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第3章 シュルトーリア

冒険者講習3日目午後①

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キャンプを片付け、バラム、ガルド、ロアだけ残し、他の従魔をディメンジョンルームに戻すと報告が上がった場所に向かう。

「(ご主人さま。あそこだよ~。)」

俺の上半身に纏わりつき、鎧になっているバラムが触手を伸ばして方向を指し示すとその先で子バラム達が集まりピョコピョコ飛び跳ねている。

「ありがとう、バラム。」

俺はバラムの核がある胸元を撫でてバラムを労う。そのまま子バラム達に近づくと跳ねる子バラム達の中心に報告に合った足跡がいくつも残っていた。その足跡を検分する間にバラムは小バラム達をどんどん取り込んでいく。

「足跡の大きさはまちまちだけど大体ギルドの依頼書に合ったサイズと一致する。俺達が森に入った位置からはズレてるけど足跡は街道の方から来てるな。最近また街道に出たのか?足跡のサイズの違いからして数は5~7匹。このまま森の奥に進んでるな。」

俺は足跡が目的の魔物の物だということを確信し講習で習ったことを頼りに検分を済ませると後ろからついて来ている『大地の盾』に振り返る。

「目的の魔物で間違いなさそうです。数は5~7匹。調査範囲はまだ先まであるのでこのまま足跡と追えそうなら臭いを追って追跡します。」
「わかった。俺達のことは気にしないで進めてくれ。」

ダイクンさんに同意するように他のメンバーが頷くのを確認して俺はガルドとロアに臭いと足跡を追うように指示を出した。

「(わかった。見つけたらすぐに攻撃して良いのか?)」

俺の指示にガルドが好戦的な笑みを浮かべる。

「いや、住処も確認したいし、見つけたらしばらく泳がせる。」
「(むぅ。そうか。)」

すぐに戦えないことにガルドが不服そうに唸る。

「住処まで行けばもっと獲物がいるかもしれないから。我慢な。」
「(仕方ない。)」

ガルドとロアの腕をポンポンと叩き、臭いを辿るように促す。

「どうだ?臭いは追えそうか?」
「(うむ、問題ない。)」
「(大丈夫です。任せてください。この臭いの濃さなら多分ここを通ってから1日も経っていないと思います。)」

そう言って移動する2人に俺も付いていく。

そのまましばらく進んだところで2人が反応した。

「(血の臭いがしますね。足跡の魔物の血の臭いだと思います。)」
「ここまで血の臭いはしてこなかったんだよな?」
「(うむ、ここまでは血の臭いはなかった。)」
「ってことはこの先で何かあってケガをしたってことか。」

ロア達の反応に一度足を止めて考え、『大地の盾』を見た。

「ロアがこの先から目的の魔物の血の臭いを嗅ぎ取りました。目的の魔物の正体はまだ不明ですが、体長3m程の魔物にケガを負わせられる魔物がいるのかもしれません。気を付けていきましょう。」

ロアを先頭に追跡を再開しさらに奥へと進み、街道から10km程入った所で2人が歩みを緩めた。

「(血の臭いが濃くなってきたぞ。そろそろ見えるはずだ。)」
「(臭いは濃いですけど、一人分しかないですね。一人だけケガをして置いて行かれたんでしょうか?)」
「(もしくはすでに死んでいるかだな。……見えたぞ。)」

ガルドが指し示す先に目を凝らすと灰色の何かがあるのが辛うじて見えた。俺は止まるように合図を送り目標を見つけたことを告げる。

「ここからだと鑑定が届かないので慎重に近づいていきます。」

対象の情報を細かく調べられる便利な鑑定だがいくつが制限がある。一つは射程。スキルレベルが最大の俺でも最大射程は30mだ。それなりの長さではあるがここから対象まではまだ100m以上ある。もう一つは視認。鑑定対象がある程度目視で確認できる状態でないといけない。射程の30mまで近づいても木々が邪魔で鑑定できるほど視界に収められるかわからない。

なるべく対象全体が見える位置に行くように俺達はゆっくりと近づいていく。

50m程の位置まで近づくとうつ伏せに倒れた対象の下半身が確認できた。オークの様な獣人系ではなくゴブリンの様な人に近い姿の魔物のようで灰色の肌に筋肉が盛り上がった足が見える。腰布は巻いているようだが上半身は木々に遮られてよく見えない。

そのまま木々に身を隠しながら30mまで近づき、下半身だけ視認できる状態で試しに鑑定を使ってみるがやはり見えている範囲は足りないのか鑑定が通らなかった。

「この距離で鑑定ができるのか。どうだった?」

俺が鑑定を使ったのを見て、ダイクンさんが声を掛けてきた。もう一度対象を見るが動く様子はなく血だまりができているのも確認できる。

「警戒は続けますがかなりの血を流しているみたいですし、隠れるのはやめてまっすぐ近づこうと思います。全体像を確認したうえで鑑定を掛けます。」
「わかった。気を付けろよ。」
「はい。」

視線を再び対象に戻し、剣に手を掛けて隠れることなくゆっくり進む。木々が視界遮らないように上手く位置取りをしながら15m程の位置に進むと頭の辺りも確認できた。硬そうな毛質にボサボサの白い長髪。うつ伏せで前に投げ出された腕は足と同様かそれ以上に筋肉が盛り上がっているように見える。その腕には古い物から赤黒く血が固まった新しい物までいくつもの傷が見える。

「ここまで近づいて反応がないってことは死んでるか全く動けないってことか。……よし、一気に近づこう。」

俺は覚悟を決めて走りだし、対象の正面に出た

「なっ!!」

鑑定を掛けるため対象の全体像を視界に収めた俺は驚きのあまり目を見開いた。

先ほど確認した通り、筋肉が盛り上がった投げ出された両腕に白髪頭の頭部付近。同じく筋肉で盛り上がった両足を含む下半身。その間には両腕と同様に新旧含めていくつもの傷があるが筋肉で盛り上がった背筋が深い溝を作る大きな胴体。そしてその胴体に沿うようにがあった。
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