24 / 41
㉔旦那様始動!
しおりを挟む
「旦那様」
「なんだ?」
旦那様に声を掛けると先ほどのブツブツと呟いていた様子は嘘のように、キリッとした男前な表情に切り替わる旦那様に俺は心の中で手を合わせた。
「俺たちには無理でしたが、旦那様なら諸悪の根源を追い出せるかと」
「確かに!奥様に酷いことしたあいつらを私達許せません!
ということで、公爵夫人を追い出してください!あとミレーナとかいう女性も追い出しちゃってください!あとあと夫人付きのメイドも追い出してください!!」
「無論だ。だが、追い出すだけではなくしかるべき処罰を受けてもらいたいのだが……」
旦那様はそういって眉を顰めた。
元々公爵家で少しの期間だが働いていたことがあるおかげで、デルオ公爵家の大奥様に対する認識はそれはそれは厳しいものということは知っている。
というのも日頃の行いがよくなかった為、それは当たり前の事なのだが。
「理由ならあるじゃないですか!奥様を虐げたっていう理由が!」
「メイドの仕事を強制させられたという件に関してをいっているのならば、メアリーが受け入れた時点で罪にはできない」
「そんなっ!だって倒れる程奥様は体を酷使したんですよ!?
従業員に対する監督責任ってものはないんですか!?」
「残念ながら俺と君たちの間には雇用関係というものが契約上存在しているが、メアリーと義母にはないんだ。
従って監督責任もなければ、メアリーが自主的に行った事と主張されてしまえばどうにもならない」
「そ、そんな…」
旦那様はそう言ったが、そもそも雇用関係上の監督責任は意味をなさない。
何故なら貴族社会というのはそういうものだからだ。
従者として働く側の権力が相当高くなければもみ消されて終わりだろう。
だが旦那様は物事に対して客観的にみる思考能力が備わっている為、正しい判断が行われるものだと信じている節がある。
もしくは騎士団長としてそのように行動してきたのだろう。
平民からしたら素晴らしい人物だが、貴族からした面倒な男だと、一部の貴族から思われているに違いない。
サーシャがショックを受けた様子で後ずさったその時、トントントンと控えめに扉をノックする音が部屋の中に響く。
旦那様は鋭い目を扉に向けた。
「入れ」
旦那様が入室の許可を出すと、開かれる扉から現れたのは、奥様の検査を続けると部屋に留まったイルガー先生だった。
◆(視点変更→アルベルト)
「どうした?メアリーになにかあったのか?」
使用人から状況を伺っている中やってきたデルオ公爵家の主治医であるイルガー先生の手には、持ち込んできただろう鞄を持っていた。
「このまま休んでいれば回復しますが、…少し気になる点があり一度公爵邸に戻り、検査薬を持ってきたいのです」
「気になる点?」
「ええ。とはいえ、確定していないまだ不確かなことでありますので、発言は差し控えさせていただきます。
それで、許可は?」
「勿論構わない。メアリーに大事があってはならないからな」
「では、一度戻らせていただきます」
そうして一度頭を下げてから、先生は部屋を出ていった。
俺は先生の背中を見送った後、メイドに視線を向ける。
「ひとまず、義母付きのメイドの元へ案内してくれ」
「わかりました!」
義母を追い詰めるのは難しい。
そもそも義母の肩書は公爵夫人だ。
いくら父上の希望ではないにしても、王命で結ばれた再婚相手である。
その為、今回のメアリーの件に関しても追い詰めることはなかなかに難しかった。
ならばどこから攻めるか。
それは義母の近くにいる者からに決まっている。
「こちらです!」と案内するメイドの後を続き、俺は義母側についていると言われる使用人の元へと向かう。
ちなみにシェフの男にはメアリーが休んでいる部屋の前で待機してもらった。
騎士としての訓練は受けたことはないといっていたが、明らかに筋肉が付いている男の体格をみて、例えメアリーの元に義母が訪れても対処してくれるだろうと考えたからだ。
今迄は好きにやってきただろう義母も、屋敷の主である俺がいれば好きには出来ないだろう。
母親だから?
いや、母親として接してもらった事等皆無だ。
公爵家の金を湯水のように使い続けてきた浪費家。
ただそれだけの認識の女だ。
そして義母側についたと思われる使用人も恐らくは…。
「なんだ?」
旦那様に声を掛けると先ほどのブツブツと呟いていた様子は嘘のように、キリッとした男前な表情に切り替わる旦那様に俺は心の中で手を合わせた。
「俺たちには無理でしたが、旦那様なら諸悪の根源を追い出せるかと」
「確かに!奥様に酷いことしたあいつらを私達許せません!
