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㊱つづきのつづき

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そしてお義母様に関してですが、こちらはベルッサとミレーナとは重みが違いました。
まずお義父様はお義母様の今迄の行いから、離縁をしたいとずっと思っていたことが根底にありました。
今回の事件では、私にとってはとても大きな事件のように思えますが、見方を変えれば結婚した息子の家に泊まりに来て、そして気に食わなかった嫁に少しばかり意地悪をする、ただの嫁姑問題です。
この件をつっついて離縁問題にもつれ込むには明らかに難しいと判断したお義父様達は、別の問題に目を向けました。
そうです。
私の妊娠です。

いくらお義母様が私の事を好いていなくとも、初夜を済ませた以上妊娠している可能性を考えなくてはいけませんでした。

私が倒れたこと、それを助けることもせず放置したこと。
更に倒れた原因にお義母様がいたこと。
実際に放置した現場をみた第三者がいなくとも、私の証言もありますし、倒れた私を診察したイルガー先生が、仕事を強要させようとしたお義母様の姿を目撃しております。
例え妊娠の有無を知らなかったとしても、初夜を済まし、もしかしたら身ごもっている可能性がある女性に対する言動ではない事を問題視しました。
また、流産していた可能性もあった事から、お義母様の行動は重く見られました。

勿論この一点だけでは王命で結ばれた離縁は難しいと考えられました。
アルベルト様はお義父様の実子だとしても、後継ぎではありませんので。
ですがギルバーツ様の妻の座を狙っていたこと、それが叶わなかった際には国を守るという大事な職業についているアルベルト様を狙っていたこと。
その為に私が狙われたという事と、事件性を広い視野で考え、加えて今までのお義母様の行いを細かく上げた調査結果をどっさりと書類にまとめ上げられたものを王室に提出し、結果離縁の許可が出されたそうです。

ですがその結果とともにお義父様の再婚は王命というわけではなかったこともわかりました。
アルベルト様は「皆で誤解していたから、魚のように揃って口を開けてしまったよ」と笑って話してくれました。
お義母様と遠縁で親戚となった王妃様に色々話していた者がいたのでしょう。
「親戚がうるさい」というぼやきを聞いた陛下が「ちょっと再婚考えてない?」とお義父様に軽く言ったつもりだったようです。
それを王命と誤解し、離縁は難しいと皆が思っていたようです。
その為「離縁したかったなら早く言ってよー。僕だって鬼じゃないんだからすぐ許可出していたのに」と言っていたらしいです。
話しを聞く限り、とてもフレンドリーな印象を抱きますが、デビュタントで拝見した陛下はとても厳格な方という印象があった為、お話しを聞いて私はとても驚きました。

お義父様と離縁したお義母様は当初出戻りをしようとしたそうですが、離縁の理由からご両親の怒りをかってしまわれました。
「なんてことしたんだ!」と憤慨され、「もうお前には縁談はこないだろう……。修道院にいれるしかない」という言葉から逃れようとはしたようですが、結局修道院にいれられてしまったようです。

私はアルベルト様に「ミレーナの父親はどうしたの?」と尋ねましたが、アルベルト様は首を振りました。

「元義母と関係を持った男性は、なんの前触れもなく姿を消した元義母に対しもう愛情を持ち合わせてはいないらしい。
そもそもあの手紙も元義母の幸せを願ったものではないんだ。貴族として幸せに過ごす元義母の子が、平民の血が入っている可能性もあることを知って欲しいと伝えたのも、そういった理由で書いたのだろう」
「そうなのね。言葉遣いは柔らかくとも、言葉の端には毒があったように感じたから…」
「その通りだ、幸せを壊すつもりで書いたんだと思われる。でなければ複数の男と関係を持っていたことを匂わすような文面も、家族がいるかもしれない相手に他の男との子ができているだろうことも書くわけがない」

私はそれを聞いても嫌な気持ちにはなりませんでした。
何故でしょう。
嫌な気分になるどころか、晴れ晴れした気分になったのです。
これでやっと平和な日常が送れると思ったからでしょうか…。
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