離婚を宣言されました

杉本凪咲

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 ララが消え、彼女の実家だと教えられていた場所に行くも、そこに家はなかった。
 僕は絶望した。
 あぁ、騙されたのか。

 確かに、ララは子供の時のような目の輝きを持ってはいなかった。
 しかし、きっとあのクソみたいな夫と結婚したせいで、色々失ってしまったんだろうと考えていた。
 僕が彼女の光になって、幸せに導いてあげればいいと思っていたし、それが出来ていると思っていた。

 だが、彼女はきっと彼女自身の選択で光を捨てたのだ。
 自分の意志で光を捨て、僕を騙し、僕の前から消えたのだ。

「くそっ……」

 ふいにアナシアの顔が思い浮かぶ。
 借金と引き換えにした契約上の五年間の結婚だというのに、彼女は僕を支えてくれた。
 その瞳には大人の大半が忘れてしまった光が灯っていた。

 もし、まだアナシアが僕の妻だったらどうなったのだろうか。
 ありもしない現実を考えるが、慌てて首を横に振る。

「僕はララが好きなんだ……あんなつまらない女なんて……」

 言葉は途中で虚無と化した。
 アナシアは本当につまらない女だったのかと疑問を自分に呈する。
 
 彼女は離婚する時、妻でいたいと言ってくれた。
 僕に確かな愛情と安心を与えてくれて、傍にいてくれた。
 ララとは違う……温かい人間の感情に溢れた素晴らしい人なのではないのだろうか。

 そう思ったら、僕は家を飛び出していた。
 馬車に乗り、アナシアの屋敷を目指す。

「アナシア……僕は間違っていた……本当に愛すべき人は君だったんだ……」

 ララという初恋の人は僕の求婚をすんなり受けてくれた。
 だが、そんなにうまい話があるわけがないのだ。
 僕は彼女の策略に気づけず、地獄を見ている。

 この闇の中から僕を救ってくれる光は、アナシア以外にいるわけがない。
 彼女とよりを戻し、もう一度人生をやり直すんだ。

 ……アナシアの家についた僕は、急いで馬車を飛び降りた。
 門番に自分の身分を示すバッジを見せ、名前を告げると家に入れてくれた。
 使用人が僕の元に駆けつけ、用件を聞いてくる。

「僕はアナシアの元夫のエンドだ! 今すぐ彼女に会わせてくれ! 伝えなければいけないことがある!」

 僕の剣幕に使用人は慌てて応接間まで案内してくれた。
 そこで待つこと数分。
 扉が開き、アナシアが入ってくる。
 
 僕はソファから立ち上がると、彼女に叫んだ。

「アナシア! 君のことが忘れられなかったんだ! 僕ともう一度やり直してくれ!」

 彼女は僕と離れるのをあんなに嫌がっていた。
 だからきっと大丈夫……全部上手く行く。
 そう思った僕に、アナシアは冷たい声で言った。

「無理です。私にはもうあなたはいりません」
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