243 / 257
第15輪「緋色の目覚め」
⑮-5 君と闘うということ④
しおりを挟む
レンは軽やかに後方へ飛ぶと、すぐにアルベルトへ向かって駆け込んできた。その刹那でアルベルトまでの間合いを詰め、一気に畳み掛ける。アルベルトはぎりぎりを避けると、レンへ向かて魔法の炎の玉を突き出した。
レンはそれを避けることなく頭で受けると、そのままギリギリと音を鳴らしながら、アルベルトへ向かってくる。
「殺ス……」
「アルベルト、避けて!」
怯んだアルベルトが攻撃を受けようとした瞬間、ラウルが飛び出し、その一撃を喰らった。ラウルはけたたましい音を鳴らしながら、壁へ激突した。
空間を維持していた筈のアドニスまでもが、その衝撃で胸を掴む。
「グッ…………」
「アドニスさん!」
マリアはレンへ駆け出し、拳銃を向けるがレンが避けようとせずに向かってくるのを見て怯んでしまう。
「マリア!」
アルベルトが渾身の一撃を放ち、それはレンへ命中した。レンは腰から崩れ落ち、口から鮮血を散らした。
「が……。殺セ、皇子ヲ殺ス……」
レンは右手があらぬ方向へ曲がっていることなども物ともせず、再びアルベルト目掛けて突進してきた。アルベルトはそのレンの動きを止めるように、レンを掴むと必死で呼び掛けた。
「レン! 思い出してくれ、レン!」
「死ネ……殺サナケレバ……」
「レン‼」
レンは後方へ飛ぶと、その歪んだ空間の亀裂に気付いてしまう。
「いけない!」
アドニスの呼び声より早く、レンはその亀裂へ一撃を入れると、空間の外へ飛び出した。
「不味い! 外には人間が!」
ラウルの声に、アルベルトは跳躍すると、そのまま空間の外へ飛び出し、レンを追った。
「レン! 俺はここだ! 俺を殺すんだろう!」
アルベルトの叫びに、レンは応えるかのように軽やかに空へと戻ってきた。そして、ハルツ山脈の上空でアルベルトと再び対峙することになった。アルベルトはレンの攻撃を躱しつつ、レンを空間へと誘い込んだ。レンはアルベルトに誘われる形で、二人は再びアドニスの空間へと戻ってきた。
魔法を一瞬で唱えるアルベルトだったが、レンは簡単にそれを躱してしまう。
「コアを狙ってください!!」
アドニスの言葉に、アルベルトが歯を食いしばる。
「コアをぶち抜くしかありません! 我々もサポートします!」
「手を出すな!」
アルベルトはアドニスを止めると、そのままレンへ向かった。レンは虚ろいだ瞳でアルベルトを見据えたまま、突進してくる。
「レン……。知っているか」
アルベルトはレンの攻撃を躱しながら、その愛しい首元に触れた。一瞬でレンを抱き寄せると、アルベルトは額に拳銃を突き付けた。
その表情は泣いているようで、笑っている。
拳銃に魔法陣が現れ、拳銃に魔力が込められていく。
引き金が引かれた。
ガツンという、冷たい音が響いた。
それは一瞬であった。レンの額からは血がしたたり落ち、内側にはビリビリと電撃が走っているのが見える。
アルベルトにとって、音はなかった。ただ、目の前の愛しい存在が動かなくなっていくのを、ただただ見ているだけだった。
レンはアルベルトを見つめたまま、その瞳が閉じられていく。
「レン‼」
レンはぐったりとその場に崩れ落ち、支えるアルベルトもまた、力なくその場に崩れ落ちていく。
「アルブレヒト様、意思をしっかり持ってください。暴走してはダメだ!」
ラウルの絶叫が響く。そうだ、これで終わりではないのだ。マリアは慌てて二人に駆け寄るが、アルベルトは涙を流したまま動かない。
「アルベルト……」
レンは、辛うじてまた動いていた。それでもコアは完璧に破壊されており、もう壊れていくだけなのがわかる。
「……ティニア。私よ、マリアよ……。わからない?」
マリアの言葉に、アルベルトから無数の涙が零れ落ちる。
「ティニア、わかるか? 俺だ、アルベルトだ!」
二人の呼びかけに、レンは何も答えない。虚ろな瞳のまま、短い呼吸を繰り返すだけだ。黒い靄が大きく聳え立ち、渦巻いていただけの雲から覗き込んでいた。
「皆、上を!」
マリアの叫び声に、ラウル、そしてアドニスだけでなくアルベルトも上空を見上げた。そこには黒龍と思しき存在がこちらを覗いている。黒龍もまた、空間を捻じ曲げて見ているようだった。
「お前が……黒龍…………」
アルベルトの言葉に、黒龍は微動だにしない。動かなくなったレンを見つめているだけだ。
「お前らのせいで、レンは……‼ レンは!」
ラウルの言葉に、黒龍は眼を閉じた。その瞬間、複数人の不気味な黒いローブを着た人間が何体も現れたのだ。
「お前ら、アンチ・ニミアゼルの……」
「なんだって⁉」
「間違いない、奴らだ! アンチ・ニミアゼルです! アルブレヒト様、逃げてください‼」
一斉にアルベルトへ銃口を向ける彼らの前に、マリアが立ちはだかる。アルベルトはレンを抱えている為、身動きが取れないのだ。
「させない!」
「マリア!」
すぐにアンチ・ニミアゼルの複数人が次々風によって押し倒され、叫び声をあげながら絶叫していく。そのまま、空間外へ突き飛ばされ、そのまま落下していく。
風魔法を唱えたのは、アドニスだった。
レンはそれを避けることなく頭で受けると、そのままギリギリと音を鳴らしながら、アルベルトへ向かってくる。
「殺ス……」
「アルベルト、避けて!」
怯んだアルベルトが攻撃を受けようとした瞬間、ラウルが飛び出し、その一撃を喰らった。ラウルはけたたましい音を鳴らしながら、壁へ激突した。
空間を維持していた筈のアドニスまでもが、その衝撃で胸を掴む。
「グッ…………」
「アドニスさん!」
マリアはレンへ駆け出し、拳銃を向けるがレンが避けようとせずに向かってくるのを見て怯んでしまう。
「マリア!」
アルベルトが渾身の一撃を放ち、それはレンへ命中した。レンは腰から崩れ落ち、口から鮮血を散らした。
「が……。殺セ、皇子ヲ殺ス……」
レンは右手があらぬ方向へ曲がっていることなども物ともせず、再びアルベルト目掛けて突進してきた。アルベルトはそのレンの動きを止めるように、レンを掴むと必死で呼び掛けた。
「レン! 思い出してくれ、レン!」
「死ネ……殺サナケレバ……」
「レン‼」
レンは後方へ飛ぶと、その歪んだ空間の亀裂に気付いてしまう。
「いけない!」
アドニスの呼び声より早く、レンはその亀裂へ一撃を入れると、空間の外へ飛び出した。
「不味い! 外には人間が!」
ラウルの声に、アルベルトは跳躍すると、そのまま空間の外へ飛び出し、レンを追った。
「レン! 俺はここだ! 俺を殺すんだろう!」
アルベルトの叫びに、レンは応えるかのように軽やかに空へと戻ってきた。そして、ハルツ山脈の上空でアルベルトと再び対峙することになった。アルベルトはレンの攻撃を躱しつつ、レンを空間へと誘い込んだ。レンはアルベルトに誘われる形で、二人は再びアドニスの空間へと戻ってきた。
魔法を一瞬で唱えるアルベルトだったが、レンは簡単にそれを躱してしまう。
「コアを狙ってください!!」
アドニスの言葉に、アルベルトが歯を食いしばる。
「コアをぶち抜くしかありません! 我々もサポートします!」
「手を出すな!」
アルベルトはアドニスを止めると、そのままレンへ向かった。レンは虚ろいだ瞳でアルベルトを見据えたまま、突進してくる。
「レン……。知っているか」
アルベルトはレンの攻撃を躱しながら、その愛しい首元に触れた。一瞬でレンを抱き寄せると、アルベルトは額に拳銃を突き付けた。
その表情は泣いているようで、笑っている。
拳銃に魔法陣が現れ、拳銃に魔力が込められていく。
引き金が引かれた。
ガツンという、冷たい音が響いた。
それは一瞬であった。レンの額からは血がしたたり落ち、内側にはビリビリと電撃が走っているのが見える。
アルベルトにとって、音はなかった。ただ、目の前の愛しい存在が動かなくなっていくのを、ただただ見ているだけだった。
レンはアルベルトを見つめたまま、その瞳が閉じられていく。
「レン‼」
レンはぐったりとその場に崩れ落ち、支えるアルベルトもまた、力なくその場に崩れ落ちていく。
「アルブレヒト様、意思をしっかり持ってください。暴走してはダメだ!」
ラウルの絶叫が響く。そうだ、これで終わりではないのだ。マリアは慌てて二人に駆け寄るが、アルベルトは涙を流したまま動かない。
「アルベルト……」
レンは、辛うじてまた動いていた。それでもコアは完璧に破壊されており、もう壊れていくだけなのがわかる。
「……ティニア。私よ、マリアよ……。わからない?」
マリアの言葉に、アルベルトから無数の涙が零れ落ちる。
