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9. 共同探索の準備
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「王水……王水……。」
休み明けの月曜、昼休みを利用して俺は昼食のパンを齧りながらスマホでJDOのホームページで確認されてるドロップアイテムをチェックする。
「あった……。けど未確定情報か。」
昨日チェックした時には無かった王水の情報が未確定情報欄に追加されている。
「昨日まで無かった項目が追加されたってことは、やっぱりあの時のドロップが初めてだったってことか。レアドロップか、ユニークドロップってことか。」
しかし、ユニークドロップのドロップが何なのかわかっていない。
「わざわざレアドロップと呼び方変えてるんだから良い物とか変わった物が出ると思ったんだけどな。」
「おや、調べものですか?」
背後から掛けられた声に振り向くと五反田さんが両手にコンビニの袋を下げて立っていた。
「えぇ、先日の探索で変わった物が出たんですけど、どうも今までに確認されたことがない物だったみたいで。」
「未発見のドロップ品ですか?」
そういう五反田さんの目が一瞬鋭くこちらを見据えたような気がした。
「王水っていう大抵の金属を溶かせる液体なんですけど、それが2階層のスライムから1瓶だけドロップしたんです。JDOのドロップ品リストに昨日までは王水のことが載ってなかったんですけど、今日になって未確認情報欄に2階層のスライムからドロップする王水の情報が載ったんです。」
俺は王水の情報が載ったページをスマホに表示させて五反田さんに見せた。
「なるほど。スライムはどのくらいの数を倒したんですか?」
「スライムだけなら28匹ですね。」
「倒すのが面倒なスライムをそんなに倒したんですか!?」
「え、えぇ。スライムを倒すのが面倒なんてよく知ってますね。」
探索者が一般的になったとはいえ、スライムはゲームのイメージが強いのか探索者じゃない人はスライムが弱いと思っていることが多い。
「……知り合いに探索者がいて、その人から聞いたんですよ。」
今、変な間がなかったか?探索者には危険が付き物だし、もしかしたらその人に何かあったのかもしれないな。掘り下げない方がいいかもしれない。
「そうですか。俺はちょっとした道具を使って割と簡単に倒せる方法を見つけたのでスライムは迂回せずに全部倒して回りましたから。」
「それはすごいですね。どんな方法なんですか?」
どの探索者も自分が見つけた有用な情報は公開せずに秘匿している。それは探索でより稼ぐためだ。周りも同じ方法大量にモンスターを狩るようになると自分が狩れる数が減る。そのため探索者は基本的に情報を秘匿している。
「……でも、まぁ、五反田さんならいいか。」
それに所詮低階層に出る対スライムの情報だし。
「俺が使ったのは生石灰ですよ。」
「生石灰?」
「えぇ、100円ショップなんかで売ってるチャック付きの小さい小分け袋に生石灰を詰めておいてビニールごと取り込ませるんです。スライムがビニールを溶かすと生石灰がスライムに溶け出て、スライムの水分で高温になるんですけど、温泉卵みたいに白い半固形になって崩れるんですよ。」
様子を説明しながらえげつなさを思い出し、なんとも言えない気分になる。
「なるほど、そんな簡単に倒せるんですね。面白いことを聞かせてもらいました。ありがとうございます。」
そこでちょうど昼休みも終わり、仕事に戻ることにした。
仕事が終わり、帰りの電車に揺られながらダンジョンの3階層以降の情報を確認する。先ほどライアンとのメールで今度の探索では3階層以降で出るモンスターと最低1回ずつ戦いながら5階層まで行くことになった。
以前潜ってたダンジョンでは5階層で活動してたから最高到達階層と同じ階層だ。まだブランクはあるが今回はライアンも一緒に潜るってことで相談の結果5階層まで行くことにした。
「3階層がグレーウルフ。4階層がゴブリン。5階層がウッドドールか。」
グレーウルフは灰色の毛皮を持った中型犬サイズの狼だ。2~3匹の集団で活動していて囲まれないように位置取りに気を付けて挑む必要がある。ドロップアイテムはコアなどの共通品を除くと牙、毛皮、肉をドロップする
ゴブリンはよくファンタジー小説に出てくるような子供位の背丈に緑色の肌、少し尖った耳、鷲鼻の醜い顔の魔物だ。人に近い姿をしている分、初めて倒した時には色々と込み上げてくる来るものがあるがそこは以前の探索で経験済みだからもう割り切っている。共通品を除くドロップアイテムは耳と肉だが使い道のない耳とエグミがひどく食べられない肉のため買取はしていない。
5階層のウッドドールは初めて戦う魔物だ。JDOの情報によると人と同じサイズの木製人形で性別や髪形、服装などでいくつかパターンがあるらしい。木製だが武器も使い、切れるような鋭利さはないが、鈍器としては十分凶器らしい。ドロップアイテムも変わっていって倒したウッドドールと同じ姿で1/24サイズのフィギュアがドロップするらしい。
「フィギュアがドロップするとかありそうだけど。鑑定でも怪しいところはないのか。」
ホームページにはそれ以上の情報はなく、ただのフィギュア扱いらしい。
「ただのフィギュアってのが残念だな。とりあえず今回は階層と魔物の情報だけ覚えて、奇をてらったことはしないでまともな探索をするか。」
