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㉝つづきのつづきのつづき
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「お母様の言う通りよ!私ギルじゃなくて、アルと結婚するんだから」
「ミレーナ!!」
爆弾発言をするミレーナ様、いえミレーナにお義母様は遂にミレーナの頬を打ちました。
それでもあの日ミレーナに打たれた音よりもパチンという可愛らしい音が部屋に響きます。
ですがミレーナ的にはショックだったのでしょう、微動だにせずお義母様をただただ呆然と見つめていました。
「…今の話は本当ですか?」
「え、ち、違うのよ。この子が勝手に言ってるだけで…」
「純粋な子供であれば親の言葉を一身に信じるのは考えられなくもありません。
つまり貴方は騎士団長として爵位を賜った私の立場を、血の繋がった娘を利用し、狙ったと。
しかも騎士団長の私を狙うということは、この国の攻防面の機密情報を狙っている、そう解釈しても?」
「違うわ!本当に違うの!」
「そうよ!お母様はそんなことしない!」
ようやく状況がわかってきたのか、ミレーナが否定しますが少し遅い気がします。
何故ならここには私の他に、アルベルト様、お義父様、メイドのサーシャ、騎士団の方、シェフのレンズ、イルガー先生という様々な人たちがいるからです。
そしてしっかりと話を聞いていました。
「…ならば何故客室ではなく妻のメアリーの部屋であるこの部屋を使っているのだ」
「そ、それは………」
ミレーナが言葉に詰まり、お義母様が私をみます。
「……私は先ほども言った通り、許可した記憶はありません。
それにお義母様が客室を利用していたことは明らかな事実。例え空返事だったとしても客室と自室を間違えて貸し渡すような愚かなことは、いたしません」
私は堂々とそう言いましたが、少しだけ言葉に詰まったのも事実。
メイドの仕事をしていたという、愚かな事実があるからです。
ですがお義母様もそれを口にはしませんでした。
例え私が承諾したこととはいえ、誓約書もないことを口にしては分が悪いと判断したのでしょう。
私もあえて自分から口にすることはしませんでしたから、お義母様も「メイドの仕事をしていたのは愚かではないの?」等という言葉はありませんでした。
「気を、旦那様の気を引きたかったのです!!!」
遂にアルベルト様が後ろで控えていた騎士たちに合図を送ろうとした時、お義母様が待ったをかけるように叫びました。
「…何故アルベルトの家で、嫁の部屋を娘に明け渡すことが俺の気を引くことに繋がる?」
お義父様は本当にわからないと言った様子で眉を顰めました。
勿論私とアルベルト様も同様です。
わかる人はいるのかなと、視線だけで周りを見渡しても皆疑問符を頭の上に載せていました。
「貴方は…身内の事なら情が深いではありませんか!
家を出る息子のことを、気にかけている筈だと思ったのです!
そして貴方の妻である私がこんなにも寂しがっていることに、気付いてもらいたかった!」
「………」
「現に貴方はこうしてやってきたでしょう!?私の読みは当たっていたのです!だからこれが理由ですわ!
私が娘ミレーナの存在を隠していたのも!この屋敷に泊まり込んだのも!すべて貴方の気を引きたかっただけです!それ以外の理由はありません!」
「………」
こじ付けが過ぎるとはこのことをいっているような、そんな気がしてきました。
第一お義父様の関心を引きたいのならば、公爵夫人としてあるべき姿を目指さなければならないと思います。
人脈を広げるために社交界に参加するのはいいことでしたが、私宛に来た招待状を勝手に利用することなどあってはならないことです。
そのような非常識な行動を取らないよう様々な知識を取り入れる姿勢が、今のお義母様にとってとても大事ではないでしょうか。
そして社交界を仕切れるように、ルールやマナーを学び、新しい風を取り入れるような存在になること。
他にも私が知らないだけで、公爵夫人という肩書は如何なる努力もしなければならないはずです。
それなのにそんな努力を一切放棄していることを、お義母様がここに泊まり込んでいた姿を見て私は感じていました。
というより令嬢教育を八年間行っていた筈です。
いったいどのような教育内容だったのか、私はそこに対して疑問を抱きました。
「……言葉も出ないな…」
「え…?」
お義父様は何かを呟いた後、深いため息を吐き出します。
そしてお義母様へと近づくとこういいました。
「…何故なにも努力しようともしない人間を気にしなければならない?
前妻を目標にするどころか、嫁いで来るなり公爵家の財を湯水のごとく消費することしか考えない。
挙句の果てには義理の息子であるギルバーツからの贈り物に、そこにいる他人をこそこそと招き入れ、贅を尽くし育てていたではないか。
そんな愚か者を、一体何故私が気にしなければならないんだ」
「…し、知っていて…」
「当然だ。息子たちが調査する以前にお前の身辺調査は済んでいる。……そして公爵家の名前を使い、あちこちで男を漁っていたことも全て調査済みだ」
「…それは誤解ですわ!私は!…」
「事実だろう?誰の監視もなかったこの家では、お前は実に好き勝手に動いていたではないか」
「…ッ」
お義母様のお顔は真っ青でした。
流石に可哀そうに思えるくらいに。
ですがお義母様のことを“知っている”私は同情しようとも思いませんでした。
そしてお義母様は騎士団の方に取り押さえられるように連れていかれました。
勿論ミレーナ様も一緒です。
私はその様子を眺めながらアルベルト様に身を寄せると、アルベルト様はそっと私の肩を抱いてくれました。
私達の家から、招かれざる者が出ていく様子を見つめていると、お義父様が最後私に謝罪しました。
お義母様の外での行動は調査し把握できても、私に対する行為には認識すら出来ていなかったこと、申し訳ないと頭を下げて謝罪したのです。
私は慌ててお義父様の言葉を否定しました。
例えアルベルト様の妻となり、身内となったとしても、この問題は私か、もしくはアルベルト様と共に解決するべき問題。
それに虐げられたと言っても、私が了承したことが原因です。
それを謝罪して貰うべきではありません。
私は私自身も悪かったことを伝え、そしてお義父様も帰っていきました。
こうして我が家はやっとあるべき姿に戻ることが出来たのです。
「ミレーナ!!」
爆弾発言をするミレーナ様、いえミレーナにお義母様は遂にミレーナの頬を打ちました。
それでもあの日ミレーナに打たれた音よりもパチンという可愛らしい音が部屋に響きます。
ですがミレーナ的にはショックだったのでしょう、微動だにせずお義母様をただただ呆然と見つめていました。
「…今の話は本当ですか?」
「え、ち、違うのよ。この子が勝手に言ってるだけで…」
「純粋な子供であれば親の言葉を一身に信じるのは考えられなくもありません。
つまり貴方は騎士団長として爵位を賜った私の立場を、血の繋がった娘を利用し、狙ったと。
しかも騎士団長の私を狙うということは、この国の攻防面の機密情報を狙っている、そう解釈しても?」
「違うわ!本当に違うの!」
「そうよ!お母様はそんなことしない!」
ようやく状況がわかってきたのか、ミレーナが否定しますが少し遅い気がします。
何故ならここには私の他に、アルベルト様、お義父様、メイドのサーシャ、騎士団の方、シェフのレンズ、イルガー先生という様々な人たちがいるからです。
そしてしっかりと話を聞いていました。
「…ならば何故客室ではなく妻のメアリーの部屋であるこの部屋を使っているのだ」
「そ、それは………」
ミレーナが言葉に詰まり、お義母様が私をみます。
「……私は先ほども言った通り、許可した記憶はありません。
それにお義母様が客室を利用していたことは明らかな事実。例え空返事だったとしても客室と自室を間違えて貸し渡すような愚かなことは、いたしません」
私は堂々とそう言いましたが、少しだけ言葉に詰まったのも事実。
メイドの仕事をしていたという、愚かな事実があるからです。
ですがお義母様もそれを口にはしませんでした。
例え私が承諾したこととはいえ、誓約書もないことを口にしては分が悪いと判断したのでしょう。
私もあえて自分から口にすることはしませんでしたから、お義母様も「メイドの仕事をしていたのは愚かではないの?」等という言葉はありませんでした。
「気を、旦那様の気を引きたかったのです!!!」
遂にアルベルト様が後ろで控えていた騎士たちに合図を送ろうとした時、お義母様が待ったをかけるように叫びました。
「…何故アルベルトの家で、嫁の部屋を娘に明け渡すことが俺の気を引くことに繋がる?」
お義父様は本当にわからないと言った様子で眉を顰めました。
勿論私とアルベルト様も同様です。
わかる人はいるのかなと、視線だけで周りを見渡しても皆疑問符を頭の上に載せていました。
「貴方は…身内の事なら情が深いではありませんか!
家を出る息子のことを、気にかけている筈だと思ったのです!
そして貴方の妻である私がこんなにも寂しがっていることに、気付いてもらいたかった!」
「………」
「現に貴方はこうしてやってきたでしょう!?私の読みは当たっていたのです!だからこれが理由ですわ!
私が娘ミレーナの存在を隠していたのも!この屋敷に泊まり込んだのも!すべて貴方の気を引きたかっただけです!それ以外の理由はありません!」
「………」
こじ付けが過ぎるとはこのことをいっているような、そんな気がしてきました。
第一お義父様の関心を引きたいのならば、公爵夫人としてあるべき姿を目指さなければならないと思います。
人脈を広げるために社交界に参加するのはいいことでしたが、私宛に来た招待状を勝手に利用することなどあってはならないことです。
そのような非常識な行動を取らないよう様々な知識を取り入れる姿勢が、今のお義母様にとってとても大事ではないでしょうか。
そして社交界を仕切れるように、ルールやマナーを学び、新しい風を取り入れるような存在になること。
他にも私が知らないだけで、公爵夫人という肩書は如何なる努力もしなければならないはずです。
それなのにそんな努力を一切放棄していることを、お義母様がここに泊まり込んでいた姿を見て私は感じていました。
というより令嬢教育を八年間行っていた筈です。
いったいどのような教育内容だったのか、私はそこに対して疑問を抱きました。
「……言葉も出ないな…」
「え…?」
お義父様は何かを呟いた後、深いため息を吐き出します。
そしてお義母様へと近づくとこういいました。
「…何故なにも努力しようともしない人間を気にしなければならない?
前妻を目標にするどころか、嫁いで来るなり公爵家の財を湯水のごとく消費することしか考えない。
挙句の果てには義理の息子であるギルバーツからの贈り物に、そこにいる他人をこそこそと招き入れ、贅を尽くし育てていたではないか。
そんな愚か者を、一体何故私が気にしなければならないんだ」
「…し、知っていて…」
「当然だ。息子たちが調査する以前にお前の身辺調査は済んでいる。……そして公爵家の名前を使い、あちこちで男を漁っていたことも全て調査済みだ」
「…それは誤解ですわ!私は!…」
「事実だろう?誰の監視もなかったこの家では、お前は実に好き勝手に動いていたではないか」
「…ッ」
お義母様のお顔は真っ青でした。
流石に可哀そうに思えるくらいに。
ですがお義母様のことを“知っている”私は同情しようとも思いませんでした。
そしてお義母様は騎士団の方に取り押さえられるように連れていかれました。
勿論ミレーナ様も一緒です。
私はその様子を眺めながらアルベルト様に身を寄せると、アルベルト様はそっと私の肩を抱いてくれました。
私達の家から、招かれざる者が出ていく様子を見つめていると、お義父様が最後私に謝罪しました。
お義母様の外での行動は調査し把握できても、私に対する行為には認識すら出来ていなかったこと、申し訳ないと頭を下げて謝罪したのです。
私は慌ててお義父様の言葉を否定しました。
例えアルベルト様の妻となり、身内となったとしても、この問題は私か、もしくはアルベルト様と共に解決するべき問題。
それに虐げられたと言っても、私が了承したことが原因です。
それを謝罪して貰うべきではありません。
私は私自身も悪かったことを伝え、そしてお義父様も帰っていきました。
こうして我が家はやっとあるべき姿に戻ることが出来たのです。
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