異世界転移物語

月夜

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朝の曇り空

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    翌朝、僕が目を覚ますと、そばに桂坂さんの姿はなかった。一体、どこに行ったんだろう?  と僕は目をこすりながら考えた。
水があまりないのでろくに顔も洗えない。やはり、色々と不便だな、と感じた。

    寝ぼけたままで、とりあえず外に出てみると、空はやや曇り空だった。そして、大きく背伸びをして空を見上げている桂坂さんがいた。

「おはよう」

「おはよう……」

    桂坂さんの元気な声に比べ、僕の挨拶は蚊の鳴くような声になってしまった。

「早いね……」

「何、言ってんのよ。もう6時よ」

    桂坂さんは、呆れた顔をする。

「6時って……早いじゃんか」

「あのね……あたしたち、昨日の夜はあんなに早く寝たのよ。6時でも充分寝過ぎだと思うわよ」

「いや、まあ、それはそうなんだけど」

「私さあ、普段は5時には起きてるわよ。朝、勉強してたから、色々忙しいの」

「嘘だろ!   僕なんか9時頃までは寝てるよ」

「典型的な夜型生活ね。怠惰な暮らしぶりが目に浮かぶわ」

「バイトとか色々あるんだよ!」

     僕は一応弁解はしたが、まあ、だらりとした生活をしてたのは確かなので、あまり強くも言えない。

「ねえ、今日、朝ご飯とかどうするの?」

「どうって……僕は普段食べてないからなあ」

「そりゃ、9時まで寝てるんだからそうよねえ。私はどうしようかしら」

    桂坂さんは、首をちょっと傾ける。

「いつもはちゃんと朝ご飯食べてるんだけど、この際だからダイエットでもしようかしら」

    桂坂さんのスタイルからすれば、ダイエットなど必要ないような気もするが、こればっかりは女の子の気持ちは分からない。

「まあ、食料の問題は避けて通れないしな。節約できるときに、節約しておいた方がいいかもな」

    結局、二人とも朝食抜きということに落ち着いた。だが、初日はこれでいいとしても、いつまで続けられるかどうか。不安は尽きない。

「今日はどうしようか?」

    少し落ち着いて、僕もばっちり目が覚めたところで、午前中の動きを確認することにした。

「そうね……また道を探す?」

    桂坂さんが上目遣いで僕を伺った。

「湖に水を汲みに行く、っていう選択肢もあると思うけど」

「ああ、なるほど。確かにそれもいいかもね」

    桂坂さんが拳を打つ。

「でも、湖を往復すると、それだけで結構時間かかるからなあ。残りの水の量を考えると、明日とかでも良さそうな気もするんだよね」

    僕は冷静に分析した。

「うーん。どっちを優先すべきかってことよね?」

「とりあえず、昨日発見した湖に行くのはいつでも出来るんだから、今日は脱出ルートを調査したほうがいいと思う」

    僕なりの結論を語った。

「そうね。それでいいと思う」

    こうして僕らはまた、昨日と同様、捜索を開始した。
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