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⑱お医者様は強いです
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(視点変更→メアリー)
“私と同じ”メイドの女性が慌てた様子で部屋から出ていってしまいました。
正直、何故彼女が私を“奥様”といってたのかわかりませんでしたが、今はもう少し体を休めたい。
そう思った私は再び目を閉じました。
◇
次に目を覚ました時、私の体を誰かが触れていました。
首を触っているのは喉が腫れたいないかをみているのでしょう。
私はそっと目を開けると、白衣を着た優し気なおじいさんが私に気付き微笑みかけてくれました。
「私はレン・イルガーというデルオ公爵家の主治医をしている医者でございます。
お休み中ではありましたが、許可もなく触診していたことをお詫びいたします」
「…あ、いえ、構いません」
「ありがとうございます。それでは喉も直接見させていただいてもよろしいですか?」
「はい」
私はイルガー先生に従い口を大きく開けます。
先生は私の喉を覗き込み「ふむ」と呟きました。
「問題ありませんな」
そう伝えた先生に答えたのは知らない女性でした。
「まぁ!朝っぱらから公爵家の主治医を呼びつけたのに仮病とはね!」
その女性のセリフに先生は椅子から立ち上がり、頭を下げました。
先生が立ち上がった事で、紫がかった黒髪を右肩から流し、体にフィットさせたドレスを身に纏った、少しキツイ印象を与える女性の姿が私にも確認できました。
そして元からいたメイドとシェフだと思える男性だけではなく、女性の周りにいた他のメイドまでも突然部屋へと入室した女性の行動に狼狽えているのが見えました。
女性がどのような立場の人なのかは正確にはわかりませんが、それでも地位のある方というのはわかりました。
メイドの服装とは明らかに違うドレスに、人の手を借りたとわかる髪型、そしてただのメイドが体調不良で医者を呼んだ場所に様子見にやってくるのは普通は同じ使用人くらいです。
ですが、周りの慌てようをみるとドレスアップをした女性は同じ立場の人とは思えませんでした。
立場のある者がいらっしゃるとは思っていなかった場所に現れたからこそ驚いた。そう考えるのが自然でしょう。
となると、あの女性がこの屋敷の主か、その奥様なのでしょうか?
メイドが私に奥様といったことから、奥様という人は私に似ているのだろうなと思いましたが、……私の姿はあの方のような見た目なのでしょうね。
鏡を見ていないのでわかりませんが。
「息災でありなによりです。デルオ公爵夫人」
「そうね。元気でしたわよ」
オホホホホと声をあげながら笑い声をあげるデルオ公爵夫人と呼ばれた女性は、私に目線を向けると表情を消しました。
「さぁ、いつまでも寝ていないでさっさと仕事をしなさい!」
ギロリと睨むデルオ公爵夫人に私の体はびくりと震えました。
“指示に従わなければ”と体を起こそうとしたところを、イルガー先生に止められ、そのままベッドに戻されます。
「……先生?どうしたのです?彼女は問題なのでしょう?だったら仕事をさせなければ」
「…どうやら誤解させてしまったようですな。公爵様でしたらこの言葉だけで伝わりましたので同じようにいったつもりでしたが……。
“問題ない”というのは、仕事をしても問題ない。という意味ではありません。“重篤ではない”が、“暫く安静にしていれば問題なくよくなる”という意味での発言です。
今の状態で無理をさせてしまえば……」
「させてしまえば、なんだというのです」
「………いえ。これ以上の言葉を控えさせていただきます。
私から言えることは医師として労働の許可は出せない、そしてこれは公爵様にもお伝えさせていただくという事だけです」
「な!何故主人に!?あの方には関係のない話ではありませんか!」
「関係なくはないでしょう。貴方は公爵夫人なのですから、よく考えてご発言くださいませ」
……な、なんでしょう…。このピリピリする雰囲気は。
優し気な雰囲気を持つイルガー先生は公爵夫人と呼ばれた女性に対し、とても強気な姿勢を崩しません。
それどころか私には公爵様が味方についてるんだぞ!という態度で、公爵様の奥様という意味を持つ公爵夫人に勝とうとしております。
“私と同じ”メイドの女性が慌てた様子で部屋から出ていってしまいました。
正直、何故彼女が私を“奥様”といってたのかわかりませんでしたが、今はもう少し体を休めたい。
そう思った私は再び目を閉じました。
◇
次に目を覚ました時、私の体を誰かが触れていました。
首を触っているのは喉が腫れたいないかをみているのでしょう。
私はそっと目を開けると、白衣を着た優し気なおじいさんが私に気付き微笑みかけてくれました。
「私はレン・イルガーというデルオ公爵家の主治医をしている医者でございます。
お休み中ではありましたが、許可もなく触診していたことをお詫びいたします」
「…あ、いえ、構いません」
「ありがとうございます。それでは喉も直接見させていただいてもよろしいですか?」
「はい」
私はイルガー先生に従い口を大きく開けます。
先生は私の喉を覗き込み「ふむ」と呟きました。
「問題ありませんな」
そう伝えた先生に答えたのは知らない女性でした。
「まぁ!朝っぱらから公爵家の主治医を呼びつけたのに仮病とはね!」
その女性のセリフに先生は椅子から立ち上がり、頭を下げました。
先生が立ち上がった事で、紫がかった黒髪を右肩から流し、体にフィットさせたドレスを身に纏った、少しキツイ印象を与える女性の姿が私にも確認できました。
そして元からいたメイドとシェフだと思える男性だけではなく、女性の周りにいた他のメイドまでも突然部屋へと入室した女性の行動に狼狽えているのが見えました。
女性がどのような立場の人なのかは正確にはわかりませんが、それでも地位のある方というのはわかりました。
メイドの服装とは明らかに違うドレスに、人の手を借りたとわかる髪型、そしてただのメイドが体調不良で医者を呼んだ場所に様子見にやってくるのは普通は同じ使用人くらいです。
ですが、周りの慌てようをみるとドレスアップをした女性は同じ立場の人とは思えませんでした。
立場のある者がいらっしゃるとは思っていなかった場所に現れたからこそ驚いた。そう考えるのが自然でしょう。
となると、あの女性がこの屋敷の主か、その奥様なのでしょうか?
メイドが私に奥様といったことから、奥様という人は私に似ているのだろうなと思いましたが、……私の姿はあの方のような見た目なのでしょうね。
鏡を見ていないのでわかりませんが。
「息災でありなによりです。デルオ公爵夫人」
「そうね。元気でしたわよ」
オホホホホと声をあげながら笑い声をあげるデルオ公爵夫人と呼ばれた女性は、私に目線を向けると表情を消しました。
「さぁ、いつまでも寝ていないでさっさと仕事をしなさい!」
ギロリと睨むデルオ公爵夫人に私の体はびくりと震えました。
“指示に従わなければ”と体を起こそうとしたところを、イルガー先生に止められ、そのままベッドに戻されます。
「……先生?どうしたのです?彼女は問題なのでしょう?だったら仕事をさせなければ」
「…どうやら誤解させてしまったようですな。公爵様でしたらこの言葉だけで伝わりましたので同じようにいったつもりでしたが……。
“問題ない”というのは、仕事をしても問題ない。という意味ではありません。“重篤ではない”が、“暫く安静にしていれば問題なくよくなる”という意味での発言です。
今の状態で無理をさせてしまえば……」
「させてしまえば、なんだというのです」
「………いえ。これ以上の言葉を控えさせていただきます。
私から言えることは医師として労働の許可は出せない、そしてこれは公爵様にもお伝えさせていただくという事だけです」
「な!何故主人に!?あの方には関係のない話ではありませんか!」
「関係なくはないでしょう。貴方は公爵夫人なのですから、よく考えてご発言くださいませ」
……な、なんでしょう…。このピリピリする雰囲気は。
優し気な雰囲気を持つイルガー先生は公爵夫人と呼ばれた女性に対し、とても強気な姿勢を崩しません。
それどころか私には公爵様が味方についてるんだぞ!という態度で、公爵様の奥様という意味を持つ公爵夫人に勝とうとしております。
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