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ゲームの世界
5話
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「大丈夫か!?シズク!」
狼を倒した逞しい背中に驚き、魅入っていると、お兄ちゃんがくるりとこちらを向いて、私の肩を軽く揺らした。
その衝撃で、ハッと我に返る。
「__あ…うん、大丈夫だよ。ありがとうお兄ちゃん」
にこりと笑みを浮かべて返事をすると、お兄ちゃんの目付きが鋭くなった。
「___嘘。体が震えてる」
「っ!」
お兄ちゃんの見透かすような鋭い目に、今まで震えていた肩が、ほんの少しだけ動きを止めた。
____…先程まで目の前に迫っていた、" 死 "。
それは平和な世界の中ではなかなか感じることができない感覚であり、感じたくないものの類いでもある。
何とか意識だけは上手く切り替えることができたものの、体は切り替わっていなかった。
_____目の前に迫る鋭く光った牙。
その牙に皮膚が突き破られる場面が再び頭に浮かんで、また体が震え始めた。
「……っ、大丈夫だから。とりあえずここから離れよう?またさっきの狼みたいなやつが来るかもしれないし…」
そう誤魔化して、立ち上がろうとしたその瞬間____
「……きゃっ、!」
足腰に力が入らず、尻もちをついてしまった。
「あいたたた……」
____どうやら腰が抜けてしまっているようで。
何度立ち上がろうと挑戦しても、失敗してしまう。
そんな私をみて、お兄ちゃんはクスリと笑うと、手を差し伸べた。
「ふふ…シズク…手、かして?」
「ん…ごめんね、お兄ちゃん」
伸ばされたお兄ちゃんの手に自分の手を重ねると、そのまま身を任せた。
「いい子だね。よいしょっ…と」
「!!」
グイッと勢いよく引っ張られたため、上手くバランスがとれずに倒れ込んでしまう。
ポスンと頭があたった場所は、お兄ちゃんの胸板だった。
意外にも固くてがっしりとしているそこに、" 男 "を感じてしまう……
相手はお兄ちゃんのはずなのに、何故か顔に熱が集まった。
「~~~!」
「ん?どうしたの、シズク。顔が赤い気がするけど……」
「き、気の所為だよ!!それよりほら、ここから離れよう!?」
お兄ちゃんから離れるようにして足を踏み出し、歩こうとした。………が。
「あ、シズク!いきなり歩いたら、また躓く___…」
「きゃぁ!」
お兄ちゃんが言った通り、足腰に力が入らず、躓きそうになる。
あと少しで地面とこんにちはする羽目に____!
慌ててぎゅっと目を瞑り、身を固くする。
ぐっと歯を食いしばり、地面にぶつかる衝撃を待っていると___
「……はぁ」
どこからか、お兄ちゃんのため息が聞こえてきた。
_____そして、ふわりと浮く体。
その感覚に驚いて、目を開けると……
「ほんと…危なっかしいな、シズクは」
「お、お兄ちゃん!」
お兄ちゃんの力強い腕が膝裏と肩に回され、自分の体が抱きかかえられていた。目と鼻の先には、お兄ちゃんの整った顔が。
「お兄ちゃん、下ろして!重たいでしょ!?」
「いや全然。ちゃんと飯食ってんの?って感じ。シズク、軽すぎ」
慌てて下りようとするも、お兄ちゃんから妨害され、諦めざるを得なかった。
あーだこーだしている間に、時は刻一刻と進み、辺りがだんだん暗くなり始める。お兄ちゃんは私を抱きかかえたままゆっくり歩き始めた。
「とりあえず、この世界と状況を理解するために、ここから離れるから」
「うん、分かった……!」
そう頷く私を見てお兄ちゃんは満足そうに微笑み、歩を進める。
目の前には広大な草原が広がっていた___
狼を倒した逞しい背中に驚き、魅入っていると、お兄ちゃんがくるりとこちらを向いて、私の肩を軽く揺らした。
