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第12環「業火のルゼリア」
⑫-9 白銀の乙女、還る①
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「うちの息子たちに何してくれてるの? 汚い手で触らないで」
「レン!」
「その名で呼ばれるのも、随分と懐かしいねー」
レンと呼ばれた女性は槍を手に持ち、二人の前に舞い降りた。
「ヴァルクは老けたし、コルネリアも……」
「老けたって言わないでくださいよ! レンお母さん……」
初老のコルネリアが赤面させると、ルクヴァは大笑いした。
「レン、本当にレンなんだな!」
「今そういうのは後! こいつをなんとかするよ!」
身震いしているアドニス相対対するレン、そしてルクヴァとコルネリア。アドニスは状況が理解できていない様子で、余裕のない焦りを見せていた。
「何故、貴様がここに……。お前は、地球で……」
「そうだね。お前に一撃与えたものね」
「ああそうだ。お前の一撃によって、私は地球とのリンクが解かれてしまった。だからこそ、レスティン・フェレスで力を蓄え、守護竜を討ち果たす力を得たんだ!」
「ああ、そうかい。それを聞いて安心したよ。無事に地球はお前の支配から逃れられたんだ」
レンは槍を構えた。槍は鋭く、全てを貫き通すであろう。
「だが、あの時でお前は死んだはず。記憶も上書きされ、元には戻れぬはず。それに、どうやってルゼリアへ……」
「はあ? お前が連れて来たんじゃん」
「連れて来ただと……? ……まさか、ティトーだとでもいうのか⁉」
「はっは。まさにその通りさ!」
レンは腰に手を当てると、偉そうにアドニスに向かった。
「ボクはレン。レン・ケーニヒスベルクにして、ティトー! お前の眼は節穴だったってわけさ! アドニスの皮を被った黒龍め!」
「どうやって、どうやって……」
「そんな事、お前の知ることじゃないね!」
レンは一瞬で間合いを詰めると、アドニスを槍さばきで圧倒していく。アドニスはそのまま後退し、空へ飛んだ。レンはすぐさま空へ飛び、アドニスよりもさらに跳躍した。
「お前じゃ、今のボクには勝てないよ」
「クソ……‼」
「ほら、そこ!」
レンの振りかぶった槍の一撃を受け、アドニスの槍が吹き飛んだ。アドニスは地面へ落下し、膝をついた。
「くっ……」
「ここまでだ、黒龍。いい加減、本体でおいでよ。……アドニスを返せ」
「くそ……。仕方ない、こんな体、もう用済みだ!」
アドニスの身体から黒煙が立ちのぼり、一気に放出された。
「う……」
「アドニス、大丈夫か?」
「アドニスは乗っ取られていたのか!」
「そうだよ。しばらくは動けないかもしれない。匿ってあげて」
「わかった」
「ふふふ。この姿で先に会うとは思わなかったよ、お父さん」
「レン……。じゃあ、やっぱりティトーは」
レンは微笑んだ。昔のように、地球に居た時のように万遍の笑みで。
「まさかヴァルクの娘に生まれ変わるとはね。その上、育ての親はコルネリアだ」
「レンお母さん……」
「お母さんは変でしょう。もう娘なんだから、さ!」
レンは槍を手の中に収納すると、二人の肩を掴み、頬へ抱き寄せた。
「苦労掛けたね」
「レン……」
「無事に、レスティン・フェレスにたどり着いたんだね」
「ああ。俺たちは地球から飛び立った戦艦に乗っていた。レスティン・フェレスへ到着してから、セシュールのラダ族とタウ族に世話になって、寿命を迎えて死んだんだ」
「寿命って、そんなに早く着いたの?」
「まさか。守護竜さまの加護を受けて、長生きしてたのです」
守護竜。その名を聞いたレンが止まってしまう。
「守護竜さまたちも、加護によって延命していましたが、この星にたどり着いた時で寿命を迎えました。皆生まれ変わっているんです」
コルネリアの言葉に、レンは俯いたままだ。
「うん、そうだね。皆生まれ変わったね」
「レン? ……アルブレヒトには、会ったのか?」
「会ったよ。この姿ではまだだけど」
その言葉を聞き、ルクヴァは信じられないと顔を歪めた。
「何故、俺たちの所に来た!」
「え? だってそれは、ピンチだったからで……」
「どうして、アルブレヒトの傍にいってやらない!」
「……気配でわかってるでしょ」
「レン……!」
レンは素っ気ない態度だ。その様子に、コルネリアが言葉をかける。
「レンは、ティトーは王城にいたんじゃないのか?」
「うん、王城に居たよ」
「クラウス陛下は……⁉」
「無事だよ。ミリティア派も止めてきたけれど」
「何だって⁉」
レンはルクヴァに振り返りながら、神妙な面持ちで答えた。
「ルクヴァにはきつい話かもしれない。いや、コルネリアにとってもね」
「どうしたんだ。無事なんじゃないのか⁉」
