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第3章 シュルトーリア

ファイアアント殲滅②

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ファイアアントの巣に向けて移動を再開した俺達はその後数回ファイアアントとの戦闘を繰り返し、1時間ほどで巣を見つけることができた。

巣の入り口は斜めに掘られ、多少急だが中に入るのに問題ない程度の傾斜だった。入り口付近は草原の草が刈られ、巣を掘った土が投げ出されているため背の高い草がなく見通しが良くなっている。

「それじゃあ予定通り俺とバラム、ガルドで中に入る。ロアはここで待機して戻ってきたファイアアントが巣に入らないように倒してくれ。あと、冒険者が攻撃してきても反撃しないように。」

今回はベルグさんにも予定を聞いてもらうので念話で話すことをそのまま口にする

「(わかりました。気を付けてくださいね。)」
「心配するな。それと3人はファイアアントを倒すときはなるべく頭とか体を傷つけずに頭を落として倒すようにしてくれ。頭からは蟻酸が、体からは殻が売れるものとして取れるからな。ただ、これはできたら位で無理する必要はない。そのせいで2人がケガをする方が嫌だからな。」
「(うむ、任せよ。)」
「(わかったー!)」
「よし。それじゃあベルグさん、俺達は中に入ります。ロアはここに残していくので冒険者に襲われそうになったら止めてやってください。」
「おう、任せとけ。」
「あと、戻ってきたファイアアントはロアに任せてますけど、ベルグさんもやるんですよね?」
「当たり前だ。そのために来たんだぜ。最近はギルドの書類仕事が忙しくて体を動かす暇がなかったからな、いい機会だ。」
「そうですか。じゃあロアと譲りあってお願いします。ロアもベルグさんが倒しに向かったら無理に参戦しないで任せていいから。」
「(わかりました。)」

ロアはベルグさんによろしくお願いします。というように一度吠えるとペコリと頭をさげた。ベルグさんもそれが伝わったのかよろしくな、といってロアの頭をワシャワシャと撫でまわした。

「じゃぁ行ってきます。」
「おう、気ぃ付けろよ。」
「(いってらっしゃーい。)」

2人に見送られて俺はランタンを手にバラム、ガルドとファイアアントの巣に入っていく。
入り口の急斜を下りきると左右に広がる通路に出た。

「(む、さっそく来たぞ。まだ少し余裕はあるが通路の右の方から足音と臭いが近づいてくる。)」
「(わかった。しかし、よく見えないな……明かりを増やすか。」

俺はガルドに警戒を頼んで小さい魔石をいくつか取り出した。その魔石に光球を作るライトの魔法を付与すると魔石が光球に包まれ辺りを明るく照らす。

俺はそれを左右の壁に一つずつ埋め込むと通路が十分な明かりを確保することができた。

「(よし、じゃあこの魔石を埋め込みながら左の通路に少し行って明るい場所で戦えるようにするぞ。)」
「(うむ、だいぶ近づいている。急ぐとしよう。)」

俺は魔石にライトを付与して壁に埋め込みながら10mほど移動して通路で戦闘できるようにすると最初に魔石を埋めた辺りにファイアアントが見えた。

「カカカカカカッ。」
「(来たぞ。まずはバラムが酸弾で足の付け根を狙って打て。動きが止まったらガルドが突撃だ。)」
「(わかった。)」
「(いくよー。)」

バラムが俺の腕から砲身を伸ばし、酸弾を打ち出すと正確にファイアアントの足を打ち抜いた。
先頭の3匹ほどの足を打ち抜くと後続はその3匹に足を取られて転倒していく。

「(では行くぞ!)」

動きが止まったのを見たガルドが駆け出す。引き抜いた大剣を水平に構えると正面のファイアアントの額に突き出した。

「---!」
「----!」
「-----!」

頭を割られたファイアアントが表現のしようがない音波のような鳴き声をあげて絶命すると他のファイアアントが同じように奇声を発しながら後退始めた。

「(なんだ?)」
「(む、これは……。)」
「(ガルド、なにかあったのか?)」
「(今のとは比べものにならないほどの数が蠢く音が聞こえる。数が多すぎるのと反響で良くわからんがこちらへ向かってきてるのだろう。音からすると100は優に超えるだろう。)」
「(さすがにそれはまずいだろ。一度外に出るぞ!)」

俺達は慌てて埋め込んだ魔石と倒したファイアアントを異空間収納に回収すると入り口の傾斜をよじ登り、外に出た。

「(あれ?どうしたんですか?)」

外に出るとロアが横になってくつろぎ、ベルグさんがファイアアントと戦っているところだった。

「ちょっとまずいことになった。ガルド、ロアでファイアアントが穴から出てきたら倒してくれ。」
「(わかりました。)」
「(わかった。)」
「なんだ、戻ってくるには早すぎるだろ。なにかあったか?」

ファイアアントの首を落としてとどめを刺したベルグさんがこちらにやってきた。

「ちょっと仲間を呼ばれたみたいでファイアアントが大量に寄ってきてるんですよ。」
「あぁ、やっちまったな……。」
「とりあえずガルドとロアに出てくる先から倒すように言ったので今のうちに策を考えます。」
「策っつたって出てきたやつから倒していくしかないだろ。」

ベルグさんが顎で巣の方を指すのでそちらを見るとすでにファイアアントが巣から出てき始めていて、出てきた先からガルドとロアによって頭を落とされていく。

「今はまだあの2匹で十分対処できてるがすぐに全員でかからないと手が回らなくなるぞ。」
「そうなんですけど。」
「第一あれだけの数の殲滅で手っ取り早いのは水責めか火責めだがこんなところでそんな大量の水は用意できねぇし、後で巣の中を確認できなくなる。火責めにしたってファイアアントは火に耐性があるからほとんど効かねぇぞ。」
「ん?火責め?……それだ!」

ベルグさんの出した案に俺は閃いた。というか馬鹿正直に巣に入らずに最初っからこうしておけばと後悔した。

「火責めか?だからほどんど効かねぇって。」
「いえ、ちゃんと策がありますから。」

俺は収納から材料を取り出すと急いで道具を作る。
液体が入った樽に術式と魔石を嵌めるソケットを刻む。それを全部で3つ作る。

「おい、いったいなにを……。」

ベルグさんが何かいってるが今は無視だ。ガルドとロアが倒しているファイアアントから魔石を取り出し、ソケットにはまるように圧縮して形を整えたものを樽に合わせて3つ作った。

俺は樽を異空間収納にしまうとガルドとロアが戦っている巣の入り口に駆け寄った。

「インパクト!」

多めに魔力を込めたインパクトで巣の周りのファイアアントを弾き飛ばす。

「バラム、ガルド、ロア!巣の外に残ったファイアアントは任せた!」

俺が巣の縁に立つとファイアアントが続々と登ってこようとしていた。

「グラビティフォール!」

以前作った空間を上から下に押しつぶす魔法を巣の入り口に打ち込むと巣から出ようとしていたファイアアントたちが巣の中に押し戻されていく。
それを確認すると先ほどの樽を取り出して樽のソケットに魔晶石をセットする。魔石は簡単に外れないに変形させて固定しておく。

巣穴を確認してファイアアントたちが登ってきていないことを確認すると樽を巣に落とす。

「よいしょっと。」

斜めに傾けて樽を巣穴に落とすと少しして巣穴の奥から爆発音が響き、奥が赤く照らされている。
俺は続けて残り2つも同じように魔晶石をセットして投げ入れると今度は鉄鉱石を取り出した。

「よし、今のうちに!」
「(何をしているのだ。)」

ファイアアントの掃討が終わったガルドが寄ってきた。

「これで入り口を一度塞いで巣を密封するんだ。」

俺は取り出した鉄鉱石を精製せずにそのまま変形させて一枚の大きな板を作ると巣にかぶせ、さらに周囲の土を持って入り口を完全にふさいだ。

「とりあえずこれでしばらく待てば大丈夫のはずだ。」
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