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1、双極の戯言

下女の剣幕⑴

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肌触りの良いリネン。寝心地の良い清涼感が、この夏の蒸し暑さには心地よい。





「....起きろ、女。」




ここは、かの有名な名家【榑林】の御屋敷の一つでございます。


一族末端に位置する、次期後継者の双生児は、密かにこの山奥の屋敷で暮らしておりました。



そしてある日現れたメイド【藤 夏芽】は、ご主人様である双子の片割れと共に、床に着きすやすや吐息を立てていたのである。



全裸の男は、メイドを抱き締めながら顔はニヤけている様にも取れる。


そんな二人を見下ろす男もまた....全裸である。






いくら不可抗力の範疇とは言えど、勤務時間に爆睡をこく娘は、この屋敷で夏芽だけであろう。



「....いい加減にしろ。」



天真は夏芽の額目掛けて、指を弾いた。









夏芽の夢の中を覗いてみると、それは広大な向日葵畑で虫網を持つ白いワンピースを着た幼い少女が、走り回る光景だった。



真夏の日差しが照りつける最中、麦わら帽子を被って、一心不乱に虫を追いかける幼気な少女。



その娘の表情は、終始笑顔で溢れていた。





「あはは...きゃはは....」





そんな少女の背後を追いかける男の子が二人。




「待って!!」と少女の少し後ろに居る、見るからに体力など皆無そうな小太りの少年A。そしてその背後で顔を真っ赤にさせて息絶え絶えで付いていくので精一杯な貧弱少年B。





少女は、少年たちを気にもせず、ただひたすらに突っ走るのみである。















―――――「....いい加減にしろ。」




突如向日葵畑が真っ暗闇に包まれて、楽しい夢はそこで終わった。




瞼を勢いよく開けば、一番初めに目に入るのは、立派な成人男性の性器であった。





「.....え?」




爆睡の末、顔面の目の前に聳えたつ男の体。楽しい夢を見ていたら突如呼び戻されて、一番最初に目にするのがブツだったもので、動揺してしまうのも無理はない。


幻じゃないだろうかと、何度も瞬きを繰り返すが現実だった。


額に感じる微弱な痛みは、気の所為なのだろうか....いいや、絶対に目の前の男の仕業に違いない。夏芽の意識は額と目の前の物とを行き来する。






「いつまで寝てる気だ。」


「え、嗚呼....すみません.....。」



いまいち状況がつかめない。



背後で未だ吐息を立てる男。夏芽は記憶を辿る。



朝いちで、執事からの辞令により蒼真坊ちゃまの専属メイドに配属された。そして起こしに来たが....





まさかそのまま一緒に寝てしまうだなんて、富んだアホだ。






切長の鋭い眼孔が、夏芽を見下しながら急かす様に上下する。



危機を感じた夏芽は、慌ててベッドから出ようと試みるが、腹部に回された腕によって阻まれてしまった。



逃げようものなら、縛り付ける。



「あはは....可笑しいな~。」


「何してんだ。」



と、問われましても、寝てるであろう蒼真の腕が離してはくれない。寧ろ力は強まる。



目の前には獰猛そうな獣。背後には有難迷惑な砦。



そして、嫌でも当たる吐息と物。



むくりむくりとそれは、夏芽のお尻へと押し当てられていた。



「蒼真起きろ、もう昼だ。」


「んん....無理っ。」



天真が声を掛けてみれば、返事が返ってきて、夏芽はあっけらかんと口を開けて静止した。


それは、目を閉じてるだけで、完全に寝ている訳では無いと確信したからだ。




「蒼真坊っちゃま....?お手を離して頂いても宜しいでしょうか?」



「無理に決まってるじゃん。逆にこのままバックから挿れたいんだけど。」



「ヒィイッ‼︎」



突如、スカートの中へと手を忍び込ませた蒼真は、タイツと下着が阻む秘部へと潜り込ませた。




羽交締めで弄られ、踠き苦しむ夏芽は、自身が発する嬌声に天真もが反応している事に気付いていた。


窮屈な中で溢れ出た愛液が、蒼真の指と絡まって厭らしい音を立てる。


「...ぃやぁ....ぁっ。」



兄に乱され、弟に傍観されるこの光景は、羞恥心を沸き立たせてていた。




夏芽の秘部を解しながら、蒼真はみるみるうちにタイツを引き抜いていく。





「天真も見る?」




兄はニタリと笑い、夏芽のスカートを捲し上げると、自身の指が収まった秘部を弟の前で晒したのだ。



銀の糸を纏わせながら、抜き差しを繰り返す蒼真は、天真の顔を見ながら....いや、見せつけている様にも取れた。





ふわりと脳天が白くなり掛けると、分かってやっているのか蒼真は動きを止めて、果てる事を阻止する。



「嗚呼、もどかしくて気持ち悪い?」




夏芽は涙目を浮かべ、視線は何処を向いているのか、意識が朦朧としながら、辛うじて呼吸を繰り返す。



「いい加減、いかせてやれよ。」


「それじゃつまらないだろ。」



兄弟間で交わされるのは、会話だけでは無い。




夏芽が見えていない二人の視線は、今にも喧嘩が勃発しそうな程に、ばちばちと火花が散っていた。





彼等は暫く睨み合ったかと思えば、直ぐにそれも納まる。



天真は鼻で笑うと、「まだ壊すなよ。」と言い放つ。



夏芽を囲う砦に完敗と言った様子を浮かべて、興味を無くした様に顔を逸らすと、クローゼットの方へと向かって行った。





未だ指は、夏芽の中に入ったまま。けれど蒼真の視線の先には天真の後姿だけを捉えており、その姿が見えなくなると不服そうに意識を戻した。






「ごめん、夏芽。苦しいだろ?今、いかせてあげる。」




少しでも蒼真の手が動けば、直ぐに果ててしまう境地に居る夏芽。


焦らした所為か、余り気持ちよさそうでは無かった。



ただ自分の意思とは反対に、秘部は虚しくヒクつくのみ。




すっかり夏芽の愛液を手に纏わせた蒼真は、ゆっくりと引き抜くと、ぐったりと倒れる夏芽を残してベッドから去って行った。








取り残された夏芽は、呼吸が落ち着くまでの間、暫くその場で横になっていると、服に着替えた天真がベッドの側へと寄って来た。




「起きろ。腹減ってんだ、早く持って来い。」




カーテン越しに声を掛けられて、夏芽は虚ろな瞳で、そのシルエットを捉えるが....。



姿形、声までもが似てしまっているが、言動で間違いなく天真の方だと確信し、彼女は身体に鞭を打ちながら起き上がった。



脱がされた下着とタイツを握り締めて、ベッドから降りる為にレースを握り締めれば、少し開いた隙間から天真と目が合ってしまった。




「申し訳ございません。」



酷く低い声を発しながら、不機嫌に頭を少し下げて立ち去ろうとする夏芽。天真は咄嗟に細い手首を掴み引き留めてしまった。






「何ですか....。」


「下着くらい履けよ。」


「あ.....。」




見つめる先には、色気もへったくれも無いベージュのパンツ。


言われて気付く、しもの爽快感。夏芽は一気に顔を真っ赤にさせると、天真は呆れた様子で溜息を吐きながら手を離した。


慌てながらも、素早く履く様子は手練れ者だ。






・・・“ただのメイド”の特技を披露されたみたいだ。





走り去っていく夏芽を見ながら、天真は声を出し笑い転げていた。





夏芽が坊っちゃま方のお部屋で寝ていた時間は、数時間余り。


天真が痺れを切らすのも頷ける、キッチンへと急いでやって来た夏芽は、メイドたちが坊っちゃまのであろう豪勢な朝食を食べている光景を目の当たりにする。



「あら、夏芽ちゃんも食べる?」


スライスされたフランスパンにてんこ盛りのジャムを塗って、口に運ぼうとするお局メイド。


シンク側の調理台の上には、数種類の惣菜にスープ、籠に入ったパン。



時計を見れば、時刻はとっくに昼過ぎ。





「坊っちゃま起こすの失敗したでしょ。」


「う"ぐ.....その通りです。」




まんまと眠りに誘われました。だなんて口が裂けても言えない。


そして、身体の関係も持ってしまってるなんて事は、以ての外だ。



「ほらほら、折角だから食べましょう。」



目の前には豪勢な食事、随分と冷めきってはいるが、食い意地は人一倍ある夏芽は、流れで食事を摂る。




....なにか忘れてはいないか?











「....あのやろう遅過ぎる。」





坊っちゃまは腹を空かせながら、メイドの戻りを待っておりました。






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