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四ノ巻 剣術指南はお任せを 虎之介
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いつものように、紅丸と白菊と月夜を見送ったお蘭は、帳簿をつけ、その後は薬草の調合を始めた。実はお蘭には医術の心得があり、その薬はよく効くことで有名でもある。なので『化け猫亭』には、その薬を目当てに来る客もいるほど。
薬研を使って、漢方の薬種を細かい粉状にしていく。ごりごりと削る音が響く中、店の戸が開けられた。
「いらっしゃ……おや。虎之介じゃあないか」
「帰ったにゃ」
戸を閉めて上がってきたのは、商人の用心棒として長いこと店を空けていた、きじとら猫の虎之介だった。
虎之介は腰に、人間の刀の大きさで言うと短刀くらいの長さの刀を差している。彼は立派な剣士である。荷物を横に置いて、どかりと座り込んだ。
「ちょっと待ってておくれ。この調合だけ、終わらせちまうからね」
「にゃあ。ゆっくりでいいにゃ」
虎之介は気を使ってそう言うが、お蘭は手早く、だが正確に調合を終えて、道具をしまう。そして虎之介と向き合う。
「長い間、ご苦労だったね」
「たいしかことないにゃ。これが、報酬金にゃ」
虎之介は荷物の中から巾着を取りだし、両手で持ってお蘭に差し出す。手に乗せられたずしりとした重さに、お蘭は目を瞬いた。
「想定額よりも、多いみたいだけど?」
「箱根から戻ってくるついでに、別のやつの用心棒を引き受けてやったんだにゃ」
薬研を使って、漢方の薬種を細かい粉状にしていく。ごりごりと削る音が響く中、店の戸が開けられた。
「いらっしゃ……おや。虎之介じゃあないか」
「帰ったにゃ」
戸を閉めて上がってきたのは、商人の用心棒として長いこと店を空けていた、きじとら猫の虎之介だった。
虎之介は腰に、人間の刀の大きさで言うと短刀くらいの長さの刀を差している。彼は立派な剣士である。荷物を横に置いて、どかりと座り込んだ。
「ちょっと待ってておくれ。この調合だけ、終わらせちまうからね」
「にゃあ。ゆっくりでいいにゃ」
虎之介は気を使ってそう言うが、お蘭は手早く、だが正確に調合を終えて、道具をしまう。そして虎之介と向き合う。
「長い間、ご苦労だったね」
「たいしかことないにゃ。これが、報酬金にゃ」
虎之介は荷物の中から巾着を取りだし、両手で持ってお蘭に差し出す。手に乗せられたずしりとした重さに、お蘭は目を瞬いた。
「想定額よりも、多いみたいだけど?」
「箱根から戻ってくるついでに、別のやつの用心棒を引き受けてやったんだにゃ」
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