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第3章 シュルトーリア

初めての魔法

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「(帰ったぞ。)」

そろそろお昼というくらいになってガルド達が帰ってきた。

「お帰り、成果はどうだった。」
「(安心しろ。しっかりと取ってきたぞ。)」

そういってガルドが入り口を振り返るとオーク達が鹿やら鳥やら猪やら色々担いで入ってきた。

「今日も大量だな。」

ガルド達が狩りに出ると毎回すごい数の獲物を持って帰ってくる。解体もできるオークは二人しかいないので解体が追い付かず異空間収納には未解体の魔物や野生動物が溜まっている。

「この調子だと解体専門の人員を増やした方がいいな。」

解体もできるオークはあくまでというだけで本人の希望としてはやはり戦闘に専念したいらしい。今の所は午前は狩り、午後は解体としているができることなら本人の希望通り戦闘専門にさせたい。

「でもこれ以上大所帯になるのはな……。食事の準備も大変なのに。」

ガルド達の成果を収納しつつ今後のことに頭を悩ませる。




それから翌日の昼にはタルトは一回り体が大きくなり、歯が生え始めたの確認して離乳食になった。さらに翌日には一人で立てるようになり、2日後の今朝からは体はまだ小さいながらも他のオーク達に交じってガルドの早朝訓練を受けるようになった。

もちろん訓練量はステータスに合わせて抑えてある。


「ほんの数日ですごい成長だな。」
「(母上!)」
「おっと!」

タルトの成長速度を振り返って改めて驚きとともにしみじみとしているとタルトが訓練を終え、走ってこちらに飛びついてきた。

タルトは一人で立てるようになると単語を繋ぐ程度の念話ができるようになり、今ではかなり自然な会話ができるまでになっている。

「(僕が剣を振るところ見てくれましたか?)」
「しっかり見てたよ。カッコ良かったぞ。」
「(えへへへ)」

どうもタルトは少し甘えん坊なところがあるようだが、この成長速度からすると父離れ、いや母離れ?が早そうでそれを考えるとすでにちょっと寂しくなっている。

「タルトもこれだけ動けるようになったならそろそろ街へ行くか。タルトの従魔登録もしないといけないし、貯まった魔物の解体も依頼しないと。」

今後の予定を考えて、計画を立てているとガルドがやってきた。

「(では、今日も狩りに行ってくるぞ。)」
「わかった。気を付けてな。」
「(父上、僕も行きたいです!)」

出発を伝えてきたガルドの足にタルトがしがみついて駄々をこねるがガルドはタルトの頭を撫でてそっと引きはがした。

「(お前にはまだ早い。もう少し大きくなってからだ。)」
「(でも……)」
「タルト、今日は魔法の勉強をしよう。魔法が使えるようになればきっと父さんの役に立てるから。」
「(……分かりました。)」
「いい子だな。」

二人でガルド達を見送るとタルトと魔法を使う練習を始める。

「(ん……こうですか?)」
「そうそう。ちゃんとできてるぞ。焦らず、ゆっくりでいいからまずは手の平に魔力を集めて。」

魔力の動かし方を教えるとぎこちないながらもすぐに魔力を動かせるようになった。

「四元魔法を意識すると使える魔法が思い浮かぶから指先から水か火を出してみよう。なるべく簡単で小さい魔法を選ぶんだぞ。」
「(はい!)」

タルトが集中すると微量ながら魔力が集まってくる。

「……ブヒィ!(……ファイア!)」

タルトが鳴くと手の平から一瞬だけこぶし大の火が燃えあがって消えた。

「フゥフゥ……。」

息を荒くしてへたり込むタルトを支えると膝枕でそっと寝かせてやる。

「すごいな。一回でちゃんと発動できていたぞ。」
「(えへへ……でも、魔法ってすごく疲れるんですね。)」
「そこは訓練次第で楽になってくるからな。少しずつ訓練していこうな。」

タオルを取り出して汗を拭ってやるとすぅすぅと寝息を立て始めた。
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