3 / 7
3
しおりを挟む
数日後。
部屋で本を読んでいると、部屋の扉がノックも無しに突然開いた。
そこには栗色の髪の毛の、可愛らしい令嬢が立っていて、無遠慮に部屋へと入ってくる。
「あなたがフレイム王子の婚約者の、アクアさんですね?」
言葉だけは丁寧だが、突然部屋に入ってくるあたり、礼儀は知らないらしい。
私は本をパタリと閉じると、椅子から立ち上がる。
「申し訳ありません。今は読書の時間ですので、お帰り頂けますか?」
彼女の名前などは気にもならなかった。
しかしそれが彼女の怒りを触発したのか、目つきが鋭くなる。
「私はフレイム王子の愛人のシアと申します。爵位はあなたよりも低い伯爵令嬢ですが、私の方を愛していると王子も名言されています。この意味が分かりますね?」
なるほど。
爵位や立場は下だが、愛に関していえば自分の方が勝っている。
彼女……シアはそう言いたいのだろう。
「分かりました」
わざとではないが淡々と答えてしまい、シアは眉間にしわを寄せた。
「どうやらまだ意味がよく分かっておられないようですね。あなたはフレイム王子の愛も受けていないし、そもそも婚約者には相応しくありません。感情希薄な令嬢よりも、私のような美しさに溢れた令嬢の方が、フレイム王子には相応しいです!」
「確かにそうかもしれません。しかし、私とフレイム王子の婚約を決めたのは国王様です。国王様の意見に反対をするということで、よろしいですか?」
「え……」
シアの顔が分かりやすく曇った。
しかし何かを思い出したように我に返ると、私に指を差した。
「あなたみたいな人にそんなことを言われる筋合いはないわ!」
敬語がなくなったこの姿こそが、彼女の本性みたいだ。
私は煩わしさを感じて、小さくため息をはく。
「シアさん。私とフレイム王子の婚約に反対をするというのなら、それは国王様に反対をするということ。伯爵令嬢のあなたにその覚悟がありますか? ないのなら話は終わりです。私に対しての無礼は水に流しますから、お帰りください」
今度は意図的に、言葉に怒りを込めた。
しかしシアには上手く伝わらなかったらしく、彼女は不敵な笑みを浮べている。
「あなたに無礼を働いて何が悪いというの? 本当は公爵家でもないくせに」
「え……」
ナイフで心臓を刺された気がした。
まさか、あのことを知っているというのだろうか。
シアは私の驚いた顔を見て、猫を被る余裕が出てきたらしい。
落ち着いた声で言った。
「アクアさん。フレイム王子と婚約解消をして頂けないでしょうか? あなたから事情を話して頂ければ、王子も納得すると思うので」
シアの声が不気味に聞こえた。
心臓の鼓動が早くなる。
嫌な記憶が脳裏を走り、体中が熱くなった。
「それとも私の口から説明致しましょうか? あなたが養子だって」
私の秘密を彼女は知っているみたいだ。
「どうして知っているの?」
私の問いに、シアはニヤリと笑みを深める。
「私、これでも頭脳派なんですよ? 敵になりそうな人のことは徹底的に調べるんです。あなたの子供時代のことを調べようとしたんですが何にも情報がなくて……それが逆に怪しいと思って、故郷にもお邪魔させて頂きました」
「は?」
怒りの感情が胸に広がった。
あの場所は、こんな女がいていい場所じゃない。
シアは私を嘲るように、ケラケラと笑った。
そして目に嬉しそうな色を浮かべると、大声を出した。
「あなたの負けよアクア! さっさと婚約解消しなさい! 平民風情が!」
部屋で本を読んでいると、部屋の扉がノックも無しに突然開いた。
そこには栗色の髪の毛の、可愛らしい令嬢が立っていて、無遠慮に部屋へと入ってくる。
「あなたがフレイム王子の婚約者の、アクアさんですね?」
言葉だけは丁寧だが、突然部屋に入ってくるあたり、礼儀は知らないらしい。
私は本をパタリと閉じると、椅子から立ち上がる。
「申し訳ありません。今は読書の時間ですので、お帰り頂けますか?」
彼女の名前などは気にもならなかった。
しかしそれが彼女の怒りを触発したのか、目つきが鋭くなる。
「私はフレイム王子の愛人のシアと申します。爵位はあなたよりも低い伯爵令嬢ですが、私の方を愛していると王子も名言されています。この意味が分かりますね?」
なるほど。
爵位や立場は下だが、愛に関していえば自分の方が勝っている。
彼女……シアはそう言いたいのだろう。
「分かりました」
わざとではないが淡々と答えてしまい、シアは眉間にしわを寄せた。
「どうやらまだ意味がよく分かっておられないようですね。あなたはフレイム王子の愛も受けていないし、そもそも婚約者には相応しくありません。感情希薄な令嬢よりも、私のような美しさに溢れた令嬢の方が、フレイム王子には相応しいです!」
「確かにそうかもしれません。しかし、私とフレイム王子の婚約を決めたのは国王様です。国王様の意見に反対をするということで、よろしいですか?」
「え……」
シアの顔が分かりやすく曇った。
しかし何かを思い出したように我に返ると、私に指を差した。
「あなたみたいな人にそんなことを言われる筋合いはないわ!」
敬語がなくなったこの姿こそが、彼女の本性みたいだ。
私は煩わしさを感じて、小さくため息をはく。
「シアさん。私とフレイム王子の婚約に反対をするというのなら、それは国王様に反対をするということ。伯爵令嬢のあなたにその覚悟がありますか? ないのなら話は終わりです。私に対しての無礼は水に流しますから、お帰りください」
今度は意図的に、言葉に怒りを込めた。
しかしシアには上手く伝わらなかったらしく、彼女は不敵な笑みを浮べている。
「あなたに無礼を働いて何が悪いというの? 本当は公爵家でもないくせに」
「え……」
ナイフで心臓を刺された気がした。
まさか、あのことを知っているというのだろうか。
シアは私の驚いた顔を見て、猫を被る余裕が出てきたらしい。
落ち着いた声で言った。
「アクアさん。フレイム王子と婚約解消をして頂けないでしょうか? あなたから事情を話して頂ければ、王子も納得すると思うので」
シアの声が不気味に聞こえた。
心臓の鼓動が早くなる。
嫌な記憶が脳裏を走り、体中が熱くなった。
「それとも私の口から説明致しましょうか? あなたが養子だって」
私の秘密を彼女は知っているみたいだ。
「どうして知っているの?」
私の問いに、シアはニヤリと笑みを深める。
「私、これでも頭脳派なんですよ? 敵になりそうな人のことは徹底的に調べるんです。あなたの子供時代のことを調べようとしたんですが何にも情報がなくて……それが逆に怪しいと思って、故郷にもお邪魔させて頂きました」
「は?」
怒りの感情が胸に広がった。
あの場所は、こんな女がいていい場所じゃない。
シアは私を嘲るように、ケラケラと笑った。
そして目に嬉しそうな色を浮かべると、大声を出した。
「あなたの負けよアクア! さっさと婚約解消しなさい! 平民風情が!」
401
お気に入りに追加
417
あなたにおすすめの小説
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?
京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。
顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。
貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。
「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」
毒を盛られ、体中に走る激痛。
痛みが引いた後起きてみると…。
「あれ?私綺麗になってない?」
※前編、中編、後編の3話完結
作成済み。
【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
私の婚約者と姉が密会中に消えました…裏切者は、このまま居なくなってくれて構いません。
coco
恋愛
私の婚約者と姉は、私を裏切り今日も密会して居る。
でも、ついにその罰を受ける日がやって来たようです…。
婚約破棄から始まる私の逆転劇 〜商業の女王と真実の愛〜
(笑)
恋愛
名門貴族の娘であるリディア・アシュフォードは、ある日突然婚約を破棄されてしまう。しかし、彼女はその屈辱をバネに、新たな人生を切り開く決意を固める。前世の記憶を持つリディアは、その知識を活かして商業の世界に進出し、数々の成功を収めることに。そんな中、彼女は運命的な出会いを果たし、ビジネスと恋愛の両方で新たな未来を築いていく。彼女の逆転劇と真実の愛を描いた、感動と成長の物語がここに始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる