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第六輪「紫雲英、約束の果てに」
⑥-8 否定せず拒絶す④
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其の日、六月最初の週某日。赤毛の美女の絶叫がこだまするのは、永世中立国スイスのシャフハウゼンがシュタインアムラインの小さな診療所だ。
偶然目の前を通過していた貴婦人はこう語る。
「聞こえたんですよ、まさに大絶叫!」
別の新聞を抱える画家はこう語る。
「何か悪い診断でも受けたんじゃないかね。しかし、それにしても診療所から、まさかあんな大絶叫が聞こえるとはね。ちょっと芸術味を感じたよ」
長身の大男が現れたため、彼にも聞いてみると、肩を震わせて大笑いした。大絶叫にも劣らぬ大笑いだ。
「当たり前でしょ!! バカなのおおおお⁉ って聞こえたんですよ、あっちの路地からですよ! こりゃ、旧市街地全体に聞こえただろう!」
数日間も噂された、この大絶叫はシュタインアムラインにとって、語り草となるかはまたの機会に。
◆
「そんな理由ないでしょ? 嘘だよね? ティニア、どうしちゃったの? 弱くなってるの? 何かされたの? 手を出したの? 許さん、アルベルトまじ」
「お、落ち着いて。マリア……」
「落ち着いてるわよ~。ティニアちゃん、本当にどうしたの? 疲れてるの? もう少し入院しておく?」
そういうと、マリアは壁にティニアの落書きを張り出した。
「ちょ、やめて! それだけはやめてって貼り付けるのも止めて恥ずかしい!!」
ドタドタと足音が聞こえ、息を切らした白衣の丸眼鏡医師は、勢いよくドアを開けたのだが。
ドガァン!!
「先生、怒っていいのよ」
「せ、先生。怒ってもいいけど、痛くない? その、ホ、ほどほどに……」
「元気そうですね……あなた達は……ここをなんだと………」
レオンはワナワナと震えながら、涙を流しつつオデコに手を当てた。
「もう、退院して下さい。はやく」
「あ、はい」
「荷物持つわよ」
「あ、うん」
そそくさと荷物を持つと、壁を剥がしていくティニアだった。二人とも大笑いしながら診療所を後にしたのだった。その足取りもまた、軽やかに続いていく。
偶然目の前を通過していた貴婦人はこう語る。
「聞こえたんですよ、まさに大絶叫!」
別の新聞を抱える画家はこう語る。
「何か悪い診断でも受けたんじゃないかね。しかし、それにしても診療所から、まさかあんな大絶叫が聞こえるとはね。ちょっと芸術味を感じたよ」
長身の大男が現れたため、彼にも聞いてみると、肩を震わせて大笑いした。大絶叫にも劣らぬ大笑いだ。
「当たり前でしょ!! バカなのおおおお⁉ って聞こえたんですよ、あっちの路地からですよ! こりゃ、旧市街地全体に聞こえただろう!」
数日間も噂された、この大絶叫はシュタインアムラインにとって、語り草となるかはまたの機会に。
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「そんな理由ないでしょ? 嘘だよね? ティニア、どうしちゃったの? 弱くなってるの? 何かされたの? 手を出したの? 許さん、アルベルトまじ」
「お、落ち着いて。マリア……」
「落ち着いてるわよ~。ティニアちゃん、本当にどうしたの? 疲れてるの? もう少し入院しておく?」
そういうと、マリアは壁にティニアの落書きを張り出した。
「ちょ、やめて! それだけはやめてって貼り付けるのも止めて恥ずかしい!!」
ドタドタと足音が聞こえ、息を切らした白衣の丸眼鏡医師は、勢いよくドアを開けたのだが。
ドガァン!!
「先生、怒っていいのよ」
「せ、先生。怒ってもいいけど、痛くない? その、ホ、ほどほどに……」
「元気そうですね……あなた達は……ここをなんだと………」
レオンはワナワナと震えながら、涙を流しつつオデコに手を当てた。
「もう、退院して下さい。はやく」
「あ、はい」
「荷物持つわよ」
「あ、うん」
そそくさと荷物を持つと、壁を剥がしていくティニアだった。二人とも大笑いしながら診療所を後にしたのだった。その足取りもまた、軽やかに続いていく。
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