84 / 108
第3章 シュルトーリア
冒険者講習3日目午後①
しおりを挟む
キャンプを片付け、バラム、ガルド、ロアだけ残し、他の従魔をディメンジョンルームに戻すと報告が上がった場所に向かう。
「(ご主人さま。あそこだよ~。)」
俺の上半身に纏わりつき、鎧になっているバラムが触手を伸ばして方向を指し示すとその先で子バラム達が集まりピョコピョコ飛び跳ねている。
「ありがとう、バラム。」
俺はバラムの核がある胸元を撫でてバラムを労う。そのまま子バラム達に近づくと跳ねる子バラム達の中心に報告に合った足跡がいくつも残っていた。その足跡を検分する間にバラムは小バラム達をどんどん取り込んでいく。
「足跡の大きさはまちまちだけど大体ギルドの依頼書に合ったサイズと一致する。俺達が森に入った位置からはズレてるけど足跡は街道の方から来てるな。最近また街道に出たのか?足跡のサイズの違いからして数は5~7匹。このまま森の奥に進んでるな。」
俺は足跡が目的の魔物の物だということを確信し講習で習ったことを頼りに検分を済ませると後ろからついて来ている『大地の盾』に振り返る。
「目的の魔物で間違いなさそうです。数は5~7匹。調査範囲はまだ先まであるのでこのまま足跡と追えそうなら臭いを追って追跡します。」
「わかった。俺達のことは気にしないで進めてくれ。」
ダイクンさんに同意するように他のメンバーが頷くのを確認して俺はガルドとロアに臭いと足跡を追うように指示を出した。
「(わかった。見つけたらすぐに攻撃して良いのか?)」
俺の指示にガルドが好戦的な笑みを浮かべる。
「いや、住処も確認したいし、見つけたらしばらく泳がせる。」
「(むぅ。そうか。)」
すぐに戦えないことにガルドが不服そうに唸る。
「住処まで行けばもっと獲物がいるかもしれないから。我慢な。」
「(仕方ない。)」
ガルドとロアの腕をポンポンと叩き、臭いを辿るように促す。
「どうだ?臭いは追えそうか?」
「(うむ、問題ない。)」
「(大丈夫です。任せてください。この臭いの濃さなら多分ここを通ってから1日も経っていないと思います。)」
そう言って移動する2人に俺も付いていく。
そのまましばらく進んだところで2人が反応した。
「(血の臭いがしますね。足跡の魔物の血の臭いだと思います。)」
「ここまで血の臭いはしてこなかったんだよな?」
「(うむ、ここまでは血の臭いはなかった。)」
「ってことはこの先で何かあってケガをしたってことか。」
ロア達の反応に一度足を止めて考え、『大地の盾』を見た。
「ロアがこの先から目的の魔物の血の臭いを嗅ぎ取りました。目的の魔物の正体はまだ不明ですが、体長3m程の魔物にケガを負わせられる魔物がいるのかもしれません。気を付けていきましょう。」
ロアを先頭に追跡を再開しさらに奥へと進み、街道から10km程入った所で2人が歩みを緩めた。
「(血の臭いが濃くなってきたぞ。そろそろ見えるはずだ。)」
「(臭いは濃いですけど、一人分しかないですね。一人だけケガをして置いて行かれたんでしょうか?)」
「(もしくはすでに死んでいるかだな。……見えたぞ。)」
ガルドが指し示す先に目を凝らすと灰色の何かがあるのが辛うじて見えた。俺は止まるように合図を送り目標を見つけたことを告げる。
「ここからだと鑑定が届かないので慎重に近づいていきます。」
対象の情報を細かく調べられる便利な鑑定だがいくつが制限がある。一つは射程。スキルレベルが最大の俺でも最大射程は30mだ。それなりの長さではあるがここから対象まではまだ100m以上ある。もう一つは視認。鑑定対象がある程度目視で確認できる状態でないといけない。射程の30mまで近づいても木々が邪魔で鑑定できるほど視界に収められるかわからない。
なるべく対象全体が見える位置に行くように俺達はゆっくりと近づいていく。
50m程の位置まで近づくとうつ伏せに倒れた対象の下半身が確認できた。オークの様な獣人系ではなくゴブリンの様な人に近い姿の魔物のようで灰色の肌に筋肉が盛り上がった足が見える。腰布は巻いているようだが上半身は木々に遮られてよく見えない。
そのまま木々に身を隠しながら30mまで近づき、下半身だけ視認できる状態で試しに鑑定を使ってみるがやはり見えている範囲は足りないのか鑑定が通らなかった。
「この距離で鑑定ができるのか。どうだった?」
俺が鑑定を使ったのを見て、ダイクンさんが声を掛けてきた。もう一度対象を見るが動く様子はなく血だまりができているのも確認できる。
「警戒は続けますがかなりの血を流しているみたいですし、隠れるのはやめてまっすぐ近づこうと思います。全体像を確認したうえで鑑定を掛けます。」
「わかった。気を付けろよ。」
「はい。」
