6 / 9
6
しおりを挟む
ララが消え、彼女の実家だと教えられていた場所に行くも、そこに家はなかった。
僕は絶望した。
あぁ、騙されたのか。
確かに、ララは子供の時のような目の輝きを持ってはいなかった。
しかし、きっとあのクソみたいな夫と結婚したせいで、色々失ってしまったんだろうと考えていた。
僕が彼女の光になって、幸せに導いてあげればいいと思っていたし、それが出来ていると思っていた。
だが、彼女はきっと彼女自身の選択で光を捨てたのだ。
自分の意志で光を捨て、僕を騙し、僕の前から消えたのだ。
「くそっ……」
ふいにアナシアの顔が思い浮かぶ。
借金と引き換えにした契約上の五年間の結婚だというのに、彼女は僕を支えてくれた。
その瞳には大人の大半が忘れてしまった光が灯っていた。
もし、まだアナシアが僕の妻だったらどうなったのだろうか。
ありもしない現実を考えるが、慌てて首を横に振る。
「僕はララが好きなんだ……あんなつまらない女なんて……」
言葉は途中で虚無と化した。
アナシアは本当につまらない女だったのかと疑問を自分に呈する。
彼女は離婚する時、妻でいたいと言ってくれた。
僕に確かな愛情と安心を与えてくれて、傍にいてくれた。
ララとは違う……温かい人間の感情に溢れた素晴らしい人なのではないのだろうか。
そう思ったら、僕は家を飛び出していた。
馬車に乗り、アナシアの屋敷を目指す。
「アナシア……僕は間違っていた……本当に愛すべき人は君だったんだ……」
ララという初恋の人は僕の求婚をすんなり受けてくれた。
だが、そんなにうまい話があるわけがないのだ。
僕は彼女の策略に気づけず、地獄を見ている。
この闇の中から僕を救ってくれる光は、アナシア以外にいるわけがない。
彼女とよりを戻し、もう一度人生をやり直すんだ。
……アナシアの家についた僕は、急いで馬車を飛び降りた。
門番に自分の身分を示すバッジを見せ、名前を告げると家に入れてくれた。
使用人が僕の元に駆けつけ、用件を聞いてくる。
「僕はアナシアの元夫のエンドだ! 今すぐ彼女に会わせてくれ! 伝えなければいけないことがある!」
僕の剣幕に使用人は慌てて応接間まで案内してくれた。
そこで待つこと数分。
扉が開き、アナシアが入ってくる。
僕はソファから立ち上がると、彼女に叫んだ。
「アナシア! 君のことが忘れられなかったんだ! 僕ともう一度やり直してくれ!」
彼女は僕と離れるのをあんなに嫌がっていた。
だからきっと大丈夫……全部上手く行く。
そう思った僕に、アナシアは冷たい声で言った。
「無理です。私にはもうあなたはいりません」
僕は絶望した。
あぁ、騙されたのか。
確かに、ララは子供の時のような目の輝きを持ってはいなかった。
しかし、きっとあのクソみたいな夫と結婚したせいで、色々失ってしまったんだろうと考えていた。
僕が彼女の光になって、幸せに導いてあげればいいと思っていたし、それが出来ていると思っていた。
だが、彼女はきっと彼女自身の選択で光を捨てたのだ。
自分の意志で光を捨て、僕を騙し、僕の前から消えたのだ。
「くそっ……」
ふいにアナシアの顔が思い浮かぶ。
借金と引き換えにした契約上の五年間の結婚だというのに、彼女は僕を支えてくれた。
その瞳には大人の大半が忘れてしまった光が灯っていた。
もし、まだアナシアが僕の妻だったらどうなったのだろうか。
ありもしない現実を考えるが、慌てて首を横に振る。
「僕はララが好きなんだ……あんなつまらない女なんて……」
言葉は途中で虚無と化した。
アナシアは本当につまらない女だったのかと疑問を自分に呈する。
彼女は離婚する時、妻でいたいと言ってくれた。
僕に確かな愛情と安心を与えてくれて、傍にいてくれた。
ララとは違う……温かい人間の感情に溢れた素晴らしい人なのではないのだろうか。
そう思ったら、僕は家を飛び出していた。
馬車に乗り、アナシアの屋敷を目指す。
「アナシア……僕は間違っていた……本当に愛すべき人は君だったんだ……」
ララという初恋の人は僕の求婚をすんなり受けてくれた。
だが、そんなにうまい話があるわけがないのだ。
僕は彼女の策略に気づけず、地獄を見ている。
この闇の中から僕を救ってくれる光は、アナシア以外にいるわけがない。
彼女とよりを戻し、もう一度人生をやり直すんだ。
……アナシアの家についた僕は、急いで馬車を飛び降りた。
門番に自分の身分を示すバッジを見せ、名前を告げると家に入れてくれた。
使用人が僕の元に駆けつけ、用件を聞いてくる。
「僕はアナシアの元夫のエンドだ! 今すぐ彼女に会わせてくれ! 伝えなければいけないことがある!」
僕の剣幕に使用人は慌てて応接間まで案内してくれた。
そこで待つこと数分。
扉が開き、アナシアが入ってくる。
僕はソファから立ち上がると、彼女に叫んだ。
「アナシア! 君のことが忘れられなかったんだ! 僕ともう一度やり直してくれ!」
彼女は僕と離れるのをあんなに嫌がっていた。
だからきっと大丈夫……全部上手く行く。
そう思った僕に、アナシアは冷たい声で言った。
「無理です。私にはもうあなたはいりません」
210
お気に入りに追加
196
あなたにおすすめの小説
私の夫を奪ったクソ幼馴染は御曹司の夫が親から勘当されたことを知りません。
春木ハル
恋愛
私と夫は最近関係が冷めきってしまっていました。そんなタイミングで、私のクソ幼馴染が夫と結婚すると私に報告してきました。夫は御曹司なのですが、私生活の悪さから夫は両親から勘当されたのです。勘当されたことを知らない幼馴染はお金目当てで夫にすり寄っているのですが、そこを使って上手く仕返しします…。
にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。
もう愛は冷めているのですが?
希猫 ゆうみ
恋愛
「真実の愛を見つけたから駆け落ちするよ。さよなら」
伯爵令嬢エスターは結婚式当日、婚約者のルシアンに無残にも捨てられてしまう。
3年後。
父を亡くしたエスターは令嬢ながらウィンダム伯領の領地経営を任されていた。
ある日、金髪碧眼の美形司祭マクミランがエスターを訪ねてきて言った。
「ルシアン・アトウッドの居場所を教えてください」
「え……?」
国王の命令によりエスターの元婚約者を探しているとのこと。
忘れたはずの愛しさに突き動かされ、マクミラン司祭と共にルシアンを探すエスター。
しかしルシアンとの再会で心優しいエスターの愛はついに冷め切り、完全に凍り付く。
「助けてくれエスター!僕を愛しているから探してくれたんだろう!?」
「いいえ。あなたへの愛はもう冷めています」
やがて悲しみはエスターを真実の愛へと導いていく……
◇ ◇ ◇
完結いたしました!ありがとうございました!
誤字報告のご協力にも心から感謝申し上げます。
【完結】幼馴染に告白されたと勘違いした婚約者は、婚約破棄を申し込んできました
よどら文鳥
恋愛
お茶会での出来事。
突然、ローズは、どうしようもない婚約者のドドンガから婚約破棄を言い渡される。
「俺の幼馴染であるマラリアに、『一緒にいれたら幸せだね』って、さっき言われたんだ。俺は告白された。小さい頃から好きだった相手に言われたら居ても立ってもいられなくて……」
マラリアはローズの親友でもあるから、ローズにとって信じられないことだった。
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
婚約者を親友に寝取られた王太子殿下〜洗脳された婚約者は浮気相手の子供を妊娠したので一緒に育てようと言ってきたので捨てました
window
恋愛
王太子オリバー・ロビンソンは最愛の婚約者のアイラ・ハンプシャー公爵令嬢との
結婚生活に胸を弾ませていた。
だがオリバー殿下は絶望のどん底に突き落とされる。
愛することはないと言われて始まったのですから、どうか最後まで愛さないままでいてください。
田太 優
恋愛
「最初に言っておく。俺はお前を愛するつもりはない。だが婚約を解消する意思もない。せいぜい問題を起こすなよ」
それが婚約者から伝えられたことだった。
最初から冷めた関係で始まり、結婚してもそれは同じだった。
子供ができても無関心。
だから私は子供のために生きると決意した。
今になって心を入れ替えられても困るので、愛さないままでいてほしい。
裏切りのその後 〜現実を目の当たりにした令嬢の行動〜
AliceJoker
恋愛
卒業パーティの夜
私はちょっと外の空気を吸おうとベランダに出た。
だがベランダに出た途端、私は見てはいけない物を見てしまった。
そう、私の婚約者と親友が愛を囁いて抱き合ってるとこを…
____________________________________________________
ゆるふわ(?)設定です。
浮気ものの話を自分なりにアレンジしたものです!
2つのエンドがあります。
本格的なざまぁは他視点からです。
*別視点読まなくても大丈夫です!本編とエンドは繋がってます!
*別視点はざまぁ専用です!
小説家になろうにも掲載しています。
HOT14位 (2020.09.16)
HOT1位 (2020.09.17-18)
恋愛1位(2020.09.17 - 20)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる