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第六章 奴隷オークション
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* * *
夜那はエルマーと、激しくぶつかり合っていた。
「チビ。おまえ、一対一の戦いは苦手だろ?」
「戦いに、得意不得意もないでしょ。勝負において必要なのは、結果だけだ」
「へっ。<紫金の魔剣士>様は、言うことが違うな!」
エルマーの剣が、赤く光り出す。変化に気づいた夜那は距離を取ろうとするが、エルマーが振り切るほうが早かった。
「バーニングソード!」
火の魔晶石による炎の斬撃が、夜那を襲う。
夜那の視界が赤く染まるが、夜那は紫闇を横薙ぎにして炎を払う。しかし、次の瞬間、エルマーの蹴りが夜那の身体を捉えた。
「ぐっ!」
受け身が取れず、勢いよく、夜那は吹き飛ぶ。
「夜那!」
夜那が壁に激突するまえに、リチャードが滑り込み、夜那にかかる衝撃を緩和させた。
「いっつぅ」
リチャードがぶつかった反動で、近くに飾ってあった大きな壷が落ち、派手な音を立てて割れる。
「夜那! 王子!」
夜斗が二人に近づこうとするも、エルマーの部下たちが道を塞ぐ。
夜斗はバスターソードの魔晶石を水から、風に素早く嵌め変える。
「邪魔なんだよ! 吹き飛べ。旋空刃!」
夜斗は風の効力を得た回転斬りで、周囲の敵を蹴散らす。
一方、リチャードに抱え込まれた夜那は、彼を見上げながらこぼした。
「あなた、バカじゃないの? 私の体質のこと、知ってるくせに」
「うる、せぇな。咄嗟だよ。あぶねっ!」
リチャードは夜那を右側に投げ飛ばし、自身は左側に転がって、エルマーの追撃を避けた。
リチャードは壁際に追い込まれ、舌打ちをこぼした。
「正義感にあふれた心。王子様らしいじゃねぇか。だが、それだと早死にするぜ? 兄王子様たちのようにな」
「っ!? てめぇ」
リチャードの瞳が、怒りで燃える。そんなリチャードの態度に、エルマーは不敵に笑う。
彼らの様子を伺いながら、夜那は冷静に分析していた。
(私がエルマーを斬るのと、エルマーがリチャードを斬るのは、距離的に後者の方が早い。だからといって、紫闇で斬撃を飛ばしたら、うっかりリチャードの首も刎ねそうだし)
その時、夜那の視界に、キラキラと橙色に光る球体が写り込んだ。土の小精霊ティエラだ。
(ティエラ? そうか。ロイが、精霊拒絶導具を破壊したのか)
ティエラは、ふよふよと夜那の前にやってくる。
『手伝う? <魔に魅入られし者>』
夜那はエルマーたちに聞こえないよう、小声でティエラに話しかけた。
「お願いするよ。奥の青年に、力を貸してあげて。でも、あの男を殺さないように、威力は抑えてね」
『わかった』
ティエラがリチャードのそばに飛んでいく。
夜那は魔法を放つため、左手をエルマーに向ける。
たいして、小精霊の姿が見えていないエルマーは、ティエラに反応することなく、リチャードを片づけようと、クレイモアを振り上げる。
リチャードは防ぎきれないと思いながらも、二本のショートソードを交差させた。
「王子っ!」
夜斗が焦ったように声を上げる。
夜那はエルマーと、激しくぶつかり合っていた。
「チビ。おまえ、一対一の戦いは苦手だろ?」
「戦いに、得意不得意もないでしょ。勝負において必要なのは、結果だけだ」
「へっ。<紫金の魔剣士>様は、言うことが違うな!」
エルマーの剣が、赤く光り出す。変化に気づいた夜那は距離を取ろうとするが、エルマーが振り切るほうが早かった。
「バーニングソード!」
火の魔晶石による炎の斬撃が、夜那を襲う。
夜那の視界が赤く染まるが、夜那は紫闇を横薙ぎにして炎を払う。しかし、次の瞬間、エルマーの蹴りが夜那の身体を捉えた。
「ぐっ!」
受け身が取れず、勢いよく、夜那は吹き飛ぶ。
「夜那!」
夜那が壁に激突するまえに、リチャードが滑り込み、夜那にかかる衝撃を緩和させた。
「いっつぅ」
リチャードがぶつかった反動で、近くに飾ってあった大きな壷が落ち、派手な音を立てて割れる。
「夜那! 王子!」
夜斗が二人に近づこうとするも、エルマーの部下たちが道を塞ぐ。
夜斗はバスターソードの魔晶石を水から、風に素早く嵌め変える。
「邪魔なんだよ! 吹き飛べ。旋空刃!」
夜斗は風の効力を得た回転斬りで、周囲の敵を蹴散らす。
一方、リチャードに抱え込まれた夜那は、彼を見上げながらこぼした。
「あなた、バカじゃないの? 私の体質のこと、知ってるくせに」
「うる、せぇな。咄嗟だよ。あぶねっ!」
リチャードは夜那を右側に投げ飛ばし、自身は左側に転がって、エルマーの追撃を避けた。
リチャードは壁際に追い込まれ、舌打ちをこぼした。
「正義感にあふれた心。王子様らしいじゃねぇか。だが、それだと早死にするぜ? 兄王子様たちのようにな」
「っ!? てめぇ」
リチャードの瞳が、怒りで燃える。そんなリチャードの態度に、エルマーは不敵に笑う。
彼らの様子を伺いながら、夜那は冷静に分析していた。
(私がエルマーを斬るのと、エルマーがリチャードを斬るのは、距離的に後者の方が早い。だからといって、紫闇で斬撃を飛ばしたら、うっかりリチャードの首も刎ねそうだし)
その時、夜那の視界に、キラキラと橙色に光る球体が写り込んだ。土の小精霊ティエラだ。
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ティエラは、ふよふよと夜那の前にやってくる。
『手伝う? <魔に魅入られし者>』
夜那はエルマーたちに聞こえないよう、小声でティエラに話しかけた。
「お願いするよ。奥の青年に、力を貸してあげて。でも、あの男を殺さないように、威力は抑えてね」
『わかった』
ティエラがリチャードのそばに飛んでいく。
夜那は魔法を放つため、左手をエルマーに向ける。
たいして、小精霊の姿が見えていないエルマーは、ティエラに反応することなく、リチャードを片づけようと、クレイモアを振り上げる。
リチャードは防ぎきれないと思いながらも、二本のショートソードを交差させた。
「王子っ!」
夜斗が焦ったように声を上げる。
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