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2話

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ウィリアムと結婚してから早くも半年が経過していた。その間に自宅で顔を合わせたのは数回のみ。

初夜を拒否されてから初体験も未だに、偶に近況を聞きに来る義両親の前では、流石の夫も嘘を並べた。

私の両親が訪ねてくる際は、何かと理由をつけて不在にし、私だけが攻め立てられる。



「クソ女・・・出世の為に、また股を開いたのか?」


職場ですれ違い様に言われた言葉に、私は少しだけ動揺した。

気にしないと決めたのに、そうやって意識するだけで、自分が実は気にしていたのだと気付かされる。


確かに最近出世はしたが、然るべき順序を果て公正な評価を得たまでであり、ウィリアムが言う『売女』という言葉は、私には当て嵌まらない。

遂に私は、夫を部下にした訳だが・・・


「真っ当な仕事をする気がないのならクビにしなくてはならないのだが・・・」


やる気がない奴は要らない。それはどんな職場でも同じだと思う。使えない奴に給金を支払うことは無駄なのだ。


私のことが大嫌いなばかりに・・・屈辱的なのだろう。


どういう訳か頑なに結婚した事実を認めようとはしない夫。

出来れば不貞でも働いてくれれば良いのにと、密かに身辺調査を依頼したが、その様な気配は無し。

私が関わらない仕事は完璧に熟し、露骨な嫌がらせとも取れる言動と行動。

言質を取ろうにも、夫の方に勝算があるのは目に見えている。


「・・・チッ。調子に乗んな、はい。すみませんでした。以後気を付けます。」


その時はクビになるまいと渋々と謝罪したウィリアムだったが、私との関係性が良くなるわけでもなく、ただ最低限の仕事だけをする部下が、顔を合わせる度に私を罵ってくるだけ。


そんな日々が膠着して後戻りなど出来なくなっていた。


好きの反対は嫌いではない。正解は無関心なのだと誰かが言っていた。


ただ、ウィリアムに関しては、それに当て嵌まらないと思うのだ。


嫌い、大嫌い、消えてしまえばいい、消えろ、死ねばいいのに、死ぬのはいつだ?死んだら清々する。死ね。


とてもじゃないが、こんな卑劣な言動で脅かしてくる男が自分の夫だと私も認めたくはない。




「———・・・レミリア、お前もしや避妊薬を飲んで流しているのでは?」

その日は、夫と共に実家を訪れていた。義姉が第一子を出産し落ち着いたこともあり、食事会が執り行われたのだ。

隠居なさる筈だった父が、未だ疑いを掛けてくるので、私も流石に堪忍袋が限界だったのだろう。



「は?・・・避妊薬?笑わせてくれますね。そんなもの使う予定無いです。」

「ならば、タネ無しなのか!」


矛先が隣の夫へと向く、そこでやっと奴が反応を示した。頭に血が上ったのか怒りを露わに否定し始めた。


「違います!私は正常だ。」



それは私に異常があると言っているのと同じなのだよ・・・。


もう駄目だ。これ以上は、壊れてしまう。


私の表情は凍てついた。


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