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 時刻は夕方。学校帰りの優花ゆうかは、うつむきながら、道をトボトボと歩いていました。

「はぁ」

 優花は深く、ため息をつきました。そのとき、

 チリン

 どこからか鈴の音が聞こえました。

 優花は辺りを見回し、あるものを見つけます。

「とりいだ……」

 優花はおそるおそると、神社に近づきます。

 鳥居の額束がくつかには、神社の名前が書かれていますが、優花には字が難しすぎて、読めませんでした。
 境内の中に入ると社殿があり、その前には一対の狐の像と賽銭箱があります。

「あ、おさいせん」

 優花はランドセルにつけているポーチから、五円玉を取り出し、お賽銭箱に投げました。

 チャリン

 お賽銭は軽やかな音を立てて、お賽銭箱の中に落ちていきます。

「なにか、お悩みですか?」

 穏やかで柔らかい声が、優花の後ろから聞こえてきました。
 優花は振り返ります。
 そこには、白い着物に浅葱色あさぎいろの袴をはいた青年がいました。

「だれ、ですか?」
「あぁ、失礼いたしました。名乗るなら、まずは自分からですよね」

 青年はコホンッと咳払いをすると、胸に手を当てました。

「はじめまして。僕の名前は夕月ゆづきと申します。夕方の月、とかいて夕月。この黄昏神社たそがれじんじゃの……宮司ぐうじをさせていただいております」
「ぐうじ?」

 聞き慣れない言葉に、優花がきょとんとした顔をすると、夕月は苦笑しました。

「わかりやすく言うと、管理人のようなものです。
 お嬢さんのお名前を、聞いても良いですか?」

「……ゆうか、です。字は、ママが『やさしいお花』て、言ってました」
「『優しい花』で、優花さん。とても良いお名前ですね」

 優花はコクリと、頷きます。

「さて、優花さんはどんな悩みがあって、ここにいらっしゃったのですか?」
「え?」

 夕月は「おや?」と小首を傾げます。
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