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第一輪「朱の福音はどんな音?」
①-14 君ありて日常が欠ける②
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「マリア、シャトー婦人、すみませんが子供たちを孤児院へ」
「わかったわ」
アドニスはそのままティニアの肩を抱き、教会の裏へ回ってしまった。子供たちも動揺している。
「ティニアおねえちゃん、どうしたの?」
「ちょっと、疲れたのよ。休んだら大丈夫よ」
すると、普段は周囲に来ない男の子たちが声を上げた。
「ティニア、最近ずっとこうだよ」
「おねえちゃんが病院で診てもらうべきだよ」
「おねえちゃんが倒れちゃうよ」
「ぶつりほうそく、こえられなくなっちゃったの?」
「ねえね、シャトーさん。ぶつりほうそくって、なあに?」
シャトー婦人の表情も硬い。子供たちの懐きぶりから、婦人が孤児院でも活動してくれている人物であると推察できる。だからこそ、婦人の表情からただ事ではないことが予測できてしまう。
◇◇◇
孤児院ではすぐに昼食の準備となり、子供たちは手を洗いにいったり、年少の子供たちを席に座らせたりと、慌ただしく動き始めた。
不安に駆られたマリアはその場に残った。子供たちが食事をする時間になると、連絡していたミュラー夫人が駆け付けてきた。
そのままマリアも子供たちの食事に付き添ったが、ティニアの姿はなく、アドニスの姿もない。
片づけがひと段落したところで、シャトー婦人がミュラー夫人とマリアを呼んだ。その表情は硬い。
「二人とも、助かったわ。ありがとう」
「構わないですよ。それより、ティニアはどうしたの?」
「……。マリアさん、一緒に暮らしているって聞いてるけど、ご自宅でティニアさんの様子はどう?」
「どうって、別に何も…………」
「正直に話すと、今までも時々そうなるときはあったの。でも、2月に入ってからは特にね。……彼女、時々動かなくなってしまうのよ」
「動かなくなる……?」
ミュラー夫人とマリアは同じ反応をしてしまった。ミュラー夫人は旦那と共に、ティニアも関係している財団と関係があった。自分よりもティニアのことを知って居そうな夫人でも、知らない事なのだろうか。
「なんていうか……。こう、表情が固まってしまって、眼の焦点が定まってないような感じでね」
「それは、さっきのような?」
「……そうなの。気を失っているわけでもないのだけど、会話が成り立たないというか。後から聞いても、誤魔化しちゃってね」
「え。そんな様子、全然無かった……」
マリアがショックを隠せないことに気付き、ミュラー夫人が優しく声をかける。
「ティニアの事だから、うまくやっていたんだと思う」
「心配なんだけど、それは別としてさ」
シャトー婦人は言いにくそうに、マリアとミュラー夫人の顔を交互に視た。
「2週間前から、変なひとが教会に来てるのよ」
「は?」
マリアもミュラー夫人も、隠すことなく不機嫌な表情を浮かべた。当然話そうとしているシャトー婦人もだ。
「わかったわ」
アドニスはそのままティニアの肩を抱き、教会の裏へ回ってしまった。子供たちも動揺している。
「ティニアおねえちゃん、どうしたの?」
「ちょっと、疲れたのよ。休んだら大丈夫よ」
すると、普段は周囲に来ない男の子たちが声を上げた。
「ティニア、最近ずっとこうだよ」
「おねえちゃんが病院で診てもらうべきだよ」
「おねえちゃんが倒れちゃうよ」
「ぶつりほうそく、こえられなくなっちゃったの?」
「ねえね、シャトーさん。ぶつりほうそくって、なあに?」
シャトー婦人の表情も硬い。子供たちの懐きぶりから、婦人が孤児院でも活動してくれている人物であると推察できる。だからこそ、婦人の表情からただ事ではないことが予測できてしまう。
◇◇◇
孤児院ではすぐに昼食の準備となり、子供たちは手を洗いにいったり、年少の子供たちを席に座らせたりと、慌ただしく動き始めた。
不安に駆られたマリアはその場に残った。子供たちが食事をする時間になると、連絡していたミュラー夫人が駆け付けてきた。
そのままマリアも子供たちの食事に付き添ったが、ティニアの姿はなく、アドニスの姿もない。
片づけがひと段落したところで、シャトー婦人がミュラー夫人とマリアを呼んだ。その表情は硬い。
「二人とも、助かったわ。ありがとう」
「構わないですよ。それより、ティニアはどうしたの?」
「……。マリアさん、一緒に暮らしているって聞いてるけど、ご自宅でティニアさんの様子はどう?」
「どうって、別に何も…………」
「正直に話すと、今までも時々そうなるときはあったの。でも、2月に入ってからは特にね。……彼女、時々動かなくなってしまうのよ」
「動かなくなる……?」
ミュラー夫人とマリアは同じ反応をしてしまった。ミュラー夫人は旦那と共に、ティニアも関係している財団と関係があった。自分よりもティニアのことを知って居そうな夫人でも、知らない事なのだろうか。
「なんていうか……。こう、表情が固まってしまって、眼の焦点が定まってないような感じでね」
「それは、さっきのような?」
「……そうなの。気を失っているわけでもないのだけど、会話が成り立たないというか。後から聞いても、誤魔化しちゃってね」
「え。そんな様子、全然無かった……」
マリアがショックを隠せないことに気付き、ミュラー夫人が優しく声をかける。
「ティニアの事だから、うまくやっていたんだと思う」
「心配なんだけど、それは別としてさ」
シャトー婦人は言いにくそうに、マリアとミュラー夫人の顔を交互に視た。
「2週間前から、変なひとが教会に来てるのよ」
「は?」
マリアもミュラー夫人も、隠すことなく不機嫌な表情を浮かべた。当然話そうとしているシャトー婦人もだ。
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