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暁の草原 番外編1
〇番外編1-5 アンセム国の王子①
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「ごめんなさい。すぐに行きますので」
マリアは礼儀を教わっていないため、ぎこちない挨拶をすると、いそいそと会場へ戻ろうとドレスの裾を掴んだ。
「いや、俺も一息付きに来たんだ。無理に戻らなくても……」
アルブレヒトは手を差し伸べたものの、マリアはその意味が分からなかった。考えた挙句、マリアはマーシャのご機嫌を取るために持っていた金平糖の包みを取り出すと、その手に乗せた。
「これは?」
「金平糖という砂糖菓子です。ご存じありませんでしょうか」
「初めて食べる。もらっていいのかな」
「甘くておいしいですよ」
アルブレヒトは包みをほどくと、そのカラフルな金平糖を手に取った。
「星の形をしているんだね」
「そういえば、そうかもしれません。考えたことがありませんでした」
アルブレヒトは黄色い金平糖を手に取ると口へ放り込んだ。カリコリという音とともに、笑みが溢れる。
「へえ、甘いんだ」
「それは、砂糖菓子ですから……」
「それもそうか。俺、甘いもの好きなんだ」
「あ。毒見もせずに、いいんですか!」
マリアはとんでもない事をしてしまったと青ざめるものの、アルブレヒトは笑いながら包みを大切そうに胸ポケットへしまい込んだ。
「そうだったね。これは大丈夫だと思ったから、いいよ」
「いえ、そういうわけには。すみませんがお返し願えますか。怒られてしまいます」
マリアがカタカタと震えだしたため、アルブレヒトは慌てて胸ポケットから包みを取り出した。
「そんなに怯えないでくれ。大丈夫だから」
マリアの手に金平糖の包みを置くとき、アルブレヒトはマリアの手に触れた。慌ててマリアが首を垂れると、すぐにアルブレヒトが上着をマリアの肩へかけた。
「え?」
「こんなに手が冷たいじゃないか。ヴァジュトールは南国の島とはいえ、今は12月だ。大丈夫か」
「いえ、あの。大丈夫です。慣れてますから……」
その時、バルコニーの扉が開くと、ヴァジュトール王と王妃が現れた。後ろには幼い少年が煌びやかな服をまとい、覗き込んでいる。
「おや、逢引の最中。邪魔をしましたかな」
「私は違います! ごめんなさい、それでは」
マリアはアルブレヒトの上着を肩にかけたまま、会場へ戻っていった。その光景を、王と王妃が慌てて弁解する。
「これは失敬した。興味なさそうだったので、うちの一番下の王子を紹介しようとしたんだ」
そういうと、王妃と幼い王子は一礼し、パーティ会場へ戻っていった。何人かの兵士を除き、バルコニーはアルブレヒト王子と王だけとなった。
「いえ、寒そうだったので上着を貸してあげていただけです」
「まあ、お優しいのですね」
「あの令嬢はどこの?」
王はその反応に興味としたたかな思いを秘め、アルブレヒトへ対峙した。それでも表情は柔らかく、心配しているような表情だ。
「ああ、マルティーニ家の長女じゃな。赤毛のマリア嬢は有名なんじゃ。綺麗じゃろ」
「ええ、そうですね。マルティーニ家ですか」
「……商売の仕事でしたかな?」
「いえ、そのような話もしておりませんよ。金平糖という菓子の話をしました。大変美味な菓子ですね」
「ああ。我が国の名産品じゃ。気に入ってくださったとは」
「それから、お伺いしたいことがあるのですが」
マリアは礼儀を教わっていないため、ぎこちない挨拶をすると、いそいそと会場へ戻ろうとドレスの裾を掴んだ。
「いや、俺も一息付きに来たんだ。無理に戻らなくても……」
アルブレヒトは手を差し伸べたものの、マリアはその意味が分からなかった。考えた挙句、マリアはマーシャのご機嫌を取るために持っていた金平糖の包みを取り出すと、その手に乗せた。
「これは?」
「金平糖という砂糖菓子です。ご存じありませんでしょうか」
「初めて食べる。もらっていいのかな」
「甘くておいしいですよ」
アルブレヒトは包みをほどくと、そのカラフルな金平糖を手に取った。
「星の形をしているんだね」
「そういえば、そうかもしれません。考えたことがありませんでした」
アルブレヒトは黄色い金平糖を手に取ると口へ放り込んだ。カリコリという音とともに、笑みが溢れる。
「へえ、甘いんだ」
「それは、砂糖菓子ですから……」
「それもそうか。俺、甘いもの好きなんだ」
「あ。毒見もせずに、いいんですか!」
マリアはとんでもない事をしてしまったと青ざめるものの、アルブレヒトは笑いながら包みを大切そうに胸ポケットへしまい込んだ。
「そうだったね。これは大丈夫だと思ったから、いいよ」
「いえ、そういうわけには。すみませんがお返し願えますか。怒られてしまいます」
マリアがカタカタと震えだしたため、アルブレヒトは慌てて胸ポケットから包みを取り出した。
「そんなに怯えないでくれ。大丈夫だから」
マリアの手に金平糖の包みを置くとき、アルブレヒトはマリアの手に触れた。慌ててマリアが首を垂れると、すぐにアルブレヒトが上着をマリアの肩へかけた。
「え?」
「こんなに手が冷たいじゃないか。ヴァジュトールは南国の島とはいえ、今は12月だ。大丈夫か」
「いえ、あの。大丈夫です。慣れてますから……」
その時、バルコニーの扉が開くと、ヴァジュトール王と王妃が現れた。後ろには幼い少年が煌びやかな服をまとい、覗き込んでいる。
「おや、逢引の最中。邪魔をしましたかな」
「私は違います! ごめんなさい、それでは」
マリアはアルブレヒトの上着を肩にかけたまま、会場へ戻っていった。その光景を、王と王妃が慌てて弁解する。
「これは失敬した。興味なさそうだったので、うちの一番下の王子を紹介しようとしたんだ」
そういうと、王妃と幼い王子は一礼し、パーティ会場へ戻っていった。何人かの兵士を除き、バルコニーはアルブレヒト王子と王だけとなった。
「いえ、寒そうだったので上着を貸してあげていただけです」
「まあ、お優しいのですね」
「あの令嬢はどこの?」
王はその反応に興味としたたかな思いを秘め、アルブレヒトへ対峙した。それでも表情は柔らかく、心配しているような表情だ。
「ああ、マルティーニ家の長女じゃな。赤毛のマリア嬢は有名なんじゃ。綺麗じゃろ」
「ええ、そうですね。マルティーニ家ですか」
「……商売の仕事でしたかな?」
「いえ、そのような話もしておりませんよ。金平糖という菓子の話をしました。大変美味な菓子ですね」
「ああ。我が国の名産品じゃ。気に入ってくださったとは」
「それから、お伺いしたいことがあるのですが」
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