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第3章 シュルトーリア
明けて剥ぎ取り
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明けて翌日。
俺はディメンジョンルームで切り取られたファイアアントの触覚をせっせと纏め、10組ずつの束にしていく。
「(妻よ、これ以上取り出すと作業場所がなくなるぞ。)」
ガルドに言われて顔をあげると隅には触覚を切り取ったファイアアントが積み上げられ、これ以上積むと倒れそうな状態だ。空いてるスペースにはガルドとロアがいる。バラムは体を薄く伸ばし、俺達の足元や壁に張り付いている。
昨日は宿に着いてすぐ、ガルドを呼び出してロアと一緒に厩舎に入れ、俺は部屋に向かおうとするが大きくなってバラムをみてご主人に止められた。部屋に連れていけなくなったバラムの分の厩舎を借りてガルド達と厩舎で寝てもらう。
俺は一人、部屋に上がって着替えるとベッドに倒れこむ。ファイアアントの取り出しで魔力を使うことを考え、ベッドに横になったまま腕を伸ばすと昏倒覚悟でディメンジョンルームを開く。その中で異空間収納の出口を作り、ファイアアントを何匹か出したところで意識を失った。
そして朝から厩舎で討伐証明の回収を始める。厩舎で開いたディメンジョンルームの中である程度ファイアアントを取り出すとガルドとロアが討伐証明の触覚の剥ぎ取り、バラムが回収して俺のところに持ってくる。俺はひたすらロープで束にしていく流れ作業だ。
剥ぎ取りが終わったファイアアントは隅っこに積み上げていき、取り出した分が終わればまた次を取り出す。それを5回ほど繰り返したところでガルドからストップがかかり今に至る。
「(妻よ、これ以上取り出すと作業場所がなくなるぞ。)」
俺は積み上げられたファイアアントと触覚の束を見てため息をついた。
「まだこれだけか。」
触覚の束は8つ。10組ずつの束にしてるので80匹分の討伐証明になる。しかし、回収してきたファイアアントの半分も終わっていない。
「さすがにこれをまた異空間収納にしまうのは骨が折れるな。……しかたない、とりあえずこれだけ買取に出してくるか。」
「(お出かけですか?)」
立ち上がり、まとめた触覚を収納する俺を見てロアが聞いてくる。
「あぁ、とりあえず触覚を取ったファイアアントだけ買取に出してくる。」
「(バラムも行くー!)」
バラムが触手を伸ばし俺の体に巻き付き、いいと言うまで放さないと言わんばかりにガッチリと固定してくる。
「わかった、わかった。じゃあみんなで行くか。」
「(わーい!)」
はしゃぐバラムとガルド、ロアを連れて厩舎を出ると冒険者ギルドに向かう。
ロアだけでなくガルドも進化して大きくなったことから昨日、一昨日に引き続きジロジロとあっちこちから視線を向けられる。
「(僕だけじゃなくてガルドさんも見られてますね。)」
「(我らに向けられる視線など気にするな。妻に向けられる悪意にだけ注意していればよい。)」
ガルド気に掛ける様子もなく堂々と俺の後ろについて歩く。しかし、俺への悪意にだけ注意していればいいとまで言うとは。
「(俺に向けた悪意を感じてもいきなり襲わないようにな。)」
「(その位弁えている。妻に迷惑が掛からぬよう、人目につかぬ所でしっかり始末する。)」
おいおい物騒だな。
「(そういうことはするな。向こうが見るだけ何もしてこないなら放っておけばいい。何かしてくるなら先に手を出させてから返り討ちにして衛兵に引き渡せばいい。)」
「(しかしそれでは妻の身に危険が……。)」
「(何かあってもみんなが守ってくれるだろ。)」
そう言って振り返るとガルドは一瞬驚いたように目を見開く。
「(当たり前だ。任せておけ。)」
そういって誇らしげな表情を作って少し胸を張るガルドは今はボロ布に穴をあけた貫頭衣を身に着けている。
「ガルドの服と鎧も早く新調しないとな。」
そんな風に話しながら歩いているとすぐにギルドに着いた。3人には後でファイアアントを取り出す為に一度ディメンジョンルームで待っててもらい、俺だけギルドに入る。
朝の人が集まる時間は過ぎているためギルド内は閑散としている。買取カウンターに向かうとそこでは短い金髪の青年が座って本を読んでいた。
「すいません。」
「あっ、はい。」
俺が声を掛けると慌てて本を閉じて立ち上がった。
「解体と買い取りをお願いします。」
「はい。物は何でしょうか?」
「ファイアアントでとりあえず80匹あります。」
「あぁ、もしかしてタカシさんですか?ギルドマスターから聞いてます。一度に大量のファイアアントを持ち込んでくるから準備しとけって。」
「助かります。80匹お願いしてもまだ半分以上手元に残ってるんですよ。こっちはまだ討伐証明の触覚が取り終わってないので解体に出せないんですけど。」
「わかりました。じゃあ先にその80匹だけ預かって解体します。倉庫に案内しますのでこちらへどうぞ。」
青年はそう言ってカウンター奥の扉を開けた。俺はカウンター横から入り、先に進む青年の後に続く。
扉の向こうは作業台が並び、青年は作業台の脇を抜けてさらに奥の扉を開けた。そこには俺のディメンジョンルームの2倍ほどのスペースが空けられていた。
「そちらのスペースを確保しておいたのでそこに出してもらえますか。」
「わかりました。」
俺はそのスペースの端でディメンジョンルームを開く。
「おまたせ。ファイアアントを運び出してくれ。」
俺が声を掛けると中で待機していた3人は魔法、腕力、流動体とそれぞれの方法でファイアアントを運びだし、倉庫に移していく。運び出しはあっという間に終わり、青年がファイアアントをカウントしていく。
「……77、78、79、80。確かに80匹お預かりします。精算は先に80匹分で出しますか?それとも全部終わってから?」
「じゃあ先に80匹分お願いします。」
「わかりました。では明日のお昼頃までには終わらせておくのでそのくらいにまた来てください。」
「はい、じゃあよろしくお願いします。」
俺は預かり証を受け取り、3人を一度ディメンジョンルームに戻してギルドを出た。
俺はディメンジョンルームで切り取られたファイアアントの触覚をせっせと纏め、10組ずつの束にしていく。
「(妻よ、これ以上取り出すと作業場所がなくなるぞ。)」
ガルドに言われて顔をあげると隅には触覚を切り取ったファイアアントが積み上げられ、これ以上積むと倒れそうな状態だ。空いてるスペースにはガルドとロアがいる。バラムは体を薄く伸ばし、俺達の足元や壁に張り付いている。
昨日は宿に着いてすぐ、ガルドを呼び出してロアと一緒に厩舎に入れ、俺は部屋に向かおうとするが大きくなってバラムをみてご主人に止められた。部屋に連れていけなくなったバラムの分の厩舎を借りてガルド達と厩舎で寝てもらう。
俺は一人、部屋に上がって着替えるとベッドに倒れこむ。ファイアアントの取り出しで魔力を使うことを考え、ベッドに横になったまま腕を伸ばすと昏倒覚悟でディメンジョンルームを開く。その中で異空間収納の出口を作り、ファイアアントを何匹か出したところで意識を失った。
そして朝から厩舎で討伐証明の回収を始める。厩舎で開いたディメンジョンルームの中である程度ファイアアントを取り出すとガルドとロアが討伐証明の触覚の剥ぎ取り、バラムが回収して俺のところに持ってくる。俺はひたすらロープで束にしていく流れ作業だ。
剥ぎ取りが終わったファイアアントは隅っこに積み上げていき、取り出した分が終わればまた次を取り出す。それを5回ほど繰り返したところでガルドからストップがかかり今に至る。
「(妻よ、これ以上取り出すと作業場所がなくなるぞ。)」
俺は積み上げられたファイアアントと触覚の束を見てため息をついた。
「まだこれだけか。」
触覚の束は8つ。10組ずつの束にしてるので80匹分の討伐証明になる。しかし、回収してきたファイアアントの半分も終わっていない。
「さすがにこれをまた異空間収納にしまうのは骨が折れるな。……しかたない、とりあえずこれだけ買取に出してくるか。」
「(お出かけですか?)」
立ち上がり、まとめた触覚を収納する俺を見てロアが聞いてくる。
「あぁ、とりあえず触覚を取ったファイアアントだけ買取に出してくる。」
「(バラムも行くー!)」
バラムが触手を伸ばし俺の体に巻き付き、いいと言うまで放さないと言わんばかりにガッチリと固定してくる。
「わかった、わかった。じゃあみんなで行くか。」
「(わーい!)」
はしゃぐバラムとガルド、ロアを連れて厩舎を出ると冒険者ギルドに向かう。
ロアだけでなくガルドも進化して大きくなったことから昨日、一昨日に引き続きジロジロとあっちこちから視線を向けられる。
「(僕だけじゃなくてガルドさんも見られてますね。)」
「(我らに向けられる視線など気にするな。妻に向けられる悪意にだけ注意していればよい。)」
ガルド気に掛ける様子もなく堂々と俺の後ろについて歩く。しかし、俺への悪意にだけ注意していればいいとまで言うとは。
「(俺に向けた悪意を感じてもいきなり襲わないようにな。)」
「(その位弁えている。妻に迷惑が掛からぬよう、人目につかぬ所でしっかり始末する。)」
おいおい物騒だな。
「(そういうことはするな。向こうが見るだけ何もしてこないなら放っておけばいい。何かしてくるなら先に手を出させてから返り討ちにして衛兵に引き渡せばいい。)」
「(しかしそれでは妻の身に危険が……。)」
「(何かあってもみんなが守ってくれるだろ。)」
そう言って振り返るとガルドは一瞬驚いたように目を見開く。
「(当たり前だ。任せておけ。)」
そういって誇らしげな表情を作って少し胸を張るガルドは今はボロ布に穴をあけた貫頭衣を身に着けている。
「ガルドの服と鎧も早く新調しないとな。」
そんな風に話しながら歩いているとすぐにギルドに着いた。3人には後でファイアアントを取り出す為に一度ディメンジョンルームで待っててもらい、俺だけギルドに入る。
朝の人が集まる時間は過ぎているためギルド内は閑散としている。買取カウンターに向かうとそこでは短い金髪の青年が座って本を読んでいた。
「すいません。」
「あっ、はい。」
俺が声を掛けると慌てて本を閉じて立ち上がった。
「解体と買い取りをお願いします。」
「はい。物は何でしょうか?」
「ファイアアントでとりあえず80匹あります。」
「あぁ、もしかしてタカシさんですか?ギルドマスターから聞いてます。一度に大量のファイアアントを持ち込んでくるから準備しとけって。」
「助かります。80匹お願いしてもまだ半分以上手元に残ってるんですよ。こっちはまだ討伐証明の触覚が取り終わってないので解体に出せないんですけど。」
「わかりました。じゃあ先にその80匹だけ預かって解体します。倉庫に案内しますのでこちらへどうぞ。」
青年はそう言ってカウンター奥の扉を開けた。俺はカウンター横から入り、先に進む青年の後に続く。
扉の向こうは作業台が並び、青年は作業台の脇を抜けてさらに奥の扉を開けた。そこには俺のディメンジョンルームの2倍ほどのスペースが空けられていた。
「そちらのスペースを確保しておいたのでそこに出してもらえますか。」
「わかりました。」
俺はそのスペースの端でディメンジョンルームを開く。
「おまたせ。ファイアアントを運び出してくれ。」
俺が声を掛けると中で待機していた3人は魔法、腕力、流動体とそれぞれの方法でファイアアントを運びだし、倉庫に移していく。運び出しはあっという間に終わり、青年がファイアアントをカウントしていく。
「……77、78、79、80。確かに80匹お預かりします。精算は先に80匹分で出しますか?それとも全部終わってから?」
「じゃあ先に80匹分お願いします。」
「わかりました。では明日のお昼頃までには終わらせておくのでそのくらいにまた来てください。」
「はい、じゃあよろしくお願いします。」
俺は預かり証を受け取り、3人を一度ディメンジョンルームに戻してギルドを出た。
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