視線を再び対象に戻し、剣に手を掛けて隠れることなくゆっくり進む。木々が視界遮らないように上手く位置取りをしながら15m程の位置に進むと頭の辺りも確認できた。硬そうな毛質にボサボサの白い長髪。うつ伏せで前に投げ出された腕は足と同様かそれ以上に筋肉が盛り上がっているように見える。その腕には古い物から赤黒く血が固まった新しい物までいくつもの傷が見える。
「ここまで近づいて反応がないってことは死んでるか全く動けないってことか。……よし、一気に近づこう。」
俺は覚悟を決めて走りだし、対象の正面に出た
「なっ!!」
鑑定を掛けるため対象の全体像を視界に収めた俺は驚きのあまり目を見開いた。
先ほど確認した通り、筋肉が盛り上がった投げ出された両腕に白髪頭の頭部付近。同じく筋肉で盛り上がった両足を含む下半身。その間には両腕と同様に新旧含めていくつもの傷があるが筋肉で盛り上がった背筋が深い溝を作る大きな胴体。そしてその胴体に沿うように筋肉が盛り上がった両腕があった。
「(ご主人さま。あそこだよ~。)」
俺の上半身に纏わりつき、鎧になっているバラムが触手を伸ばして方向を指し示すとその先で子バラム達が集まりピョコピョコ飛び跳ねている。
「ありがとう、バラム。」
俺はバラムの核がある胸元を撫でてバラムを労う。そのまま子バラム達に近づくと跳ねる子バラム達の中心に報告に合った足跡がいくつも残っていた。その足跡を検分する間にバラムは小バラム達をどんどん取り込んでいく。
「足跡の大きさはまちまちだけど大体ギルドの依頼書に合ったサイズと一致する。俺達が森に入った位置からはズレてるけど足跡は街道の方から来てるな。最近また街道に出たのか?足跡のサイズの違いからして数は5~7匹。このまま森の奥に進んでるな。」
俺は足跡が目的の魔物の物だということを確信し講習で習ったことを頼りに検分を済ませると後ろからついて来ている『大地の盾』に振り返る。
「目的の魔物で間違いなさそうです。数は5~7匹。調査範囲はまだ先まであるのでこのまま足跡と追えそうなら臭いを追って追跡します。」
「わかった。俺達のことは気にしないで進めてくれ。」
ダイクンさんに同意するように他のメンバーが頷くのを確認して俺はガルドとロアに臭いと足跡を追うように指示を出した。
「(わかった。見つけたらすぐに攻撃して良いのか?)」
俺の指示にガルドが好戦的な笑みを浮かべる。
「いや、住処も確認したいし、見つけたらしばらく泳がせる。」
「(むぅ。そうか。)」
すぐに戦えないことにガルドが不服そうに唸る。
「住処まで行けばもっと獲物がいるかもしれないから。我慢な。」
「(仕方ない。)」
ガルドとロアの腕をポンポンと叩き、臭いを辿るように促す。
「どうだ?臭いは追えそうか?」
「(うむ、問題ない。)」
「(大丈夫です。任せてください。この臭いの濃さなら多分ここを通ってから1日も経っていないと思います。)」
そう言って移動する2人に俺も付いていく。
そのまましばらく進んだところで2人が反応した。
「(血の臭いがしますね。足跡の魔物の血の臭いだと思います。)」
「ここまで血の臭いはしてこなかったんだよな?」
「(うむ、ここまでは血の臭いはなかった。)」
「ってことはこの先で何かあってケガをしたってことか。」
ロア達の反応に一度足を止めて考え、『大地の盾』を見た。
「ロアがこの先から目的の魔物の血の臭いを嗅ぎ取りました。目的の魔物の正体はまだ不明ですが、体長3m程の魔物にケガを負わせられる魔物がいるのかもしれません。気を付けていきましょう。」
ロアを先頭に追跡を再開しさらに奥へと進み、街道から10km程入った所で2人が歩みを緩めた。
「(血の臭いが濃くなってきたぞ。そろそろ見えるはずだ。)」
「(臭いは濃いですけど、一人分しかないですね。一人だけケガをして置いて行かれたんでしょうか?)」
「(もしくはすでに死んでいるかだな。……見えたぞ。)」
ガルドが指し示す先に目を凝らすと灰色の何かがあるのが辛うじて見えた。俺は止まるように合図を送り目標を見つけたことを告げる。
「ここからだと鑑定が届かないので慎重に近づいていきます。」
対象の情報を細かく調べられる便利な鑑定だがいくつが制限がある。一つは射程。スキルレベルが最大の俺でも最大射程は30mだ。それなりの長さではあるがここから対象まではまだ100m以上ある。もう一つは視認。鑑定対象がある程度目視で確認できる状態でないといけない。射程の30mまで近づいても木々が邪魔で鑑定できるほど視界に収められるかわからない。
なるべく対象全体が見える位置に行くように俺達はゆっくりと近づいていく。
50m程の位置まで近づくとうつ伏せに倒れた対象の下半身が確認できた。オークの様な獣人系ではなくゴブリンの様な人に近い姿の魔物のようで灰色の肌に筋肉が盛り上がった足が見える。腰布は巻いているようだが上半身は木々に遮られてよく見えない。
そのまま木々に身を隠しながら30mまで近づき、下半身だけ視認できる状態で試しに鑑定を使ってみるがやはり見えている範囲は足りないのか鑑定が通らなかった。
「この距離で鑑定ができるのか。どうだった?」
俺が鑑定を使ったのを見て、ダイクンさんが声を掛けてきた。もう一度対象を見るが動く様子はなく血だまりができているのも確認できる。
「警戒は続けますがかなりの血を流しているみたいですし、隠れるのはやめてまっすぐ近づこうと思います。全体像を確認したうえで鑑定を掛けます。」
「わかった。気を付けろよ。」
「はい。」
視線を再び対象に戻し、剣に手を掛けて隠れることなくゆっくり進む。木々が視界遮らないように上手く位置取りをしながら15m程の位置に進むと頭の辺りも確認できた。硬そうな毛質にボサボサの白い長髪。うつ伏せで前に投げ出された腕は足と同様かそれ以上に筋肉が盛り上がっているように見える。その腕には古い物から赤黒く血が固まった新しい物までいくつもの傷が見える。
「ここまで近づいて反応がないってことは死んでるか全く動けないってことか。……よし、一気に近づこう。」
俺は覚悟を決めて走りだし、対象の正面に出た
「なっ!!」
鑑定を掛けるため対象の全体像を視界に収めた俺は驚きのあまり目を見開いた。
先ほど確認した通り、筋肉が盛り上がった投げ出された両腕に白髪頭の頭部付近。同じく筋肉で盛り上がった両足を含む下半身。その間には両腕と同様に新旧含めていくつもの傷があるが筋肉で盛り上がった背筋が深い溝を作る大きな胴体。そしてその胴体に沿うように筋肉が盛り上がった両腕があった。
23
お気に入りに追加
2,195
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。
拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ
親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。
え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか
※独自の世界線
配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!
ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて
素の性格がリスナー全員にバレてしまう
しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて…
■
□
■
歌い手配信者(中身は腹黒)
×
晒し系配信者(中身は不憫系男子)
保険でR15付けてます
【完結】両性を持つ魔性の王が唯一手に入れられないのは、千年族の男の心
たかつじ楓
BL
【美形の王×異種族の青年の、主従・寿命差・執着愛】ハーディス王国の王ナギリは、両性を持ち、魔性の銀の瞳と中性的な美貌で人々を魅了し、大勢の側室を囲っている王であった。
幼い頃、家臣から謀反を起こされ命の危機にさらされた時、救ってくれた「千年族」。その名も”青銅の蝋燭立て”という名の黒髪の男に十年ぶりに再会する。
人間の十分の一の速さでゆっくりと心臓が鼓動するため、十倍長生きをする千年族。感情表現はほとんどなく、動きや言葉が緩慢で、不思議な雰囲気を纏っている。
彼から剣を学び、傍にいるうちに、幼いナギリは次第に彼に惹かれていき、城が再建し自分が王になった時に傍にいてくれと頼む。
しかし、それを断り青銅の蝋燭立ては去って行ってしまった。
命の恩人である彼と久々に過ごし、生まれて初めて心からの恋をするが―――。
一世一代の告白にも、王の想いには応えられないと、去っていってしまう青銅の蝋燭立て。
拒絶された悲しさに打ちひしがれるが、愛しの彼の本心を知った時、王の取る行動とは……。
王国を守り、子孫を残さねばならない王としての使命と、種族の違う彼への恋心に揺れる、両性具有の魔性の王×ミステリアスな異種族の青年のせつない恋愛ファンタジー。
弟いわく、ここは乙女ゲームの世界らしいです
慎
BL
――‥ 昔、あるとき弟が言った。此処はある乙女ゲームの世界の中だ、と。我が侯爵家 ハワードは今の代で終わりを迎え、父・母の散財により没落貴族に堕ちる、と… 。そして、これまでの悪事が晒され、父・母と共に令息である僕自身も母の息の掛かった婚約者の悪役令嬢と共に公開処刑にて断罪される… と。あの日、珍しく滑舌に喋り出した弟は予言めいた言葉を口にした――‥ 。
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる