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⑬結婚式の真相
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そんな義母が俺とメアリーの結婚式に、メアリーの親友で元貴族令嬢とはいえ、現平民の女性を招くのは難しかった。
というか義母が参加することが前提だった為に、一生に一度の結婚式を盛大に計画できなかったともいえる。
あの義母が何をやらかすのかわかったものでもなかったからだ。
そして悩みに頭を抱えた俺を助けたのが目の前に立つジャニエルだ。
ジャニエルが何故そんな公爵家の事情を知っているのかというと、学生時代の寮部屋が同じだったのだ。
性格も合い、そして口も堅い。
義理人情に厚い彼の性格を俺は信頼している。
決して他言無用と最初に伝え、俺は兄上からの手紙を彼にみせていたのだ。
だから結婚式を小規模にするのもジャニエルからのアドバイスであった。
『絶対に失敗したくないならいっそのこと小規模にしてみろよ。
お前たちが身内以外呼ばなければ、お前の義母だって他の連中を招かないだろ?
失敗する主な原因は親戚関連だからな。少なくとも平民の間ではそうだ。
酒を飲んで酔っ払った親戚たちが騒いで、結婚式を台無しにするのはよくあること。
どんなキチガイ野郎だって味方がいなければ変に騒がないってもんだ』
そういった彼の言葉通り、小規模の結婚式をあげるとそれはそれは義母は普通の義母らしく大人しくしてくれた。
派手なドレスで一人浮いていようが、公爵家では参加している女性は義母だけだし、メアリーの家族側もメアリーのお母様しか女性はいなかった為、ドレスに関しても騒がなかった。
寧ろ「あんなシンプルなドレスしか着れないだなんて、男爵家っていやね~」と陰で笑っていたくらいだ。
勿論だれも同調しない。しないからこそ義母はすぐに口を噤んだ。
ジャニエルのアドバイスはとても的確だったのだ。
話しを戻そう。
俺は獣対策の設置場所を検討する為の地図の上に、ジャニエルから受け取った書類を置いて、彼を見上げた。
「それで、何故妻に会いたいと、お前経由で俺に話が来るんだ?」
俺はメアリーの行動を制限しているわけではない。
寧ろメアリーには好きに過ごしてもらいたい、伸び伸びと好きなことをして、楽しい充実な毎日を送ってもらいたいと願い、公爵家から使用人を何人か連れてきたのだ。
連れてきたのは新人が殆どだったが、そもそも公爵家には雇う為の基準がある。
その基準点に合格している為例え新人だとしても優秀な使用人であることは確かだった。
だからメアリーが彼らに指示を出さなくとも、彼らは彼らの仕事を当たり前にこなす。
だが、俺のいない留守中に変なやつが家に侵入して来たら?
流石に騎士団長の家を狙う不届き者がいるとは思えないが、それでも心配は尽きない。
だからこそ俺の部下数人を王都に残してきた。
彼らからは変な奴らは侵入していないと、定期的に連絡を受けている。
「なんでも…、“手紙を出しても返事が来ない、あの子の性格ならどんなに忙しくても短い文面でも絶対に返事をくれるはず、それなのに手紙の一通も来ないの。
私は疑問に思ってマリアにパーティーを開催してもらって、それで招待状をメアリーに送ってもらったのだけど、何故かメアリー宛の招待状を持ってデルオ公爵夫人がやってくる。意味が分からないわ!”だそうだ」
「は?」
血の気が引く。
獣との生死を掛けた戦い以外、そんな言葉を実感したのは初めてだった。
「しかもデルオ公爵夫人にメアリーに会わせてほしい、寝込んでいるのならお見舞いに行きたい。と頼んでも拒否されているらしいぞ。
だからエリーナも“アンタ、アルベルト様と親しかったわよね?メアリーに取り次いでもらえるようにして!”って頼まれたんだ」
「いや、今お前なんていった?デルオ公爵夫人…、といったか?」
「ああ、いったぞ。何故か公爵夫人が俺たち世代の若い女性を連れて社交界に参加するらしい。
そういえば“学園でもみたことがないわ”とかいってたな、誰なんだ?夫人が連れている女性って…っていってもわからねーか」
「いや……心当たりがある。というより、早急に戻らなくてはならない」
「え?なんでだよ?」
ジャニエルに首を傾げてそう聞いた。
「義母が俺とメアリーの家で生活していると思われるからだ」
「は…?いや、例えキチガイでも新婚夫婦の愛の巣で過ごさねーだろ…」
「それをするのがキチガイなんだ」
俺は立ち上がった。
そしてすぐに地図にいくつかの印を記入し終えると、羽織に手を伸ばす。
「おい、アル!」
「悪いがここからの監督はお前に任せる。
罠の設置場所候補は地図に書いておいたから吟味してくれ」
「いや、もう夜…っておい!」
羽織を着てテントの中から飛び出した俺をジャニエルが大きな声で呼び止める。
既に就寝している者もいたため、他のテントから様子を見る為に顔を覗かせた者たちもちらほらいる中、俺は馬が繋がれた場所まで走った。
どうかあのキチガイがメアリーに不躾な真似をしていないことを祈りながら。
俺は王都にあるメアリーとの家に向かって休むことなく馬を走らせたのだった。
■
というか義母が参加することが前提だった為に、一生に一度の結婚式を盛大に計画できなかったともいえる。
あの義母が何をやらかすのかわかったものでもなかったからだ。
そして悩みに頭を抱えた俺を助けたのが目の前に立つジャニエルだ。
ジャニエルが何故そんな公爵家の事情を知っているのかというと、学生時代の寮部屋が同じだったのだ。
性格も合い、そして口も堅い。
義理人情に厚い彼の性格を俺は信頼している。
決して他言無用と最初に伝え、俺は兄上からの手紙を彼にみせていたのだ。
だから結婚式を小規模にするのもジャニエルからのアドバイスであった。
『絶対に失敗したくないならいっそのこと小規模にしてみろよ。
お前たちが身内以外呼ばなければ、お前の義母だって他の連中を招かないだろ?
