運命を受け入れてください

４

この世界がつまらないと思っていた僕は、毎日同じように学業に励み、マナーを覚え、剣術を学ぶ。
しかしそこに僕の自由などなく、感じるのは窮屈さだけだった。
それは、僕が第一王子に生まれた宿命だった。

その日、使用人たちの噂話が僕にきっかけを与えた。

「最近、南の森で魔女が出たって話があるけど、本当に怖いわねぇ」
「なんでも人の血を吸い尽くして、髪が真っ赤に染まっているらしいよ」

その話を聞いた瞬間、僕の中で何かが弾けた。
南の森へ行ってその魔女に会いたいと強く思った。
理由はわからないが、その衝動が僕を動かし、気がついたら王宮を飛び出していた。

森に入ると、薄暗く獣の唸り声が聞こえ始めた。
僕は震え、背後を何度も振り返った。

「大丈夫……大丈夫……」

自分に言い聞かせるように何度も呟いたが、効果はなかった。
獣の足音が近づいてくると、僕は立ちどころに静止してしまった。
頭が真っ白で、恐怖が全身を支配していた。

「はぁ……はぁ……」

呼吸が乱れ、立っているのがやっとだった。
最悪なことに、茂みから狼の群れが現れた。
狂暴な目つきと鋭い牙に、僕は腰が抜けてその場に崩れ落ちた。

「グルルルル……」

四匹の狼がゆっくりと近づいてくる。
ああ、僕の生涯はここで終わるのだ。
そんな絶望が胸を締め付けたその時、大きな女性の声が響いた。

「消えろ！！！」

次の瞬間、光が差し込み、狼たちは悶え苦しんで逃げていった。
明かりが消えると、僕の肩に優しい手が置かれた。

「大丈夫？　こんなところで何をしているの？」

心臓が高鳴った。
振り返ると、赤髪の女性が立っていた。
杖を持ち、まさに魔女そのものだった。

「ぼ、僕は……ぼ、ぼ……」

緊張で言葉にならない僕に、彼女は微笑んだ。

「よかったら家に来る？　パンと水くらいしか出せないけど」

それが僕と赤髪の魔女の出会いだった。