「無事ではあるけれど……。とにかく、王城へ行こう。早くしないと黒龍がやってくる……」
「あ、ああ。おい!」
レンに連れられる形で、二人は王城を目指した。
「レン!」
「その名で呼ばれるのも、随分と懐かしいねー」
レンと呼ばれた女性は槍を手に持ち、二人の前に舞い降りた。
「ヴァルクは老けたし、コルネリアも……」
「老けたって言わないでくださいよ! レンお母さん……」
初老のコルネリアが赤面させると、ルクヴァは大笑いした。
「レン、本当にレンなんだな!」
「今そういうのは後! こいつをなんとかするよ!」
身震いしているアドニス相対対するレン、そしてルクヴァとコルネリア。アドニスは状況が理解できていない様子で、余裕のない焦りを見せていた。
「何故、貴様がここに……。お前は、地球で……」
「そうだね。お前に一撃与えたものね」
「ああそうだ。お前の一撃によって、私は地球とのリンクが解かれてしまった。だからこそ、レスティン・フェレスで力を蓄え、守護竜を討ち果たす力を得たんだ!」
「ああ、そうかい。それを聞いて安心したよ。無事に地球はお前の支配から逃れられたんだ」
レンは槍を構えた。槍は鋭く、全てを貫き通すであろう。
「だが、あの時でお前は死んだはず。記憶も上書きされ、元には戻れぬはず。それに、どうやってルゼリアへ……」
「はあ? お前が連れて来たんじゃん」
「連れて来ただと……? ……まさか、ティトーだとでもいうのか⁉」
「はっは。まさにその通りさ!」
レンは腰に手を当てると、偉そうにアドニスに向かった。
「ボクはレン。レン・ケーニヒスベルクにして、ティトー! お前の眼は節穴だったってわけさ! アドニスの皮を被った黒龍め!」
「どうやって、どうやって……」
「そんな事、お前の知ることじゃないね!」
レンは一瞬で間合いを詰めると、アドニスを槍さばきで圧倒していく。アドニスはそのまま後退し、空へ飛んだ。レンはすぐさま空へ飛び、アドニスよりもさらに跳躍した。
「お前じゃ、今のボクには勝てないよ」
「クソ……‼」
「ほら、そこ!」
レンの振りかぶった槍の一撃を受け、アドニスの槍が吹き飛んだ。アドニスは地面へ落下し、膝をついた。
「くっ……」
「ここまでだ、黒龍。いい加減、本体でおいでよ。……アドニスを返せ」
「くそ……。仕方ない、こんな体、もう用済みだ!」
アドニスの身体から黒煙が立ちのぼり、一気に放出された。
「う……」
「アドニス、大丈夫か?」
「アドニスは乗っ取られていたのか!」
「そうだよ。しばらくは動けないかもしれない。匿ってあげて」
「わかった」
「ふふふ。この姿で先に会うとは思わなかったよ、お父さん」
「レン……。じゃあ、やっぱりティトーは」
レンは微笑んだ。昔のように、地球に居た時のように万遍の笑みで。
「まさかヴァルクの娘に生まれ変わるとはね。その上、育ての親はコルネリアだ」
「レンお母さん……」
「お母さんは変でしょう。もう娘なんだから、さ!」
レンは槍を手の中に収納すると、二人の肩を掴み、頬へ抱き寄せた。
「苦労掛けたね」
「レン……」
「無事に、レスティン・フェレスにたどり着いたんだね」
「ああ。俺たちは地球から飛び立った戦艦に乗っていた。レスティン・フェレスへ到着してから、セシュールのラダ族とタウ族に世話になって、寿命を迎えて死んだんだ」
「寿命って、そんなに早く着いたの?」
「まさか。守護竜さまの加護を受けて、長生きしてたのです」
守護竜。その名を聞いたレンが止まってしまう。
「守護竜さまたちも、加護によって延命していましたが、この星にたどり着いた時で寿命を迎えました。皆生まれ変わっているんです」
コルネリアの言葉に、レンは俯いたままだ。
「うん、そうだね。皆生まれ変わったね」
「レン? ……アルブレヒトには、会ったのか?」
「会ったよ。この姿ではまだだけど」
その言葉を聞き、ルクヴァは信じられないと顔を歪めた。
「何故、俺たちの所に来た!」
「え? だってそれは、ピンチだったからで……」
「どうして、アルブレヒトの傍にいってやらない!」
「……気配でわかってるでしょ」
「レン……!」
レンは素っ気ない態度だ。その様子に、コルネリアが言葉をかける。
「レンは、ティトーは王城にいたんじゃないのか?」
「うん、王城に居たよ」
「クラウス陛下は……⁉」
「無事だよ。ミリティア派も止めてきたけれど」
「何だって⁉」
レンはルクヴァに振り返りながら、神妙な面持ちで答えた。
「ルクヴァにはきつい話かもしれない。いや、コルネリアにとってもね」
「どうしたんだ。無事なんじゃないのか⁉」
「無事ではあるけれど……。とにかく、王城へ行こう。早くしないと黒龍がやってくる……」
「あ、ああ。おい!」
レンに連れられる形で、二人は王城を目指した。
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