先日のスライムを思い出しながら今回は変なことはせずに一般的な探索をすると心に決め、準備のために帰路を急いだ。
休み明けの月曜、昼休みを利用して俺は昼食のパンを齧りながらスマホでJDOのホームページで確認されてるドロップアイテムをチェックする。
「あった……。けど未確定情報か。」
昨日チェックした時には無かった王水の情報が未確定情報欄に追加されている。
「昨日まで無かった項目が追加されたってことは、やっぱりあの時のドロップが初めてだったってことか。レアドロップか、ユニークドロップってことか。」
しかし、ユニークドロップのドロップが何なのかわかっていない。
「わざわざレアドロップと呼び方変えてるんだから良い物とか変わった物が出ると思ったんだけどな。」
「おや、調べものですか?」
背後から掛けられた声に振り向くと五反田さんが両手にコンビニの袋を下げて立っていた。
「えぇ、先日の探索で変わった物が出たんですけど、どうも今までに確認されたことがない物だったみたいで。」
「未発見のドロップ品ですか?」
そういう五反田さんの目が一瞬鋭くこちらを見据えたような気がした。
「王水っていう大抵の金属を溶かせる液体なんですけど、それが2階層のスライムから1瓶だけドロップしたんです。JDOのドロップ品リストに昨日までは王水のことが載ってなかったんですけど、今日になって未確認情報欄に2階層のスライムからドロップする王水の情報が載ったんです。」
俺は王水の情報が載ったページをスマホに表示させて五反田さんに見せた。
「なるほど。スライムはどのくらいの数を倒したんですか?」
「スライムだけなら28匹ですね。」
「倒すのが面倒なスライムをそんなに倒したんですか!?」
「え、えぇ。スライムを倒すのが面倒なんてよく知ってますね。」
探索者が一般的になったとはいえ、スライムはゲームのイメージが強いのか探索者じゃない人はスライムが弱いと思っていることが多い。
「……知り合いに探索者がいて、その人から聞いたんですよ。」
今、変な間がなかったか?探索者には危険が付き物だし、もしかしたらその人に何かあったのかもしれないな。掘り下げない方がいいかもしれない。
「そうですか。俺はちょっとした道具を使って割と簡単に倒せる方法を見つけたのでスライムは迂回せずに全部倒して回りましたから。」
「それはすごいですね。どんな方法なんですか?」
どの探索者も自分が見つけた有用な情報は公開せずに秘匿している。それは探索でより稼ぐためだ。周りも同じ方法大量にモンスターを狩るようになると自分が狩れる数が減る。そのため探索者は基本的に情報を秘匿している。
「……でも、まぁ、五反田さんならいいか。」
それに所詮低階層に出る対スライムの情報だし。
「俺が使ったのは生石灰ですよ。」
「生石灰?」
「えぇ、100円ショップなんかで売ってるチャック付きの小さい小分け袋に生石灰を詰めておいてビニールごと取り込ませるんです。スライムがビニールを溶かすと生石灰がスライムに溶け出て、スライムの水分で高温になるんですけど、温泉卵みたいに白い半固形になって崩れるんですよ。」
様子を説明しながらえげつなさを思い出し、なんとも言えない気分になる。
「なるほど、そんな簡単に倒せるんですね。面白いことを聞かせてもらいました。ありがとうございます。」
そこでちょうど昼休みも終わり、仕事に戻ることにした。
仕事が終わり、帰りの電車に揺られながらダンジョンの3階層以降の情報を確認する。先ほどライアンとのメールで今度の探索では3階層以降で出るモンスターと最低1回ずつ戦いながら5階層まで行くことになった。
以前潜ってたダンジョンでは5階層で活動してたから最高到達階層と同じ階層だ。まだブランクはあるが今回はライアンも一緒に潜るってことで相談の結果5階層まで行くことにした。
「3階層がグレーウルフ。4階層がゴブリン。5階層がウッドドールか。」
グレーウルフは灰色の毛皮を持った中型犬サイズの狼だ。2~3匹の集団で活動していて囲まれないように位置取りに気を付けて挑む必要がある。ドロップアイテムはコアなどの共通品を除くと牙、毛皮、肉をドロップする
ゴブリンはよくファンタジー小説に出てくるような子供位の背丈に緑色の肌、少し尖った耳、鷲鼻の醜い顔の魔物だ。人に近い姿をしている分、初めて倒した時には色々と込み上げてくる来るものがあるがそこは以前の探索で経験済みだからもう割り切っている。共通品を除くドロップアイテムは耳と肉だが使い道のない耳とエグミがひどく食べられない肉のため買取はしていない。
5階層のウッドドールは初めて戦う魔物だ。JDOの情報によると人と同じサイズの木製人形で性別や髪形、服装などでいくつかパターンがあるらしい。木製だが武器も使い、切れるような鋭利さはないが、鈍器としては十分凶器らしい。ドロップアイテムも変わっていって倒したウッドドールと同じ姿で1/24サイズのフィギュアがドロップするらしい。
「フィギュアがドロップするとかありそうだけど。鑑定でも怪しいところはないのか。」
ホームページにはそれ以上の情報はなく、ただのフィギュア扱いらしい。
「ただのフィギュアってのが残念だな。とりあえず今回は階層と魔物の情報だけ覚えて、奇をてらったことはしないでまともな探索をするか。」
先日のスライムを思い出しながら今回は変なことはせずに一般的な探索をすると心に決め、準備のために帰路を急いだ。
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