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第1章 転生

準備

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「いらっしゃいませ。」

俺がバラムを抱えて店に入ると、例のたくさんいるという弟子のひとりだろうか、カウンターから頼りなさそうな若い男が声をかけてきた。

「どういった物をお探しでしょうか?」
「昨日、冒険者登録したばかりなんだ。あまり手持ちはないんだが、最低限の鎧だといくらくらいするかな?」
「鎧ですね。可能な限り安いもですと皮製になります。胴体のみを保護する物ですと銀貨1枚、心臓を守るだけの胸当てでしたら大銅貨1枚です。肩当てがついているタイプは少し高くなって銀貨1枚と大銅貨1枚です」

俺は皮製にもかかわらず、それなりのに驚く。

「結構するな……。だが、背に腹は代えられないか。」

バラムが前に出て戦っている間、俺が安全とは限らない。最低限、防具と武器が必要な俺はこの後武器を買うことと数日分の生活費を考えて皮のベストの購入を決めた。

「胴体を保護する物をくれ。」
「かしこまりました。では、サイズを確認しますね。失礼します。」

男はそう言って肩周りや胴周りを指で測っていく。

「お客様の体型ですと、こちらのサイズになります。着てみてください」

男は測り終えると裏から同じ型で若干細い鎧を取り出す。
俺はバラムを降ろすと鎧を受け取り、頭からかぶるように鎧を着ると体をひねったり、腕を回してサイズを確認する。

「ピッタリだな。体を動かしてもずれないし、腕を振っても邪魔にならない。」
「ありがとうございます。では、銀貨1枚になります。」

俺は銀貨1枚を払うと、鎧を着たまま店を出て、隣の武器屋に向かった。



「いらっしゃい!」

防具屋とは打って変わって武器屋のカウンターには元気のいいお兄さんがいた。

「何をお探しですか!」
「初心者にも扱いやすい物で。ただ、手持ちがあまりないんでなるべく安いものを探している。」
「それでしたら、そこの樽にさしてある剣が一律で銀貨2枚になります。」

俺は樽の中の剣を1本ずつ確認して手ごろな長さの剣を選んでカウンターに置いた。

「これを。あとこいつを帯剣できるベルトかなんかがあれば欲しいんだが。」
「かしこまりました。こちらのベルトが大銅貨1枚ですが、こちらでよろしいですか。」

俺はベルトを巻いてサイズを確認し、剣を差してバランスを見る。

「あぁ、これで頼む。」

俺は大銀貨をカウンターに置いた。

「では、銀貨2枚と大銅貨1枚のお返しです。」
「ありがとう。」

俺は硬貨をアイテムボックスに入れて店を出た。



「だいぶ使ったからな……。早めに稼がないと」

俺はギルドの掲示板で依頼書を眺める。

「よう、タカシ!これから依頼か?」
「ガッツさん。えぇ、ただどんな依頼にするか悩んでいて。」

声をかけてきたのは昨日も世話になったスコルピオのガッツさんだった。他のメンバーも後ろにいた。

「そんなもん、フォレストベアを倒せるんだから討伐だろ。」
「新人は危険が少ない薬草の採取、納品から始めるものなんだがなぁ……」

ガッツさんが肩を組んでいくつか依頼を指さすのに、アースさんが呆れてた様子だ。

「確かに報酬がいいですね。」
「討伐依頼だと討伐証明部位だけをギルドに収めればいい。それ以外に売れる部位があれば買い取りカウンターで買い取ってもらえるから依頼によってはトータルの儲けはもっと増えるよ。」
「なるほど、この依頼の中でこれから日帰りで狩ってこれそうな依頼はありますか?このあたりの地理も魔物も詳しくなくて。」
「タカシのランクで受けられるもので地理に疎いとなると、こいつ位だな。」

ガッツさんは一枚の依頼書を掲示板から剥がして手渡してくれた。

討伐依頼
討伐対象:ゴブリン5体以上
報酬:5体で大銅貨1枚、それ以上は1体につき銅貨10枚
討伐証明部位:右耳

「ゴブリンと言うと背が低くて緑色の?」
「それだ。やつらはどこにでもいて、すぐ増えるからゴブリン討伐の依頼は常に出てる。これなら街のそばの林でも討伐できるからな。」
「ゴブリンに売れる部位はありますか?」
「不味いが一応肉が食えるから買い取ってもらえる。ただ2匹で銅貨一枚にしかならんから運ぶ手間もかかるし大抵は耳だけ切り取って捨ててくるな。まぁ、タカシならアイテムボックスに要れてくればいいから持って帰ってくればいいだろう。」
「わかりました、ありがとうございます。この依頼受けてみます。」
「おう、気をつけて行けよ。」

俺はカウンターて剥がした依頼書の依頼を受けると街を出た。
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