ということで、公爵夫人を追い出してください!あとミレーナとかいう女性も追い出しちゃってください!あとあと夫人付きのメイドも追い出してください!!」
「無論だ。だが、追い出すだけではなくしかるべき処罰を受けてもらいたいのだが……」
旦那様はそういって眉を顰めた。
元々公爵家で少しの期間だが働いていたことがあるおかげで、デルオ公爵家の大奥様に対する認識はそれはそれは厳しいものということは知っている。
というのも日頃の行いがよくなかった為、それは当たり前の事なのだが。
「理由ならあるじゃないですか!奥様を虐げたっていう理由が!」
「メイドの仕事を強制させられたという件に関してをいっているのならば、メアリーが受け入れた時点で罪にはできない」
「そんなっ!だって倒れる程奥様は体を酷使したんですよ!?
従業員に対する監督責任ってものはないんですか!?」
「残念ながら俺と君たちの間には雇用関係というものが契約上存在しているが、メアリーと義母にはないんだ。
従って監督責任もなければ、メアリーが自主的に行った事と主張されてしまえばどうにもならない」
「そ、そんな…」
旦那様はそう言ったが、そもそも雇用関係上の監督責任は意味をなさない。
何故なら貴族社会というのはそういうものだからだ。
従者として働く側の権力が相当高くなければもみ消されて終わりだろう。
だが旦那様は物事に対して客観的にみる思考能力が備わっている為、正しい判断が行われるものだと信じている節がある。
もしくは騎士団長としてそのように行動してきたのだろう。
平民からしたら素晴らしい人物だが、貴族からした面倒な男だと、一部の貴族から思われているに違いない。
サーシャがショックを受けた様子で後ずさったその時、トントントンと控えめに扉をノックする音が部屋の中に響く。
旦那様は鋭い目を扉に向けた。
「入れ」
旦那様が入室の許可を出すと、開かれる扉から現れたのは、奥様の検査を続けると部屋に留まったイルガー先生だった。
◆(視点変更→アルベルト)
「どうした?メアリーになにかあったのか?」
使用人から状況を伺っている中やってきたデルオ公爵家の主治医であるイルガー先生の手には、持ち込んできただろう鞄を持っていた。
「このまま休んでいれば回復しますが、…少し気になる点があり一度公爵邸に戻り、検査薬を持ってきたいのです」
「気になる点?」
「ええ。とはいえ、確定していないまだ不確かなことでありますので、発言は差し控えさせていただきます。
それで、許可は?」
「勿論構わない。メアリーに大事があってはならないからな」
「では、一度戻らせていただきます」
そうして一度頭を下げてから、先生は部屋を出ていった。
俺は先生の背中を見送った後、メイドに視線を向ける。
「ひとまず、義母付きのメイドの元へ案内してくれ」
「わかりました!」
義母を追い詰めるのは難しい。
そもそも義母の肩書は公爵夫人だ。
いくら父上の希望ではないにしても、王命で結ばれた再婚相手である。
その為、今回のメアリーの件に関しても追い詰めることはなかなかに難しかった。
ならばどこから攻めるか。
それは義母の近くにいる者からに決まっている。
「こちらです!」と案内するメイドの後を続き、俺は義母側についていると言われる使用人の元へと向かう。
ちなみにシェフの男にはメアリーが休んでいる部屋の前で待機してもらった。
騎士としての訓練は受けたことはないといっていたが、明らかに筋肉が付いている男の体格をみて、例えメアリーの元に義母が訪れても対処してくれるだろうと考えたからだ。
今迄は好きにやってきただろう義母も、屋敷の主である俺がいれば好きには出来ないだろう。
母親だから?
いや、母親として接してもらった事等皆無だ。
公爵家の金を湯水のように使い続けてきた浪費家。
ただそれだけの認識の女だ。
そして義母側についたと思われる使用人も恐らくは…。
1,616
お気に入りに追加
3,342
あなたにおすすめの小説
彼が愛した王女はもういない
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。
どちらも叶わない恋をした――はずだった。
※関連作がありますが、これのみで読めます。
※全11話です。
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
【取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる