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電話ボックス

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   それからというもの、美代は部活が早上がりの時は決まって、公園の願いを叶えてくれる電話ボックスに寄り、愛華がケガを負うように願った。

(ちょっと、体がだるいかも……。でも、頑張らないと。みんながサポートしてくれてるんだし、これくらいで根をあげちゃダメだよね)
「どうして!? あたしだってみんなの仲間でしょ!? なんであたしをものにしようとするのよ!!」

    美代がそう思いながら体育館に入ると、耳をつんざくような高く鋭い怒りの声が聞こえた。

「でもそのケガじゃ、仕事できないだろ」
「だったら見学くらいさせてよ!」
「はぁ? 見学ってなんのために?    マジで帰ってくれ」
「勝也!!」

 声の正体は愛華で、勝也と言い争いをしていた。だが、無理やり話を終わらせた勝也が愛華から距離を取った。そこで、美代の存在に気がつく。

「あ、山路ちゃん。今日もよろしく」
「は、はい!   あの、愛華先輩。ケガのほうは」

   美代が愛華に声をかけると、憎悪に満ちた目で睨みつけられた。

「全部、全部あんたのせいよ!」
「え?」
「おい、星宮」

 勝也が止めようと声を出すが、愛華はそれを無視してケガした足を引きずって、美代に詰め寄る。

「あんたが誰かにあたしを襲わせてるんでしょ!? じゃなきゃこんな頻繁ひんぱんにケガをするはずないもの!!」
「わ、私、そんなこと誰にも頼んでません! それになんで私がそんなことを」
「あんたも勝也狙いだからよ! 勝也と仲がいいあたしが邪魔なんでしょ!?」
「いい加減にしろ!!」

 勝也が美代を庇うように、愛華と美代の間に入る。

「勝也、その女は勝也狙いなんだよ!    勝也に近づきたくて、マネージャーになった最低女なんだから!」
「たとえそうだとしても、山路ちゃんはおまえより、よっぽど真面目に仕事をしてくれてる。バスケの勉強だってしてくれる。あからさまにびを売ってくるおまえより、俺は山路ちゃんのほうが好きだ」

 勝也の告白に美代と愛華は、驚愕きょうがくで目を見開く。

「こんなことで、いつまでも時間を取られる気はねぇ。とっとと帰れ! おい、誰か星宮を連れ出してくれ!」
「はーい」

    勝也の言葉に、練習着に着替えた部活メンバーが愛華を連れ出す。

「ちょっと、離しなさいよ! 勝也ー!!」

 愛華の騒ぎ声が、だんだん遠ざかって行く。
 美代はゆっくりと、勝也を見上げた。勝也は顔を赤くして、目線をそらしながら、頬をポリポリとかいていた。

「と、とりあえず、練習しなきゃな」
「そ、そうですよね。すぐに準備してきます!」
「山路ちゃん!」

 美代が部室に向かおうとすると、勝也が呼び止めた。

「今日、一緒に帰ろう。そのときにまた、俺の気持ち、聞いてほしい」
「は、はい」

 真剣な勝也の瞳に、美代は頷いた。
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