失敗する主な原因は親戚関連だからな。少なくとも平民の間ではそうだ。
酒を飲んで酔っ払った親戚たちが騒いで、結婚式を台無しにするのはよくあること。
どんなキチガイ野郎だって味方がいなければ変に騒がないってもんだ』
そういった彼の言葉通り、小規模の結婚式をあげるとそれはそれは義母は普通の義母らしく大人しくしてくれた。
派手なドレスで一人浮いていようが、公爵家では参加している女性は義母だけだし、メアリーの家族側もメアリーのお母様しか女性はいなかった為、ドレスに関しても騒がなかった。
寧ろ「あんなシンプルなドレスしか着れないだなんて、男爵家っていやね~」と陰で笑っていたくらいだ。
勿論だれも同調しない。しないからこそ義母はすぐに口を噤んだ。
ジャニエルのアドバイスはとても的確だったのだ。
話しを戻そう。
俺は獣対策の設置場所を検討する為の地図の上に、ジャニエルから受け取った書類を置いて、彼を見上げた。
「それで、何故妻に会いたいと、お前経由で俺に話が来るんだ?」
俺はメアリーの行動を制限しているわけではない。
寧ろメアリーには好きに過ごしてもらいたい、伸び伸びと好きなことをして、楽しい充実な毎日を送ってもらいたいと願い、公爵家から使用人を何人か連れてきたのだ。
連れてきたのは新人が殆どだったが、そもそも公爵家には雇う為の基準がある。
その基準点に合格している為例え新人だとしても優秀な使用人であることは確かだった。
だからメアリーが彼らに指示を出さなくとも、彼らは彼らの仕事を当たり前にこなす。
だが、俺のいない留守中に変なやつが家に侵入して来たら?
流石に騎士団長の家を狙う不届き者がいるとは思えないが、それでも心配は尽きない。
だからこそ俺の部下数人を王都に残してきた。
彼らからは変な奴らは侵入していないと、定期的に連絡を受けている。
「なんでも…、“手紙を出しても返事が来ない、あの子の性格ならどんなに忙しくても短い文面でも絶対に返事をくれるはず、それなのに手紙の一通も来ないの。
私は疑問に思ってマリアにパーティーを開催してもらって、それで招待状をメアリーに送ってもらったのだけど、何故かメアリー宛の招待状を持ってデルオ公爵夫人がやってくる。意味が分からないわ!”だそうだ」
「は?」
血の気が引く。
獣との生死を掛けた戦い以外、そんな言葉を実感したのは初めてだった。
「しかもデルオ公爵夫人にメアリーに会わせてほしい、寝込んでいるのならお見舞いに行きたい。と頼んでも拒否されているらしいぞ。
だからエリーナも“アンタ、アルベルト様と親しかったわよね?メアリーに取り次いでもらえるようにして!”って頼まれたんだ」
「いや、今お前なんていった?デルオ公爵夫人…、といったか?」
「ああ、いったぞ。何故か公爵夫人が俺たち世代の若い女性を連れて社交界に参加するらしい。
そういえば“学園でもみたことがないわ”とかいってたな、誰なんだ?夫人が連れている女性って…っていってもわからねーか」
「いや……心当たりがある。というより、早急に戻らなくてはならない」
「え?なんでだよ?」
ジャニエルに首を傾げてそう聞いた。
「義母が俺とメアリーの家で生活していると思われるからだ」
「は…?いや、例えキチガイでも新婚夫婦の愛の巣で過ごさねーだろ…」
「それをするのがキチガイなんだ」
俺は立ち上がった。
そしてすぐに地図にいくつかの印を記入し終えると、羽織に手を伸ばす。
「おい、アル!」
「悪いがここからの監督はお前に任せる。
罠の設置場所候補は地図に書いておいたから吟味してくれ」
「いや、もう夜…っておい!」
羽織を着てテントの中から飛び出した俺をジャニエルが大きな声で呼び止める。
既に就寝している者もいたため、他のテントから様子を見る為に顔を覗かせた者たちもちらほらいる中、俺は馬が繋がれた場所まで走った。
どうかあのキチガイがメアリーに不躾な真似をしていないことを祈りながら。
俺は王都にあるメアリーとの家に向かって休むことなく馬を走らせたのだった。
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