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第2章 成長

魔法訓練

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俺達が宿に戻ってきたのは夕食の終了時間ギリギリになってしまっていた。

本を読み始めると止まらず、6時の鐘がなってから大分たってからガルドに肩を叩かれてもう遅い時間になってることに気付いた。

それから急いで宿に戻り、夕食食べて今は一息ついたところだ。

それでもギルドで読んできた本はとても有用だった。

魔法基礎の本で知った有用な情報は、魔法というのは3つに分類されること。

あらかじめスキルに内包されていて、スキルレベルに応じて使えるようになるスキル魔法。
スキル魔法をアレンジして発動するアレンジ魔法。
スキルから得られる知識を使用して自身で術式を組んで使用するオリジナル魔法だ。

実は俺はスキル魔法もアレンジ魔法もすでに使用していた。

スキル魔法の異空間収納は 目の前20cm程の穴を地面に垂直に開ける魔法だ。

俺が使っているように穴の大きさを広げたり、穴の位置、向きを変えるのはアレンジ魔法にあたる。

「そうなると今度はオリジナル魔法だよな。」

俺は空間魔法の本の内容を思い出す。

オリジナル魔法といってもスキルに内包されていないというだけである程度のものは公開され、こういった本に情報が載せられている。

本当に個人、または特定の集団が開発し、公開していない魔法は秘匿魔法と言うそうだ。

 「使えそうなのはインパクト、ショック、ディメンジョンカッター位だったか。」

インパクトは空間を押し出して、ショックは空間揺らして衝撃を与える魔法だ。どちらも衝撃を与える魔法だが違いはイメージできる。インパクトは殴られるような、ショックは激しく揺さぶられるような衝撃があるのだろう。

ディメンジョンカッター一瞬だけ空間をずらすことで切りつける魔法だ。

ちなみに空間魔法のスキルレベル3でディメンジョンルームという異空間の部屋を開く魔法があることがわかった。
 
「収納は異空間収納なのに部屋はディメンジョンルームなのは何でだろうな……。」

俺は明日、魔法の検証を行うことにして、今日はもう寝ることにした。




翌朝、俺は宿を出る前に銀貨4枚払って今の部屋を更に2日借りることにした。
 
宿を出るとギルドで買取の精査を済ませ、早々に森に向かった。

今日はギルドカードにガルドが載っていることもあり、森まで乗せてくれる馬車はすぐに見つかった。

今は馬車を降りて森の端に立ったところだ。

「ここ数日でかなり金を使って、蓄えがほとんどなくなったから今日は稼がないとな。」

宿代にガルドの装備で俺の蓄えはすっからかんになっていた。俺がぼやくとガルドが肩に触れ、念話で尋ねてくる。

「(何かあったか?)」
「(いや、頑張って稼がないとなって話だ。)」
「(そうか。すまない、装備を揃えてもらったから……。)」
「(それは気にしなくていい。必要な物だからな。森だと横に振れなくて戦いにくいだろうけど頑張ってくれ。)」
「(うむ、任せておくがいい。戦いだけでなく、臭いを追って獲物を探すことも出来るからな。)」
「(バラムもがんばる!)」
「(あぁ、二人とも頼りにしてるよ。)」

俺達はガルドの鼻を頼りに森に入っていく。

「(……いたぞ。)」

ガルドガルド藪の前で身を屈める。見つからないように藪の向こうを覗き込むと2匹のオークがいた。

「(試してみたい事がある。ガルドは合図したら右の奴を頼む。)」
「(うむ、わかった。)」 

俺は拳大のインパクトの魔法を組み立て、発動させずに待機させる。そして、オークがこちらを見ていないタイミングを見計らう。

「(今だ!)」
「ブフゥー!」

ガルドが素早く飛び出し鳴き声を上げ、右のオークに向かって大剣を振りかぶる。

俺もガルドに続き、やぶから飛び出すと左のオークに向けてインパクトを発動する。すると、オークの目の前に魔方陣が現れ、空間が歪んだ瞬間、こちらに気がついて振り向いたオークの頭部に命中する。

オークは突然の衝撃に体を大きく仰け反らせて後ろに倒れた。俺は素早く距離を詰め、その首に剣を突き立てる。

「ブヒィ……。」

オークは短く鳴き、そのまま絶命する。

「奇襲にはうってつけだな。」

ガルドの方を見ると、頭を割られたオークが足元に転がっていた。ガルドはオークの死体をそのままにこちらに向かって来る。

「(怪我はないか?)」
「(大丈夫だ。ありがとう。)」

俺は2体のオークを収納する。

「(この辺で隠れてればまた何か寄ってくるかもな。)」
「( うむ、隠れてしばし様子を見よう。)」

俺達は木の幹の影に隠れて休む。30分程してガルドが反応する。

「(来たな。この臭いはブラックウルフか。)」

ガルドの鼻がピクピクと動く。

「(やつらは群れを作るから数が多くなるかも知れないな。)」
「(それならもう一つ実験させてくれ。今度は俺が先に魔法を放つ、上手くいけば数匹気絶させれられる。)」
「(わかった。任せよう。やつらは……ちょうど血溜まりの向こうから来る。こちらが風下だ、臭いでは気づかれないだろう。)」
「(わかった。)」

今度はショックの魔法を少し範囲が広くなるように組み立て待機させる。

「(近いぞ。もう見えるはずだ。)」

ガルドの警告に前方を注意して待つ。

「(見えた!もう少し引き付けるぞ。)」
「(うむ。)」

前方から3匹、その後ろに2匹のブラックウルフが見えた。俺は術の発動位置を見定め、そこにブラックウルフが入るのを待つ。

ブラックウルフは辺りを警戒しているのかゆっくりと近づいてくる。

そいて、先頭の3匹が術範囲に入ったのを確認して発動させる。

「ショック!」

体から大量のMPが抜ける感覚と共に3匹のブラックウルフの中央から足元に魔方陣が広がり、3匹をその範囲に捉えると空間がぶれる。

そして、3匹はその場で力無く倒れ、痙攣する。それを見た後ろの2匹はこちらを警戒して唸る。

俺は俺はショートソードを抜き、構えるとブラックウルフが警戒して近づいて来ないことから次の魔法を組み立てて発動する。

「ディメンジョンカッター!」

放ったディメンジョンカッターは1匹の首を切り落とした。

俺は魔力が抜ける感覚に膝をつく。それを見た最後の1匹が距離を詰めて飛びかかってきた。それに俺は腕をつき出す。

「(バラム、酸弾だ!)」
「(はい!)」

バラムは飛びかかってきたブラックウルフに酸弾を放ち、それは
ブラックウルフの口内に消え、体内から体を溶かした。

ブラックウルフはしばらく悲鳴を上げてもがくと血を吐いて倒れた。俺はそれを確認して背後のガルドに近づいて触れる。

「(じゃあ気絶させたブラックウルフをこっちに連れてきて、止めを指してくれるか?)」
「(わかった。)」

ガルドはブラックウルフを抱えて持って来ると先に倒した2匹と一緒に大剣で頭を落とし、血抜きをした。俺は血が抜け切ったのを確認するとブラックウルフを収納に収める。

「(妻よ、大事ないか?)」
「(ご主人さま、大丈夫?)」

ガルドが俺の肩に触れ、バラムと一緒に心配してくれる。

「(大丈夫だよ。ありがとう。次の獲物を待つ間に少し休憩しよう。)」
「(うむ、その方が良いだろう)」
 
俺達は先ほどの木の影でしばらく休憩することにした。
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