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第2章 成長
急な出発
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審判の開始宣言と同時に俺が左腕を一番前にいる大楯を構えた男に向けるとバラムは砲身を伸ばして圧縮した酸弾を飛ばした。
「ぐぁぁ!」
酸弾は盾を貫通すると男の太ももまでも貫き、男はバランスを崩して倒れた。バラムはさらに酸弾を男の両肩に打ち込み盾を持てないようにした。
男の絶叫が響くとガルドとロアが相手に向かって駆け出した。
ロアは剣士の脇を抜け、魔法使いに詰め寄ると爪を立てた前足を横に振り抜く。
魔法使いにロアの一撃を躱せるわけもなく振りぬいた前足は魔法使いの杖と一緒に杖を握っていた右腕を引き裂いた。
ガルドは背負った大剣を引き抜きながら魔法使いの方に気を取られていた剣士詰め寄り、それを一気に振り下ろす。
大剣は剣士がとっさに構えた剣で受け止め、僧侶の子が何かしらの補助魔法を使ったのか剣士の体に薄い光の膜が張られる。
しかし、大剣の重さとガルドのSTRの前に受けた剣は耐えきれずに砕け、剣士の左腕が切り落とされた。
俺は右腕を僧侶の子に向けて突き出すとショックの魔法で僧侶の子を包んで気絶させた。
「そこまで!」
審判の宣言を聞き、俺はロアとガルドを下がらせる。
「(ご主人様、もういいんですか?)」
「(あぁ、審判が決着を宣言したからな。)」
あまりに一方的な結果に試合を見ていた周囲から様々な視線が向けられ、よく聞こえないがコソコソの何かを話しているのが聞こえる。
俺はガルドとロアをディメンジョンルームに戻すと入り口を閉じて、ケガの具合を確認する審判に近づくと命に別状がないこと、俺の勝利に間違いないことを確認して治療の完了を待たずに訓練場を出た。
俺はそのまま総合カウンターに向かい、以前聞いたランクB以上の魔物が出る国の反対側へのルートを確認した。
「それでしたらこちらの地図をお使いください。」
受付嬢がカウンターに置いたのは地形も何も書いていないただ白地図に何か所か点マークが打たれたものだった。
「白地図はギルドで銅貨5枚で販売している物です。こちらの白地図は今朝ギルドマスターからタカシ様にお渡しするように預かったものです。こちらのマークはギルド支部がある街を指しています。」
「ありがとうございます。ですが貰っていいんですか?」
地図や街の位置は重要な情報のはずだ。ギルド支部がある街ならそれなりの規模の街だろう。
「このくらいでしたら問題ありません。位置を示してるだけで地形や道は書き込まれていませんから。それらの書き込みはご自由ですが紛失にはお気を付けください。」
「わかりました、ありがとうございます。すぐに次の街に向かうことにします。」
「すぐですか?旅の支度はきちんとした方がいいですよ。」
「必要なものは少しずつ買って異空間収納に蓄えてありますから大丈夫ですよ。それにさっきの試合でちょっとやり過ぎたので。お互い合意の試合とはいえ逆恨みも怖いですしね。急な出発になるのでお世話になった人に挨拶できないのが心残りですけど」
「そうですか。冒険者宛てでしたらこちらで伝言を預かることもできますよ。」
「それでしたらスコルピオというパーティに伝言を頼めませんか?」
「スコルピオですね。かしこまりました。伝言内容をどうぞ。」
「『ちょっと騒ぎを起こしてしまって居心地が悪くなりそうなので急ですが街を出て予定していた旅に出ます。これまで良くしていただいてありがとうございます。お世話になりました。』とお願いします。」
「……はい、承りました。」
「よろしくお願いします。じゃあ俺はこれで失礼します。」
「はい、お気をつけて。」
俺は一度宿に戻り、連泊を解約するとそのまま街を出た。
門から少し離れたところでディメンジョンルームを開いて3人を外に出す。
「(それじゃあ、次の街に向かうぞ。とりあえず道沿いにずっと行く。)」
俺はバラム、ガルドと一緒にロアに乗ると手綱をしっかりと握る。
「(それじゃあ行きますよ。しっかり捕まっててくださいね。)」
ロアは少しずつ速度を上げて街道を走る。すぐに隣村が見え、そのまま通り過ぎると盗賊討伐で森に入った辺りまで来た。空を見上げると太陽がちょうど真上に来ている。
「(ここらでお昼にしよう。)」
「(わかりました。)」
ロアが少しずつ速度を緩めてゆっくりと止まる。ロアから降りると前々から少しずつ準備しておいた敷物やテーブル替わりの木箱、食器を収納から取り出していく。
「(お昼は宿で少しずつ作り置きしておいたオークステーキだ。)」
「(わーい!)」
「(ふむ、干し肉も買い溜めしていたと思ったが。そちらでなくていいのか?)」
「(あぁ。そっちはいざ食糧が足りなくなった時とか、この間の盗賊の時みたいに保護した人に分け与える用だな。)」
俺は皿にオークステーキを取り出して配膳を済ませるとガルド、ロアと一緒に食事を始めた。ガルドは今では器用にナイフとフォークを使い食事を取れるようになった。
「(うむ、うまいな。)」
「(ただ焼いただけだけどな。)」
「(妻の手作りだということが重要なのだ。)」
食事をしながらガルドのこっぱずかしいセリフに思わず苦笑いする。
「(俺が作ったってだけじゃなくて本当にうまいと思ってもらえるように少し手の込んだものにも挑戦するかな。)」
前世では一人暮らしだったし自炊もしていたから宿や食堂の料理ほどではないがそれなりに料理はできるだろう。
「(それは楽しみだ。)」
「(僕も食べたいです。)」
「(じゃあ、大きな町についたら食材を買い込んで料理してみるか。)」
俺達は食休みを挟んでから移動を再開し、2日目の昼に次の街に辿り着いた。
============================================
あとがき
悩みつつ、勢いで書きつつやっていたら急展開で街を出ることになってしまいました。
正直自分でも書きながら話の展開に戸惑っていますがこれからも読んでいただければ幸いです。
「ぐぁぁ!」
酸弾は盾を貫通すると男の太ももまでも貫き、男はバランスを崩して倒れた。バラムはさらに酸弾を男の両肩に打ち込み盾を持てないようにした。
男の絶叫が響くとガルドとロアが相手に向かって駆け出した。
ロアは剣士の脇を抜け、魔法使いに詰め寄ると爪を立てた前足を横に振り抜く。
魔法使いにロアの一撃を躱せるわけもなく振りぬいた前足は魔法使いの杖と一緒に杖を握っていた右腕を引き裂いた。
ガルドは背負った大剣を引き抜きながら魔法使いの方に気を取られていた剣士詰め寄り、それを一気に振り下ろす。
大剣は剣士がとっさに構えた剣で受け止め、僧侶の子が何かしらの補助魔法を使ったのか剣士の体に薄い光の膜が張られる。
しかし、大剣の重さとガルドのSTRの前に受けた剣は耐えきれずに砕け、剣士の左腕が切り落とされた。
俺は右腕を僧侶の子に向けて突き出すとショックの魔法で僧侶の子を包んで気絶させた。
「そこまで!」
審判の宣言を聞き、俺はロアとガルドを下がらせる。
「(ご主人様、もういいんですか?)」
「(あぁ、審判が決着を宣言したからな。)」
あまりに一方的な結果に試合を見ていた周囲から様々な視線が向けられ、よく聞こえないがコソコソの何かを話しているのが聞こえる。
俺はガルドとロアをディメンジョンルームに戻すと入り口を閉じて、ケガの具合を確認する審判に近づくと命に別状がないこと、俺の勝利に間違いないことを確認して治療の完了を待たずに訓練場を出た。
俺はそのまま総合カウンターに向かい、以前聞いたランクB以上の魔物が出る国の反対側へのルートを確認した。
「それでしたらこちらの地図をお使いください。」
受付嬢がカウンターに置いたのは地形も何も書いていないただ白地図に何か所か点マークが打たれたものだった。
「白地図はギルドで銅貨5枚で販売している物です。こちらの白地図は今朝ギルドマスターからタカシ様にお渡しするように預かったものです。こちらのマークはギルド支部がある街を指しています。」
「ありがとうございます。ですが貰っていいんですか?」
地図や街の位置は重要な情報のはずだ。ギルド支部がある街ならそれなりの規模の街だろう。
「このくらいでしたら問題ありません。位置を示してるだけで地形や道は書き込まれていませんから。それらの書き込みはご自由ですが紛失にはお気を付けください。」
「わかりました、ありがとうございます。すぐに次の街に向かうことにします。」
「すぐですか?旅の支度はきちんとした方がいいですよ。」
「必要なものは少しずつ買って異空間収納に蓄えてありますから大丈夫ですよ。それにさっきの試合でちょっとやり過ぎたので。お互い合意の試合とはいえ逆恨みも怖いですしね。急な出発になるのでお世話になった人に挨拶できないのが心残りですけど」
「そうですか。冒険者宛てでしたらこちらで伝言を預かることもできますよ。」
「それでしたらスコルピオというパーティに伝言を頼めませんか?」
「スコルピオですね。かしこまりました。伝言内容をどうぞ。」
「『ちょっと騒ぎを起こしてしまって居心地が悪くなりそうなので急ですが街を出て予定していた旅に出ます。これまで良くしていただいてありがとうございます。お世話になりました。』とお願いします。」
「……はい、承りました。」
「よろしくお願いします。じゃあ俺はこれで失礼します。」
「はい、お気をつけて。」
俺は一度宿に戻り、連泊を解約するとそのまま街を出た。
門から少し離れたところでディメンジョンルームを開いて3人を外に出す。
「(それじゃあ、次の街に向かうぞ。とりあえず道沿いにずっと行く。)」
俺はバラム、ガルドと一緒にロアに乗ると手綱をしっかりと握る。
「(それじゃあ行きますよ。しっかり捕まっててくださいね。)」
ロアは少しずつ速度を上げて街道を走る。すぐに隣村が見え、そのまま通り過ぎると盗賊討伐で森に入った辺りまで来た。空を見上げると太陽がちょうど真上に来ている。
「(ここらでお昼にしよう。)」
「(わかりました。)」
ロアが少しずつ速度を緩めてゆっくりと止まる。ロアから降りると前々から少しずつ準備しておいた敷物やテーブル替わりの木箱、食器を収納から取り出していく。
「(お昼は宿で少しずつ作り置きしておいたオークステーキだ。)」
「(わーい!)」
「(ふむ、干し肉も買い溜めしていたと思ったが。そちらでなくていいのか?)」
「(あぁ。そっちはいざ食糧が足りなくなった時とか、この間の盗賊の時みたいに保護した人に分け与える用だな。)」
俺は皿にオークステーキを取り出して配膳を済ませるとガルド、ロアと一緒に食事を始めた。ガルドは今では器用にナイフとフォークを使い食事を取れるようになった。
「(うむ、うまいな。)」
「(ただ焼いただけだけどな。)」
「(妻の手作りだということが重要なのだ。)」
食事をしながらガルドのこっぱずかしいセリフに思わず苦笑いする。
「(俺が作ったってだけじゃなくて本当にうまいと思ってもらえるように少し手の込んだものにも挑戦するかな。)」
前世では一人暮らしだったし自炊もしていたから宿や食堂の料理ほどではないがそれなりに料理はできるだろう。
「(それは楽しみだ。)」
「(僕も食べたいです。)」
「(じゃあ、大きな町についたら食材を買い込んで料理してみるか。)」
俺達は食休みを挟んでから移動を再開し、2日目の昼に次の街に辿り着いた。
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あとがき
悩みつつ、勢いで書きつつやっていたら急展開で街を出ることになってしまいました。
正直自分でも書きながら話の展開に戸惑っていますがこれからも読んでいただければ幸いです。
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