3 / 3
お嬢様視点
しおりを挟む私の産みのお母様は、私がもっと小さい頃に亡くなったと聞きました。
でも私はさみしくありません。
だって、私にはお母様がいるのですから。
お母様が家にやってきたのは、私がまだとっても小さかった頃のことです。
にこやかな笑みを浮かべるお母様はとってもきれいでしたし、私の目線に合わせてしゃがんでくれたことがとっても嬉しかったことを覚えています。
何をするのも全てお母様と一緒にやってきました。
お母様は優しくて、怒る時も何故怒ったのかその理由をわかりやすく教えてくれました。
私がもう少し成長してからは、淑女教育ということで姿勢改善や歩き方など、早くに身に付けた方がいいことからやっていきました。
ある日の事、お父様が王子殿下の婚約者候補として私を推薦したいと言いました。
“王子殿下”というものは絵本の中と“お母様のお話し”でしか知りませんが、シゴデキ男かダメ男のどちらかだとお母様は言っていました。
シゴデキ男は仕事が出来る男という意味で、殿下がシゴデキならば才能に溢れて民を引っ張っていくことが出来るとお母様が言っていました。
それでも恋愛面としてはお母様曰く、「仕事が出来ても妻を愛さない男はNGよ。絶対選んではいけないわ」といっていました。
そしてダメ男については、最近お母様が教えてくれました。
なんでも五十年くらい前に隣国であった話で、とても優れた婚約者がいた王子様は、令嬢のその才能に嫉妬し、いつしか婚約者に対して憎しみを抱くようになり、女性として見れなくなったそうです。
そして婚約者である令嬢とは全く正反対の、勉強も遮光も全く出来ない令嬢と恋に落ち、そして婚約者の令嬢に在らぬ罪を着せて断罪しようとしたというもの。
「ひどい人!」と私は憤慨したものですが、お母様はにこりと笑って話をつづけました。
やっぱり令嬢は王子殿下よりも優れた人で、断罪を事前に予知し冤罪を証明。
そして民を率いる王族にあるまじき行為をしてきた王子殿下の行いを、王族についている影を利用して次々と公開。
ただの婚約破棄をするのではなく、王子だったその人から王位継承権をなくし、そして王子と浮気していた令嬢の両方から慰謝料をがっぽりととってみせる手腕を見せ、更に王妃教育の中才能を発揮していたご令嬢を逃したくないと考えた王様から、高位な役職を与えられたとか。
私と同じ女性なのに凄い!と感心しスッキリポイントの高いお話しではありましたが、この王子殿下がダメ男として代表例だとお母様は言っていました。
人の才能を恨み、そのくせプライドは高く、そして女性を下見るような男。
勿論お母様は「そんな男なんてニアちゃん_私の愛称_の視界にも入れる価値ないから!」と言っていました。
この国の王子殿下がどのような人柄なのかはわからないけれど、お母様の言うとおり例え優れた男性であっても妻となる人を放置されるならば、そんな男性との婚姻はそもそも望まないと私も同意見です、
だから私は恋愛結婚がいいと、自分の意思を伝えたの。
そうしたらお父様もわかってくれて、王子殿下への婚約者候補として推薦しなかったと教えていただいたわ。
そして季節が何度か変わり、そして繰り返したある日のこと。
私はお母様と共に出掛けていて、その時一人の男性と出会ったの。
闇のような漆黒の髪の毛は短く切りそろえられていて、不機嫌かとも思えるような表情はあまり変えることがないだけで、とても整っている男性の方。
目の色はまるでルビーを思い起こさせる程綺麗な赤色で、私は目を奪われましたわ。
もしかしたら時間が止まったのかと、そう思えるほどに見つめていたのかもしれません。
その男性の方は騎士を目指していて、どちらも社交界にいない為、接点は当然のことながらありませんでした。
ですがそんな私でも、お母様のアドバイスを受けて、必死にアプローチをしたの。
手紙を書いて、姿は見えなくとも差し入れをして。
そしてやっと呼びかけに答えてくれるようになってからは、二人でデートをしたの。
幸せだった。
ううん。
今でもとっても幸せで、恋愛結婚って本当に良いものだと思っているわ。
あの時王子殿下との婚約者候補として頷かないでよかったと、お母様がお父様に反対してくれてよかったと、本当に思っているの。
だからこそ…、なのかしら?
私はお母様にも幸せになってほしいと思っているのよ。
ねえ?お母様?
そろそろお父様の熱のこもった視線に気づいていない振りはお止めになさらない?
じゃないと、今度は私がお父様の味方に付いて、……ふふ。
私はお母様もお父様も大好きなんです。
68
お気に入りに追加
63
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
拾った仔猫の中身は、私に嘘の婚約破棄を言い渡した王太子さまでした。面倒なので放置したいのですが、仔猫が気になるので救出作戦を実行します。
石河 翠
恋愛
婚約者に婚約破棄をつきつけられた公爵令嬢のマーシャ。おバカな王子の相手をせずに済むと喜んだ彼女は、家に帰る途中なんとも不細工な猫を拾う。
助けを求めてくる猫を見捨てられず、家に連れて帰ることに。まるで言葉がわかるかのように賢い猫の相手をしていると、なんと猫の中身はあの王太子だと判明する。猫と王子の入れ替わりにびっくりする主人公。
バカは傀儡にされるくらいでちょうどいいが、可愛い猫が周囲に無理難題を言われるなんてあんまりだという理由で救出作戦を実行することになるが……。
もふもふを愛するヒロインと、かまってもらえないせいでいじけ気味の面倒くさいヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより pp7さまの作品をお借りしております。
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。
旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。
ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも?
小説家になろう様でも投稿しています。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
のんびり新妻は旦那様に好かれたいようです
nionea
恋愛
のんびりした性格で家族からも疎まれているミスティは、やけに忙しいエットと結婚した。
お見合いからずっとすれ違っているような二人の新婚生活は、当然まともにはいかない。
心強い付き人のエリィネと共にやってきた新しい家。
優しく迎えてくれた侍女頭のドナや使用人女性達。
だけど、旦那様だけは、何だか様子がおかしいようで…
恋心は後からやってきた系夫婦の問題解決まで。
※異世界ファンタジー、だけど、魔法はない
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
私の婚約者は失恋の痛手を抱えています。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
幼馴染の少女に失恋したばかりのケインと「学園卒業まで婚約していることは秘密にする」という条件で婚約したリンジー。当初は互いに恋愛感情はなかったが、一年の交際を経て二人の距離は縮まりつつあった。
予定より早いけど婚約を公表しようと言い出したケインに、失恋の傷はすっかり癒えたのだと嬉しくなったリンジーだったが、その矢先、彼の初恋の相手である幼馴染ミーナがケインの前に現れる。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
本当に申し訳ないのですが、作者様のお名前に小文字が使われているというだけで今まで読むのを敬遠してきました。
今hotに入っている最新作を読み、設定も表現も面白く文章力も高く変なテンションも入ってこない素敵な作品を書く方だと知り過去作も一気に読みエールを送らせていただきました。
過去の自分を叱り飛ばしたいくらいです。もう大ファンです
短編も長編も読み応えがありとても気に入っています。これからも執筆活動応援しています!
コメントありがとうございます!
名前に小文字をどうして入れてしまったか…、私ももにこ様のコメントをみて当時の自分に待ったをかけたくなりました。
変なテンションがある作品があるのに、とても嬉しい言葉を言っていただき、今猛烈に感動で泣きそうな気持ちです。
そしてとても幸せになりました。
このような気持ちにしていただき、ありがとうございます!