その衝撃で、ハッと我に返る。
「__あ…うん、大丈夫だよ。ありがとうお兄ちゃん」
にこりと笑みを浮かべて返事をすると、お兄ちゃんの目付きが鋭くなった。
「___嘘。体が震えてる」
「っ!」
お兄ちゃんの見透かすような鋭い目に、今まで震えていた肩が、ほんの少しだけ動きを止めた。
____…先程まで目の前に迫っていた、" 死 "。
それは平和な世界の中ではなかなか感じることができない感覚であり、感じたくないものの類いでもある。
何とか意識だけは上手く切り替えることができたものの、体は切り替わっていなかった。
_____目の前に迫る鋭く光った牙。
その牙に皮膚が突き破られる場面が再び頭に浮かんで、また体が震え始めた。
「……っ、大丈夫だから。とりあえずここから離れよう?またさっきの狼みたいなやつが来るかもしれないし…」
そう誤魔化して、立ち上がろうとしたその瞬間____
「……きゃっ、!」
足腰に力が入らず、尻もちをついてしまった。
「あいたたた……」
____どうやら腰が抜けてしまっているようで。
何度立ち上がろうと挑戦しても、失敗してしまう。
そんな私をみて、お兄ちゃんはクスリと笑うと、手を差し伸べた。
「ふふ…シズク…手、かして?」
「ん…ごめんね、お兄ちゃん」
伸ばされたお兄ちゃんの手に自分の手を重ねると、そのまま身を任せた。
「いい子だね。よいしょっ…と」
「!!」
グイッと勢いよく引っ張られたため、上手くバランスがとれずに倒れ込んでしまう。
ポスンと頭があたった場所は、お兄ちゃんの胸板だった。
意外にも固くてがっしりとしているそこに、" 男 "を感じてしまう……
相手はお兄ちゃんのはずなのに、何故か顔に熱が集まった。
「~~~!」
「ん?どうしたの、シズク。顔が赤い気がするけど……」
「き、気の所為だよ!!それよりほら、ここから離れよう!?」
お兄ちゃんから離れるようにして足を踏み出し、歩こうとした。………が。
「あ、シズク!いきなり歩いたら、また躓く___…」
「きゃぁ!」
お兄ちゃんが言った通り、足腰に力が入らず、躓きそうになる。
あと少しで地面とこんにちはする羽目に____!
慌ててぎゅっと目を瞑り、身を固くする。
ぐっと歯を食いしばり、地面にぶつかる衝撃を待っていると___
「……はぁ」
どこからか、お兄ちゃんのため息が聞こえてきた。
_____そして、ふわりと浮く体。
その感覚に驚いて、目を開けると……
「ほんと…危なっかしいな、シズクは」
「お、お兄ちゃん!」
お兄ちゃんの力強い腕が膝裏と肩に回され、自分の体が抱きかかえられていた。目と鼻の先には、お兄ちゃんの整った顔が。
「お兄ちゃん、下ろして!重たいでしょ!?」
「いや全然。ちゃんと飯食ってんの?って感じ。シズク、軽すぎ」
慌てて下りようとするも、お兄ちゃんから妨害され、諦めざるを得なかった。
あーだこーだしている間に、時は刻一刻と進み、辺りがだんだん暗くなり始める。お兄ちゃんは私を抱きかかえたままゆっくり歩き始めた。
「とりあえず、この世界と状況を理解するために、ここから離れるから」
「うん、分かった……!」
そう頷く私を見てお兄ちゃんは満足そうに微笑み、歩を進める。
目の前には広大な草原が広がっていた___
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とても面白くて、一気に読んでしまいました。これから先、どのように話が展開していくのか、楽しみです!更新大変でしょうが、頑張ってください!
まさかの兄がヤンデレ……!
愛が重すぎてビックリです笑
早く続きみたいです〜٩(*´︶`*)۶
楽しみにしてますね!
感想ありがとうございます!!
愛が重たい系のお兄ちゃんです(´∇`)更新、頑張ります!