとる。わしは不死身じゃ。健太も早う支度しろ。畑行くぞ!」
微笑ましいと言わんばかりに僕たちを眺めていた釣りキチさんも最後には笑い出した。まったく元気過ぎるのも困ったもんだ。僕は戸惑いながらも、農家さんに付き従って畑へと行った。
午前中は、このまま畑仕事だ。昼の間や夕食前に、昨日話題に出た名簿作りを進めていく予定である。それに午後一番は、桂坂さんと二人で、新入りを迎えにいかなくてはならない。
畑の作業には相変わらず慣れないままだが、初日に比べると体力的にも少し余裕が出てきた。草ぼうぼうの荒地が、適した農地に変わっていく様子を体感出来るのは気持ちいい。
「向こうじゃ個人情報とかいって、秘密にしたいこともあったかも知れないけど、ここだとみんなで協力しあって生きていくしかないもんね」
桂坂さんも全面的に同意してくれた。「私も賛成」「いいんじゃないですか」と料子さん、釣りキチさんも賛成してくれた。
「じゃ、その役目は健太に頼んでいいか?」
真っ直ぐ俺を見たスカウトさんが言った。俺も素直に答えざるを得ない。
「はい。僕で良ければ。言い出しっぺですから、責任持ってやらせてもらいます!」
そう硬くなるな、とスカウトさんにたしなめられた。みんなにバレバレになるほど、肩に力が入っていたらしい。
本当はパソコンがあれば、データ整理は楽なんだが、とにかくそろそろ記録しておかないと、後になればなるほど事務作業が大変になる。古代人とは違って、僕たちには共通の文字があるので、それを活かさない手はない。
「俺たちもデータ採取に全面的に協力しよう」
スカウトさんはみんなに声をかけた。
俺たちはその夜は、話し合った通り、二軒の家を使って寝た。夜はあまり明かりが使えないので、事務は明日になってからで、今日は早く眠ることにした。農家さんも落ち着いたみたいで、近くでスヤスヤと眠る寝息が聞こえる。僕もいつしか眠りに吸い込まれた……。
翌朝になって僕が目を覚ました頃には、農家さんはピンピンしていた。いつも通り、農作業を始めそうな勢いだったので、慌てて「今朝は少し様子をみたほうが」と忠告したのだけれど、逆に「わけえもんがそげなことじゃあかんべ!」と叱られた。
「すっかり元気になりましたね」
僕たちのやりとりを眺めていた料子さんが笑いながら言った。
「今朝、体温測ったんですけど、問題はないですね。一時的な腹痛だったんでしょう。たぶんもう大丈夫です」
隣でナースさんもうなずく。
「ほら、健太。看護士さんもこう言っとる。わしは不死身じゃ。健太も早う支度しろ。畑行くぞ!」
微笑ましいと言わんばかりに僕たちを眺めていた釣りキチさんも最後には笑い出した。まったく元気過ぎるのも困ったもんだ。僕は戸惑いながらも、農家さんに付き従って畑へと行った。
午前中は、このまま畑仕事だ。昼の間や夕食前に、昨日話題に出た名簿作りを進めていく予定である。それに午後一番は、桂坂さんと二人で、新入りを迎えにいかなくてはならない。
畑の作業には相変わらず慣れないままだが、初日に比べると体力的にも少し余裕が出てきた。草ぼうぼうの荒地が、適した農地に変わっていく様子を体感出来るのは気持ちいい。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる