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第五環「黄昏は、ハープを奏でて」
⑤-10 聖女アレクサンドラ②
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聖女はゆっくりと信者たちの身姿を確認すると、最後に最前列のアルブレヒトたちを見つめた。信者は首を垂れていたが、アルブレヒトは下げなかった。そして、目線が重なった。
「本日は、ようこそおいで下さいました。それでは、本日は経典の一部を読ませていただきます」
聖女サーシャは静かに聖書を胸に当てながら、ゆっくりとした語り口で信者へ話しかけた。
「晴天の世、愚かな刃が降り注ぎ、聖女へ歯向かう」
読み出しは、経典の最終章・聖女の死と女神としての復活の章だ。あまり信徒向けには語られない項目に、司祭たちは顔を見合わせている。
「聖女は自らの体に毒を注ぎ、そして地に伏せてしまった」
ティトーはハラハラとしながら、胸を抑えている。他の信徒も同じように祈りながら、胸を抑えるような仕草をしている。女神の痛みを感じ取っているのだろう。
「やがて、聖女は眩い光に包まれ、大地を浄化すると、エーディエグレスを登って天へ召され、女神として降臨した」
ステンドグラスから、再び光が差し込み、聖女ではなくアルブレヒトたちの方へ光が囁かれた。
聖女サーシャはティトーを見つめながら、ゆっくりを歩み寄って来る。
「女神は、あなたの様な少女に生まれ変わり、そして女神として人々を守り長い時を生き大人の姿となり、新たな聖女の前へ現れました。女神は今も尚、人々の為に生き続けているのです」
司祭たちは演出として受け取ってはいたが、サーシャはアルブレヒトを見つめながら、最後の言葉を連ねる。
「そして、守護竜の大地は再び祝福を受け、守護竜の不在を祈りの力で守り抜いて往くのです」
人々が拍手や涙を流した所で、聖女は人々と直接手を繋ぎながら話をするようだった。気付けば帰路に立つ信徒はおらず、皆が聖女の列へ並んでいる。
「俺たちは最後でいいな、アル」
「混み入った話だからな」
アルブレヒト一行は今度こそ最後尾へ並ぶと、その順番を守っていたが、ティトーは落ち着きがなく、キョロキョロと教会内を見つめていた。
◇
「次の方々です」
「………………」
「聖女・サーシャ?」
聖女サーシャは、信徒が扉を出るまで見送ると、扉が閉まるまでを見守った。そして改めて一行へ向かった。
「驚きましたよ」
「俺もだ、サーシャ」
「こほん! アレクサンドラ、様です」
「失敬」
アルブレヒトの様子に、ティトーは無邪気に笑うと、コホンを真似して見せた。その姿にサーシャは微笑むと、年相応な表情を浮かべた。聖女はまだ選定の年の15歳を迎えたばかりの16歳だ。
「そうですね。混み入った話もしたいですし、故郷の思い出も語りたいのですが、彼らと奥へ下がっても良いでしょうか」
「アレクサンドラ様がよければ、我々は何も言えません」
「そう。じゃあそうしましょう。どうぞ、こちらへ」
聖女は一行を私室へ案内すると、人払いをした。
「さて。防音の結界はさすがに張れないですが、誰も聞いてはおりません」
サーシャは後ろ向きでケープを脱ぎ去ると、振り返った。金髪に青い目の美しい美少女は短めのカールした癖毛を震わせると、万遍の笑みを浮かべた。
「アルブレヒト兄さま、よくご無事で」
「本日は、ようこそおいで下さいました。それでは、本日は経典の一部を読ませていただきます」
聖女サーシャは静かに聖書を胸に当てながら、ゆっくりとした語り口で信者へ話しかけた。
「晴天の世、愚かな刃が降り注ぎ、聖女へ歯向かう」
読み出しは、経典の最終章・聖女の死と女神としての復活の章だ。あまり信徒向けには語られない項目に、司祭たちは顔を見合わせている。
「聖女は自らの体に毒を注ぎ、そして地に伏せてしまった」
ティトーはハラハラとしながら、胸を抑えている。他の信徒も同じように祈りながら、胸を抑えるような仕草をしている。女神の痛みを感じ取っているのだろう。
「やがて、聖女は眩い光に包まれ、大地を浄化すると、エーディエグレスを登って天へ召され、女神として降臨した」
ステンドグラスから、再び光が差し込み、聖女ではなくアルブレヒトたちの方へ光が囁かれた。
聖女サーシャはティトーを見つめながら、ゆっくりを歩み寄って来る。
「女神は、あなたの様な少女に生まれ変わり、そして女神として人々を守り長い時を生き大人の姿となり、新たな聖女の前へ現れました。女神は今も尚、人々の為に生き続けているのです」
司祭たちは演出として受け取ってはいたが、サーシャはアルブレヒトを見つめながら、最後の言葉を連ねる。
「そして、守護竜の大地は再び祝福を受け、守護竜の不在を祈りの力で守り抜いて往くのです」
人々が拍手や涙を流した所で、聖女は人々と直接手を繋ぎながら話をするようだった。気付けば帰路に立つ信徒はおらず、皆が聖女の列へ並んでいる。
「俺たちは最後でいいな、アル」
「混み入った話だからな」
アルブレヒト一行は今度こそ最後尾へ並ぶと、その順番を守っていたが、ティトーは落ち着きがなく、キョロキョロと教会内を見つめていた。
◇
「次の方々です」
「………………」
「聖女・サーシャ?」
聖女サーシャは、信徒が扉を出るまで見送ると、扉が閉まるまでを見守った。そして改めて一行へ向かった。
「驚きましたよ」
「俺もだ、サーシャ」
「こほん! アレクサンドラ、様です」
「失敬」
アルブレヒトの様子に、ティトーは無邪気に笑うと、コホンを真似して見せた。その姿にサーシャは微笑むと、年相応な表情を浮かべた。聖女はまだ選定の年の15歳を迎えたばかりの16歳だ。
「そうですね。混み入った話もしたいですし、故郷の思い出も語りたいのですが、彼らと奥へ下がっても良いでしょうか」
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「そう。じゃあそうしましょう。どうぞ、こちらへ」
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「さて。防音の結界はさすがに張れないですが、誰も聞いてはおりません」
サーシャは後ろ向きでケープを脱ぎ去ると、振り返った。金髪に青い目の美しい美少女は短めのカールした癖毛を震わせると、万遍の笑みを浮かべた。
「アルブレヒト兄さま、よくご無事で」
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