異世界転移物語

月夜

文字の大きさ
上 下
24 / 319

夕食

しおりを挟む
    家に戻ると、先に帰っていた桂坂さんたちが出迎えてくれた。

「魚、無事に釣れたわよ!」

嬉しそうに桂坂さんが言う。

「さすが釣りキチさんですね」

僕は、スカウトさんとともにクーラーボックスの中を覗いた。

「ところでこの魚、なんだろうなあ?」

    知識豊富のスカウトさんでも首をかしげている。

「それなんですよ。僕も湖での釣りはあんまりしたことないのでわからないのかも知れませんが、この魚は今まで見たことないですね。似たような魚はたくさんいますけど、ちょっと違うんですよね」

    釣りキチさんすら分からないほど、珍しい魚なのだろうか?  僕は魚のことはほぼ無知に等しいレベルなので、何も意見は出来ないが。

    串に刺して、じっくり焼き上げたあと、みんなで食べた。

「美味しい!」

    桂坂さんが叫んだが、僕らも同じ想いだ。久しぶりに食べる魚が料理の美味しいこと。どんな高級レストランで食べるより美味しいのではないか?  まあ、高級レストランにほとんど縁はないのだけれど。

「うん、これは美味いな。でかした、釣りキチ君」

    スカウトさんもべた褒めだ。

「いえいえ、とんでもない。趣味が活かされて僕も嬉しいです」

    釣りキチさんは謙遜しているが、何も取り柄のない僕から見たら、釣りキチさんは眩しすぎる。

「これで、食料の問題は、少し解決したわね!」

    うん、そうだ。とりあえずタンパク質の補給は出来そうだな。最悪、気持ち悪い虫とかも食べる覚悟はしてたから、これで一安心。

    久しぶりの腹一杯の食事を味わったあと、寝る用意をしたが、そこでやはり、今夜はどうしようか、という話になった。

「そうだな。まだ4人だから同じ家で寝てもスペースは充分あるだろ。どんな危険があるか分からないから、別々に寝るのはよした方が良さそうだな」

    スカウトさんが考え考え答えた。僕も釣りキチさんも概ねそれに賛同した。

「でも、流石にこれからどんどん増えてくるようなら、ちゃんと考えなくちゃなりませんね」

    僕は以前から気になっていた可能性に言及した。僕の言葉を聞きとめた釣りキチさんが、口を挟んだ。

「ちょっと待ってください。これからどんどん増える、ってどういうことですか?」

「あ、そうか。釣りキチ君にはまだ詳しく話してなかったんだな。あ、うーん、健太、説明出来るか?」

    スカウトさんが僕に話を振ってきたのは、おそらく僕が一番最初にここに来たからだろう。説明自体は、スカウトさんがしたほうが分かりやすいと思うのだが、振られた以上、ここは僕が説明するべきだろう。

    僕は釣りキチさんに今までの経緯を全部説明した。毎日、同じ時間に同じ場所で、新しい人が送り込まれてくる、と。釣りキチが最初に来たばかりのときは、そこまで詳しくは説明していなかったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

本物の恋、見つけましたⅡ ~今の私は地味だけど素敵な彼に夢中です~

日之影ソラ
恋愛
本物の恋を見つけたエミリアは、ゆっくり時間をかけユートと心を通わていく。 そうして念願が叶い、ユートと相思相愛になることが出来た。 ユートからプロポーズされ浮かれるエミリアだったが、二人にはまだまだ超えなくてはならない壁がたくさんある。 身分の違い、生きてきた環境の違い、価値観の違い。 様々な違いを抱えながら、一歩ずつ幸せに向かって前進していく。 何があっても関係ありません! 私とユートの恋は本物だってことを証明してみせます! 『本物の恋、見つけました』の続編です。 二章から読んでも楽しめるようになっています。

冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました! 小説家になろうにて先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n5925iz/ 残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。 だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。 そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。 実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく! ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう! 彼女はむしろ喜んだ。

別れた婚約者が「俺のこと、まだ好きなんだろう?」と復縁せまってきて気持ち悪いんですが

リオール
恋愛
婚約破棄して別れたはずなのに、なぜか元婚約者に復縁迫られてるんですけど!? ※ご都合主義展開 ※全7話  

【完結】愛されなかった私が幸せになるまで 〜旦那様には大切な幼馴染がいる〜

高瀬船
恋愛
2年前に婚約し、婚姻式を終えた夜。 フィファナはドキドキと逸る鼓動を落ち着かせるため、夫婦の寝室で夫を待っていた。 湯上りで温まった体が夜の冷たい空気に冷えて来た頃やってきた夫、ヨードはベッドにぽつりと所在なさげに座り、待っていたフィファナを嫌悪感の籠った瞳で一瞥し呆れたように「まだ起きていたのか」と吐き捨てた。 夫婦になるつもりはないと冷たく告げて寝室を去っていくヨードの後ろ姿を見ながら、フィファナは悲しげに唇を噛み締めたのだった。

【完結】地味令嬢の願いが叶う刻

白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。 幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。 家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、 いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。 ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。 庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。 レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。 だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。 喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…  異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

【完結】結婚式当日、婚約者と姉に裏切られて惨めに捨てられた花嫁ですが

Rohdea
恋愛
結婚式の当日、花婿となる人は式には来ませんでした─── 伯爵家の次女のセアラは、結婚式を控えて幸せな気持ちで過ごしていた。 しかし結婚式当日、夫になるはずの婚約者マイルズは式には現れず、 さらに同時にセアラの二歳年上の姉、シビルも行方知れずに。 どうやら、二人は駆け落ちをしたらしい。 そんな婚約者と姉の二人に裏切られ惨めに捨てられたセアラの前に現れたのは、 シビルの婚約者で、冷酷だの薄情だのと聞かされていた侯爵令息ジョエル。 身勝手に消えた姉の代わりとして、 セアラはジョエルと新たに婚約を結ぶことになってしまう。 そして一方、駆け落ちしたというマイルズとシビル。 二人の思惑は───……

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!

ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。 自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。 しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。 「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」 「は?」 母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。 「もう縁を切ろう」 「マリー」 家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。 義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。 対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。 「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」 都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。 「お兄様にお任せします」 実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。

婚約者の為にと尽くしていた私ですが…ただのお節介女と言われ捨てられてしまいました。

coco
恋愛
婚約してからというもの、ずっと彼に尽くしてきた私。 しかし彼は、そんな私が疎ましくなってしまった様で…?

処理中です...