上 下
1 / 1

第1話 入学式の秘め事

しおりを挟む
「清水聖依奈さん、すごい素敵だよね!」
 トイレの外から、私のことを話している声が聞こえる。
「入試の成績トップだったらしいし、見た目もすごく可愛いから、きっと中学の時もモテモテだったんだろうな~!」
「柚菜、聖依奈さんと同じクラスなんでしょ? 話しかけてみてよ」
「えぇ~、私なんかがいいのかなぁ~?」
 ……あんまり、注目されたくないんだけどな……。
 私、声を出すとおしっこがしたくなっちゃうんだから……。
 話していた子たちが居なくなったのを確認してからトイレを出る。教室に戻る途中、すれ違った男の子が「今の子可愛くない?」って話しているのが聞こえる。
 ……はぁ……、みんな私のことをすごいって思ってるんだろうな……。でも、本当の私は……。
 自分の席について、入学式が始まるまで少しでも自分の体質のことを考えないようにする。
 きぃぃ、と右隣の席の椅子が引かれる音がする。私の隣の席の子。私がおもらししちゃった時に、1番迷惑がかかっちゃう子。どんな子なのかな……? 優しい子だったらいいな……。
 そんなことを考えながら、音のした方を向く。
「「あ」」
 目が合って、お互いに思わず声が漏れる。私の隣の席にいたのは、ちょっぴり地味な感じの眼鏡をかけた男の子。
 ……私のおもらしを、この学校の生徒で唯一見たことがある子。
 その男の子──高堰くんは、私の顔を見ると少し安心したような表情をして私の隣の席に座った。
 ……まさか、同じクラスで、しかも隣の席なんて……。この間も、おもらし見られちゃったばっかりなのに……。

 ◇ ◇ ◇ 

「それじゃあ、入学式が始まるまでもう少し時間があるから、とりあえず近くの席の子と自己紹介とかする時間にしようか」
 担任の優しそうな若い女の先生がそう言うと、私の周りにはクラスメイトがたくさん集まってくる。
 ……もうすぐ入学式だし、ちゃんとトイレ済ませておきたいのに……。
 私の周りはクラスメイトに囲まれちゃって、教室のドアに向かうのは難しい。
 ……どうしよう……。今トイレに行っておかないと、絶対入学式の途中でおしっこもらしちゃうよ……。
「ひゃっ!?」
 急に人混みの中から手を掴まれて、教室の外に連れ出される。教室から出て、トイレの隣の階段の陰に着いたところで見上げると、高堰くんが私の手首のあたりを握っていた。
「……なんで、私のこと……」
「清水さん、何か困ってそうだったから。女の子が困ってたら、助けてあげないといけない気がして……変かな?」
「ううん、助かった……」
 おしっこがしたくならないように、できる限り短い言葉で高堰くんに言葉を返す。それでも尿意はだんだん強くなってきて、「ごめん、トイレ……」と言って私はその場を離れてトイレに向かった。

 ◇ ◇ ◇ 

 ……どうしよう……緊張しちゃって、もうおしっこしたくなっちゃった……。新入生スピーチ、みんなに見られながらしなきゃいけないのに……。
 入学式が始まって1時間。ただでさえスピーチでおしっこしたくなっちゃうのは確定なのに、私は緊張ですでにおしっこがしたくなってしまっていた。
 ……もし、舞台の上で、みんなに注目されながら、おもらし、しちゃったら……。
 最悪の事態が頭をよぎる。
「続いて、新入生代表の挨拶」
 ……き、来ちゃった……っ。
 ゆっくりと立ち上がって、舞台に向かう。
 ……どうしよう……みんな私の方見てる……緊張する……。
 お腹がきゅうぅっ、と締め付けられるような気がして、おしっこの出口に力を込める。そんな時、ふと高堰くんと目が合った。
 ……あれ……、なんだか、安心して、おしっこしたいのも引いたような……?
 なんでかは分からないけれど、おしっこのしたさが少し収まった気がして、私は用意した原稿を読み始める。
 ……ちゃんとできた……。ピンチは切りぬけたっ……。
 自分の席に戻って、入学式が終わるのを待つ。
 けれど、私のピンチはまだ終わっていない。スピーチを読んだせいでスピーチの前よりおしっこが出ちゃいそうで、自分の席に戻ってきてからは両手で前押さえをこっそりしているくらい。
 ……トイレまで、我慢、しなきゃなのに……っ、もう、無理……っ……。
 退場が始まって、私は膀胱を刺激しないようにゆっくり体育館を出る。
 ……ぅ、ぁ……これ、もう、だめ……っ……。教室まで、戻れない……っ……。
「大丈夫? 体調悪い?」
 聞き覚えのある声がして、声のした方を向くと、高堰くんが私のすぐそばにいた。
「あ、あの、と、トイレ……っ!」
「だ、大丈夫!? とりあえず、こっち来て!」
 ……あ、あれ……? もう、動けないくらい、おしっこしたいのに、高堰くんがいるって分かったら、なんだかちょっとだけ、我慢の余裕、できたかも……?
 ゆっくりと歩いて、体育館の裏側の部室棟のトイレが見えてくる。
「もう少しだよ、清水さん」
 高堰くんが励ましてくれるけど、ついに私の膀胱は限界を迎えちゃう。
「う、あぁ……っ……! む、無理……っ、1歩も、動けない……っ……」
 声を出す度に、おしっこの出口が暖かくなる感触が走る。
「し、清水さん!?」
 ……だめ、もう、おしっこ、我慢できない……っ……!

 ぽたぽたっ、ぱたたたたたたたたっ、びしゃしゃしゃしゃっ

「あっ、あぁっ、あぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~っ!!!!!!!」
 しゅうぅぅぅぅぅっ、とパンツの中からくぐもった音がして、太ももの間におしっこが流れ出す感触。
「やぁぁぁぁぁ……、とっ、止まらないぃ……」
 高堰くんに背を向けて、お尻を突き出すようなみっともない姿勢でおもらしする私。高堰くんに何て思われちゃってるかな、高校生なのにおもらししちゃう、駄目な女の子って思われちゃってるかな……。
 そんな時、急に風が吹いて、スカートがめくれる感触。
「あ゛……」
 高堰くんの声がして振り向くと、高堰くんは顔を真っ赤にして顔を背けていた。その手には私のスカートにおしっこがかからないようにしてくれているのか、私のスカートの裾が握られていた。
 ……もしかして、というか絶対、私のパンツ、見られちゃった……っ……!
「うううぅ~~っ!!!」
「み、見てない! 見てないからっ!!」

 ◇ ◇ ◇ 

「清水さん、どこ行ってたの?」
 おもらしの後、私は高堰くんがスカートを持っていてくれたおかげもあってパンツだけしか汚さずに済み、教室に戻ることができた。
「えへへ、ちょっと……」
 隣の席に座る高堰くんの方を見ると、まるで「僕には関係ありません」と言いたそうな様子でそっぽを向いていた。
 ……またおもらし見られちゃった……でも……。
 恥ずかしさとは違う、不思議な感情が私の中にずっと残っていた。
 とは言っても、高校生活は前途多難だけど……。

(耐志視点:聖依奈おもらし時)
 目の前で、隣の席の清水さんがおもらししてしまっている、嘘のような光景が俺の前で繰り広げられている。
 目を背けようとしても、なぜか目線が清水さんの方に寄ってしまう。俺のいる方に向けて突き出された清水さんのお尻。同級生、なんなら隣の席なのだからそんな目で見てはいけないとは思いながらも、どうしても卑猥に見えてしまう。
 そんな時、突然風が吹いて清水さんのスカートがめくれ上がった。思わず清水さんのスカートが汚れてしまわないように片手で持ち上げると、清水さんの下着が目の前にあらわになった。
「うううぅ~~っ!!!」
 清水さんの恥ずかしそうな呻き声に、慌てて「み、見てない! 見てないからっ!!」と返す。
 慌てて目線を反らしたけれど、清水さんの下着は本当ははっきりと見えてしまっていた。
 やがて教室に戻った後も、清水さんの下着のことが俺の頭から離れることはなかった。
 ……めちゃくちゃレースが付いたピンクだった……。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

処理中です...