「ティニア、わかるか? 俺だ、アルベルトだ!」
二人の呼びかけに、レンは何も答えない。虚ろな瞳のまま、短い呼吸を繰り返すだけだ。黒い靄が大きく聳え立ち、渦巻いていただけの雲から覗き込んでいた。
「皆、上を!」
マリアの叫び声に、ラウル、そしてアドニスだけでなくアルベルトも上空を見上げた。そこには黒龍と思しき存在がこちらを覗いている。黒龍もまた、空間を捻じ曲げて見ているようだった。
「お前が……黒龍…………」
アルベルトの言葉に、黒龍は微動だにしない。動かなくなったレンを見つめているだけだ。
「お前らのせいで、レンは……‼ レンは!」
ラウルの言葉に、黒龍は眼を閉じた。その瞬間、複数人の不気味な黒いローブを着た人間が何体も現れたのだ。
「お前ら、アンチ・ニミアゼルの……」
「なんだって⁉」
「間違いない、奴らだ! アンチ・ニミアゼルです! アルブレヒト様、逃げてください‼」
一斉にアルベルトへ銃口を向ける彼らの前に、マリアが立ちはだかる。アルベルトはレンを抱えている為、身動きが取れないのだ。
「させない!」
「マリア!」
すぐにアンチ・ニミアゼルの複数人が次々風によって押し倒され、叫び声をあげながら絶叫していく。そのまま、空間外へ突き飛ばされ、そのまま落下していく。
風魔法を唱えたのは、アドニスだった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【1/15公開終了予定】捨てられ聖女は契約結婚を満喫中。後悔してる?だから何?
miniko
恋愛
「孤児の癖に筆頭聖女を名乗るとは、何様のつもりだ? お前のような女は、王太子であるこの僕の婚約者として相応しくないっっ!」
私を罵った婚約者は、その腕に美しい女性を抱き寄せていた。
別に自分から筆頭聖女を名乗った事など無いのだけれど……。
夜会の最中に婚約破棄を宣言されてしまった私は、王命によって『好色侯爵』と呼ばれる男の元へ嫁ぐ事になってしまう。
しかし、夫となるはずの侯爵は、私に視線を向ける事さえせずに、こう宣った。
「王命だから仕方なく結婚するが、お前を愛する事は無い」
「気が合いますね。私も王命だから仕方無くここに来ました」
「……は?」
愛して欲しいなんて思っていなかった私は、これ幸いと自由な生活を謳歌する。
懐いてくれた可愛い義理の息子や使用人達と、毎日楽しく過ごしていると……おや?
『お前を愛する事は無い』と宣った旦那様が、仲間になりたそうにこちらを見ている!?
一方、私を捨てた元婚約者には、婚約破棄を後悔するような出来事が次々と襲い掛かっていた。
※完結しましたが、今後も番外編を不定期で更新予定です。
※ご都合主義な部分は、笑って許して頂けると有難いです。
※予告無く他者視点が入ります。主人公視点は一人称、他視点は三人称で書いています。読みにくかったら申し訳ありません。
※感想欄はネタバレ配慮をしていませんのでご注意下さい。
※コミカライズ、書籍化に伴い、1/15迄で公開を終了させて頂く予定です。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
【完結】婚約破棄したら『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』になりました
Mimi
ファンタジー
私エヴァンジェリンには、幼い頃に決められた婚約者がいる。
男女間の愛はなかったけれど、幼馴染みとしての情はあったのに。
卒業パーティーの2日前。
私を呼び出した婚約者の隣には
彼の『真実の愛のお相手』がいて、
私は彼からパートナーにはならない、と宣言された。
彼は私にサプライズをあげる、なんて言うけれど、それはきっと私を悪役令嬢にした婚約破棄ね。
わかりました!
いつまでも夢を見たい貴方に、昨今流行りのざまぁを
かまして見せましょう!
そして……その結果。
何故、私が事故物件に認定されてしまうの!
※本人の恋愛的心情があまり無いので、恋愛ではなくファンタジーカテにしております。
チートな能力などは出現しません。
他サイトにて公開中
どうぞよろしくお願い致します!
転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる