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第1章 転生

スコルピオ

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「おーい!大丈夫かー。」

遠くから人の声が響く。辺りを警戒していると、茂みから4人組の男が出てきた。

「おう、にぃちゃん、すげぇ鳴き声と地響きが響いてきたが大丈夫だったか?」
「あぁ、熊が出たんだが、もう倒した。」

腰に剣を携えた男が話しかけてきたので、俺は後ろに合った熊の死体を指差して言った。

「こりゃ、フォレストベアじゃないか。よく倒せたな。」
「なに、俺にはこいつがいるからな。」

俺は抱えていたバラムに腕を伝ってそこに乗るように指示すると腕を突きだした。するとバラムは肩移り、そこから伝って腕に乗った。

「おまえさん、テイマーか。しかし、スライムにフォレストベアが倒せるとは思えないが。」

今度は腰に短剣を着けた男が前に出てきた。

「何、こいつは特別でな。強い酸を吐くんだ。一度逃げて追いかけてきたところを振り向き様に顔に酸をかけたんだ。それで怯んだところで顔に取りついて耳から頭に入ったら中を酸で溶かして終わりさ」
「えげつねぇな。」
「君はそのフォレストベアを持って帰れるのかい?」

短剣の男が呆れていると大盾を背負った男が話しかけてきた。

持って帰る方法を考えたところ、すぐに空間魔法スキルから異空間収納の知識が引き出された。

「空間魔法が使えるのでなんとかなりそうです。」

俺は、空間魔法スキルに意識を集中すると熊の下の地面に異空間収納の穴を開けた。
熊は重力に従い、異空間収納の穴に落ちていく。熊が完全に収まったところで俺は体から何かが一気に抜けていくのを感じて気を失った。


-------------------------------------------------- 


俺はガタガタと地面の揺れで目を覚ました。

「ここは……」
「目ぇ覚めたか。できもしないことやって倒れやがって」

辺りを見渡すとどうやら馬車の中のようだ。
すぐに声をかけてきた男を見ると倒れる前に会った4人組の1だった。そばに弓と矢がおいてある。

「あっ、運んでくれたんですか?ご迷惑をお掛けしてすみません。」
「ふんっ!」
「気にするな。あれだけの獲物だ、無理してでも運びたいのも分かる」

隣に座っていた剣を携えていた男がフォローしてくれた。

「助けてくれてありがとうございます。タカシっていいます。」
「俺たちは冒険者パーティースコルピオ。リーダーのガッツだ。」

フォローしてくれた剣の男が握手を求めてきたのてそれにこたえる。

「そっちの短剣使いが斥候のアース、大盾使いがタンクのマストだ。」
「よろしくな。」
「体調はどうだい?」

アースが片手をあげ、マストが体調を心配してくれる。

「よろしくお願いします。体調はもう大丈夫です。」
「それで、こっちの弓使いがカイだ。」
「ふん。いきなり倒れられて良い迷惑だ。」
「すみません」
「気にすんな。カイだって口は悪いが、本当は心配してんだ」
「アース、てめぇ!」
「まぁまぁ、目の前で倒れたら心配するのは当たり前なんだから。カイも素直に心配すればいいのに。」
「ふん、」

カイさんはこれ以上言っても居づらくなるだけだと思ったのか鼻を鳴らしてそっぽ向いてしまった。
 


それからカイさんと気まずいまま程なくして馬車が止まった

「おっ、着いたな」

スコルピオのメンバーが馬車から降りるので俺もあとに続いて降りるとそばには高い壁がそびえ立っていた。

「ガッツさん、ここは?」
「ん?さっきの森から一番近い、ウェルズって街だが、お前さんはここから来たんじゃないのか?」

わざわ街まで送ってくれたのか。

「いえ、田舎の村から出てきたばかりで、森で迷ってたんです。街まで送ってもらえて助かりました。」
「そうか、それなら良いが。」
「街に入るのに入市税がかかるがタカシは金あるか?」
「えっ!入るのにお金が掛かるんですか!」

俺は転生したばかりで無一文だ。

「実は無一文なんです。街で売れそうな物をと思って森に入ったんですけど収穫はあのフォレストベアだけですし。」
「それがあれば十分だ。俺が立て替えよう。」

ガッツさんが提案してくれるが、さすがにそこまで甘えるわけにはいかない。

「そんな、ここまで助けて貰ったのにそこまでしてもらう訳には。」
「気にすんな。ここまで助けたんだ、そこまでしたってかわんねぇよ。それにそのまま冒険者ギルドまで一緒に行ってそのままフォレストベアの買い取りしてもらえばいいからな。」
「冒険者ギルドで買い取りしてもらえるんですか?」
「あぁ、タカシの村にはギルドの支部がなかったのか?」
「えぇ、なにもない小さな村でしたから。」
「それならタカシ君はギルドに登録してないよね?」
「はい。」
「それならタカシ君もギルドに登録したらどうかな?魔物と戦うこともあって危険だけどフォレストベアが倒せるならそれなりの稼ぎが期待できるよ。」
「なるほど、いいですね。フォレストベアを売ったら登録してみます。」
「じゃあそれで行こう」

俺はスコルピオのあとに続いて街に向かった。




 
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