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第3章 シュルトーリア
冒険者講習3日目午後②
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すぐそばに飛び出しても微動だにしないことを確認して合図を送り、『大地の盾』をこちらに呼ぶ。
こちらに『大地の盾』こちらに来るまでの間に対象を調べておく。
頭上に投げ出された両腕も胴体に沿うようにある両腕もその根元はしっかりと対象の肩に繋がっている。そこに不自然な継ぎ目の様な傷は見当たらない。後ろに流したボサボサでゴワゴワしてそうな髪。額には小さな角の様なものが見えている。俺は鑑定を発動し、魔物について調べる。
種族 :ダブルアームズ・オーガ(Lv10)
状態:気絶、出血
HP :100/2500
MP :1000/1000
STR :300
VIT :250
DEX :400
INT :100
MEN :100
AGL :250
スキル :
短剣術(Lv1) 弓術(Lv1) 投擲術(Lv1) 怪力(Lv1) 視覚強化(Lv1)
オーガの変異種。オーガ種の強靭な腕が2対あり、どの腕も精度で操ることができる。
「(ふむ、妙だな。)」
「どうしたんだ?」
「(木の枝が折れている。地面も踏み荒らされている。ここで戦闘があったのは間違いないだろう。しかし、臭いがここまで追いかけてきた足跡の臭いしかない。この者以外の臭いは薄れているが確認できる。しかしそれ以外の、この者を襲った者の臭いが感じられん。)」
「(そう言われるとそうですね。他の臭いはありません。)」
「となると仲間割れ……か?」
ここで争った形跡があるのに他の臭いがないということはそういうことだろう。
「うぉっ!なんだこいつ!」
「オーガ……いえ、角が小さいですし、レッサーオーガですか。しかし、腕が……。」
近くまで来たウォレスさんが声を上げ、レクターさんが興味深そうにオーガを見ている。
「いえ、鑑定しましたけどレッサーオーガではなくダブルアームズ・オーガというオーガの変異種みたいです。」
「そうですか。しかし角が……。」
「角がどうかしたんですか?」
「オーガ種は大人になると角も大きくなります。この体躯ですからすでに大人の個体だと思いますがそれにしては角が小さいので。」
「変異種だからでしょうか?」
「その可能性もありますね。」
オーガについて話し始める俺とレクターさんをよそにウォレスさんはオーガの傷に目をやっている。
「死んでるのか?」
「いえ、気絶してるだけですね。ただ出血が続いていてこのまま放っておけばいずれ死ぬと思います。」
「そうか。とどめを刺して死体を持って帰れば魔物の種族の証明としては十分だな。」
「そうですね……。」
そういわれて再びオーガに視線を戻す。3mくらいの身長に筋骨隆々な体。このまま止めを刺すのは正直勿体ない。そう思い立つと覚悟を決める。
「いえ、やっぱりとどめを刺すのは止めます。」
「ん?そうれじゃあどうするんだ。」
「テイムします。テイムすれば従魔専用の回復魔法が使えますし、念話で意思疎通が取れます。そうしたら住処の場所とか数が聞き出せるかもしれません。」
「なるほど。しかし、自力で倒したわけじゃない魔物をテイムできるもんなのか?」
「今なら気絶してるので抵抗されずにテイムできます。ただ、目を覚ました時に抵抗されてテイム破られるかもしれません。けど2~4時間くらい掛かりますけどガルドとロアを手懐けた魔物懐柔法もありますから、それで手懐ければ大丈夫だと思います。」
人には一切見せられないが効果抜群の懐柔法だ。
「そういうことなら試してみる価値はあるかもしれないね。」
俺の説明を聞いてクルツさんはテイムすることに納得する。他のメンバーに視線を移しても特に反対はしないみたいだ。
「それじゃあ、行きます。テイム!」
手をかざしてテイムを唱えると掌から出た光が抵抗なくレッサーオーガに吸い込まれていく。光がすべて吸い込まれたところで再び鑑定し、備考に俺の従魔である記載があることを確認する。
「無事テイムできました。それじゃあ回復魔法を使うからガルドは目を覚ましたオーガが攻撃したり逃げたりしたら抑え込んでくれ。」
「(わかった。)」
ガルドがスッと俺の側に立ち、俺は再び手をかざてオーガに回復魔法を発動する。
「Mヒール!」
掌から放たれた光は今度は吸い込まれるのではなくオーガを薄く包み込んでいく。よく見れば腕にあった傷が塞がってきている。腕の傷が無くなり、光が収まったのを確認して鑑定するとまだ状態に出血があったので状態に出血が無くなるまで数回Mヒールを重ね掛けする。
HPの半分程まで回復し、状態から気絶と出血がスッと消えた。
ガサッ、ザザッ。
「フゥーッ!フゥーッ!」
オーガが目を覚まし、飛び起きると飛び跳ねるように距離を取り、息を荒く吐きながらこちらを睨みつける。その目は白目に当たる部分は真っ黒で金の瞳に猫の様な縦長の瞳孔をしていた。
「ウグッ!!」
そして、俺と目が合うとこちらを睨みつけたまま膝をついた。
「これだけ血を流してれば回復魔法をかけたってすぐ動けるようにはならないよな。」
ダイクンさんがそう言って血を吸って赤くなった地面を見る。しかし、俺はレッサーオーガが膝をついた理由が貧血じゃないことを知っている。
「これはちょっと懐かせた方がよさそうですね。ちょっとディメンジョンルームに籠るんで待っててください。」
「今ここでか?……まぁ、いいか。それじゃあ俺達は採取か狩りでもしてくるから。2~4時間掛かるんだよな?それなら間を取って3時間後くらいに戻ってくるから。」
「分かりました。先に終わったらここで待ってます。それじゃあまた後で。」
そう言ってオーガの足元にディメンジョンルームを開くとオーガは突然無くなった足場に対応できず、ディメンジョンルームに落ちていく。俺とガルド達はそのあとを追って駆け出し、ディメンジョンルームの入り口に飛び込んだ。
こちらに『大地の盾』こちらに来るまでの間に対象を調べておく。
頭上に投げ出された両腕も胴体に沿うようにある両腕もその根元はしっかりと対象の肩に繋がっている。そこに不自然な継ぎ目の様な傷は見当たらない。後ろに流したボサボサでゴワゴワしてそうな髪。額には小さな角の様なものが見えている。俺は鑑定を発動し、魔物について調べる。
種族 :ダブルアームズ・オーガ(Lv10)
状態:気絶、出血
HP :100/2500
MP :1000/1000
STR :300
VIT :250
DEX :400
INT :100
MEN :100
AGL :250
スキル :
短剣術(Lv1) 弓術(Lv1) 投擲術(Lv1) 怪力(Lv1) 視覚強化(Lv1)
オーガの変異種。オーガ種の強靭な腕が2対あり、どの腕も精度で操ることができる。
「(ふむ、妙だな。)」
「どうしたんだ?」
「(木の枝が折れている。地面も踏み荒らされている。ここで戦闘があったのは間違いないだろう。しかし、臭いがここまで追いかけてきた足跡の臭いしかない。この者以外の臭いは薄れているが確認できる。しかしそれ以外の、この者を襲った者の臭いが感じられん。)」
「(そう言われるとそうですね。他の臭いはありません。)」
「となると仲間割れ……か?」
ここで争った形跡があるのに他の臭いがないということはそういうことだろう。
「うぉっ!なんだこいつ!」
「オーガ……いえ、角が小さいですし、レッサーオーガですか。しかし、腕が……。」
近くまで来たウォレスさんが声を上げ、レクターさんが興味深そうにオーガを見ている。
「いえ、鑑定しましたけどレッサーオーガではなくダブルアームズ・オーガというオーガの変異種みたいです。」
「そうですか。しかし角が……。」
「角がどうかしたんですか?」
「オーガ種は大人になると角も大きくなります。この体躯ですからすでに大人の個体だと思いますがそれにしては角が小さいので。」
「変異種だからでしょうか?」
「その可能性もありますね。」
オーガについて話し始める俺とレクターさんをよそにウォレスさんはオーガの傷に目をやっている。
「死んでるのか?」
「いえ、気絶してるだけですね。ただ出血が続いていてこのまま放っておけばいずれ死ぬと思います。」
「そうか。とどめを刺して死体を持って帰れば魔物の種族の証明としては十分だな。」
「そうですね……。」
そういわれて再びオーガに視線を戻す。3mくらいの身長に筋骨隆々な体。このまま止めを刺すのは正直勿体ない。そう思い立つと覚悟を決める。
「いえ、やっぱりとどめを刺すのは止めます。」
「ん?そうれじゃあどうするんだ。」
「テイムします。テイムすれば従魔専用の回復魔法が使えますし、念話で意思疎通が取れます。そうしたら住処の場所とか数が聞き出せるかもしれません。」
「なるほど。しかし、自力で倒したわけじゃない魔物をテイムできるもんなのか?」
「今なら気絶してるので抵抗されずにテイムできます。ただ、目を覚ました時に抵抗されてテイム破られるかもしれません。けど2~4時間くらい掛かりますけどガルドとロアを手懐けた魔物懐柔法もありますから、それで手懐ければ大丈夫だと思います。」
人には一切見せられないが効果抜群の懐柔法だ。
「そういうことなら試してみる価値はあるかもしれないね。」
俺の説明を聞いてクルツさんはテイムすることに納得する。他のメンバーに視線を移しても特に反対はしないみたいだ。
「それじゃあ、行きます。テイム!」
手をかざしてテイムを唱えると掌から出た光が抵抗なくレッサーオーガに吸い込まれていく。光がすべて吸い込まれたところで再び鑑定し、備考に俺の従魔である記載があることを確認する。
「無事テイムできました。それじゃあ回復魔法を使うからガルドは目を覚ましたオーガが攻撃したり逃げたりしたら抑え込んでくれ。」
「(わかった。)」
ガルドがスッと俺の側に立ち、俺は再び手をかざてオーガに回復魔法を発動する。
「Mヒール!」
掌から放たれた光は今度は吸い込まれるのではなくオーガを薄く包み込んでいく。よく見れば腕にあった傷が塞がってきている。腕の傷が無くなり、光が収まったのを確認して鑑定するとまだ状態に出血があったので状態に出血が無くなるまで数回Mヒールを重ね掛けする。
HPの半分程まで回復し、状態から気絶と出血がスッと消えた。
ガサッ、ザザッ。
「フゥーッ!フゥーッ!」
オーガが目を覚まし、飛び起きると飛び跳ねるように距離を取り、息を荒く吐きながらこちらを睨みつける。その目は白目に当たる部分は真っ黒で金の瞳に猫の様な縦長の瞳孔をしていた。
「ウグッ!!」
そして、俺と目が合うとこちらを睨みつけたまま膝をついた。
「これだけ血を流してれば回復魔法をかけたってすぐ動けるようにはならないよな。」
ダイクンさんがそう言って血を吸って赤くなった地面を見る。しかし、俺はレッサーオーガが膝をついた理由が貧血じゃないことを知っている。
「これはちょっと懐かせた方がよさそうですね。ちょっとディメンジョンルームに籠るんで待っててください。」
「今ここでか?……まぁ、いいか。それじゃあ俺達は採取か狩りでもしてくるから。2~4時間掛かるんだよな?それなら間を取って3時間後くらいに戻ってくるから。」
「分かりました。先に終わったらここで待ってます。それじゃあまた後で。」
そう言ってオーガの足元にディメンジョンルームを開くとオーガは突然無くなった足場に対応できず、ディメンジョンルームに落ちていく。俺とガルド達はそのあとを追って駆け出し、ディメンジョンルームの入り口に飛び込んだ。
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